第3話よくもやってくれたわね!

翌日の学園の昼休み、特Aに向かい廊下を歩いている第二王子とシリルと偶然・・出会った。


本当は偶然じゃなくて張ってたんだけどね。


第二王子は私を見るなり顔を引き攣らせ後退り、シリルは王子の前に出て剣に手をかけている。


ちょっとシリル様、無手の淑女に対して失礼すぎるんですけど!


「第二王子殿下、シリル様ご機嫌よう。

シリル様、どうして抜剣しようとなさってますの?

まさか武器も持たないか弱い淑女に剣を向けたりしませんよね。」


あんた、その剣抜いたら両手両足を串刺しにしてやるから。


「申し訳ない、つい本能で体が動いて。」


本能って何よ。

あんたの本能はネズミ並みか!


「シリル様って面白い方ですね。

それに第二王子もとぉーっても面白い方ですから主従って似るようですね。」


人が笑顔で話してるのに何で顔色が青くなるのよ。


「王命の件は⋯」

「王命の件は?」


一歩近づいたら一歩退がる殿下。

全く距離が縮まらない。


「殿下、王命の件の続きは?」


もっと踏み込んだろ。


「と、とにかく中に入ろう!

ここ廊下でする話ではない!」


チッ、皆が通る廊下の方がよかったのに。


殿下とシリルと私は特Aに入った。


外に〈立ち入り禁止〉の札をドアノブに引っ掛け、扉を閉めて鍵をかける。


カチャっと鍵をかける音に2人が素早く反応してこちらを見た。


「この間、扉が少し開いていたので話し声が聞こえたんですよ。

念には念を入れてね。」


可愛く言ったつもりなのに何で真っ青なまま首を高速で振るのよ。


長方形のテーブルの端と端に座った私と殿下。


「ちょっと遠くないです?」


長い方の端と端って喋り辛いじゃない。


「婚約者のいる女性に近づくのはマナーに反するからね。」


ふーん、へ~、そうですか。


今の言葉、しっかり覚えておきましょう。


「ふふっ、少しお話をしたかっただけなんですが、ここ特Aに入れて貰えるなんて殿下の特別・・になった気分です。」


婚約者じゃなくシフォンとここに入り浸ってるもんね。


婚約者はここに入れないもんね。


「別に特別な人だけじゃ⋯」


「あら、殿下やシリル様の婚約者でさえ入れないのですよ。

特別と言わずしてなんといいますの?」


「それは⋯」


学園の・・・皆が・・言ってましたよ。

ここ特Aに入れるのは殿下・・のお気に・・・・入り・・だけだと。」


「アーシア嬢、殿下に対してーー」


「もちろん殿下の護衛であるシリル様のお眼鏡にかなった方しか入れないでしょうから、その意味でも学園中・・・の憧れですよ。」


私は贔屓などしない。

シリルにも教えてあげよう。


二人して俯いて黙んないでよ。


あんたらと喋ってたらいつも黙るからつまんないんだよね。


「ちょっと、何とか言いなさいよ。

ちっちゃい頃から変わんないわね。

そんなんだから婚約者とコミュニケーション取れないんじゃない?」


「フィーラは関係ないだろ!」


今は・・ね。」


だから俯くな!


私と殿下とシリルとカルゼは所謂幼なじみって奴。


子供の頃から一緒に遊んでたから言葉遣いも時々雑になってしまう。


「ラグ、よくも余計なお世話をしてくれたわね。」


第二王子殿下ーラグナを殺気の篭った瞳で睨んでやった。


両陛下に甘やかされてるからボンボン気質が抜けてないんだよ、こいつは。


「だってカルゼがショックで魂抜けたようになってたんだよ。

シーちゃんが怖くて同意したけど、僕のせいで婚約が無くなったらって思ったら、どうしたらいいかわからなかったんだよ!」


「いい年こいて「だって」とか言うな!」


テーブルをバンッと叩いて睨むと思いっきり肩を揺らして縮こまった。


「とにかく王命のせいでギスバル公国に留学出来ないばかりか婚約継続になったのよ。

あんたらには借りができたし、キッチリ返させてもらうから。」


私は立ち上がって笑顔で宣言した。

やられたらやり返すのは礼儀だ。


「それからリル、久しぶりに手合わせしてあげる。

放課後練武場においで。

実戦形式でやろうね🎵」


シリルがよろめいたのをラグナが支えた。


「シーちゃん、僕が悪かったからシリルを虐めるなよ!」


「ラ~グ~、ただ手合わせするだけなのに何言ってるのかな~。

か弱い淑女をいじめっ子みたいに言うなんて、ラグも手合わせしたいのかな~。」


「シーちゃんがが弱い淑女なら騎士団なんてよちよち歩きの幼児だよ!」


「よし、ラグも練武場においで。

第二王子たる者、少しは剣を使えないとね。」


今度はラグナがよろめいた。

すかさずシリルが支える。


「シーちゃん、殿下まで巻き込むのは駄目だ!」


「ただの手合わせだって言ってるでしょ。

そんなに心配なら王城の鍛錬場にするわよ。

そこならあんたのお父様、騎士団長もいるから。

二人とも放課後は真っ直ぐ王城に来なさいよ。」


最後にカーテシーをして


「お待ちしておりますわ。」


淑女らしく挨拶をして扉を開けた。


扉の前にはカルゼ、アジス、シフォンが立っていた。


カルゼは泣きそうな顔だし、アジスはムンクの叫び、シフォンはこちらを睨んでいた。


三人がなんでそんなお顔をしているのかわからない。


「鍵をかけて中で何をしてたんだ。」


カルゼが泣きそうな表情で聞いてきたけど、答えるの面倒くさい。


「姉上、まさかってませんよね⋯」


何を想像してんのよ。

流石に第二王子をるわけないじゃない。


「異性と密室で何してたんですか?

しかもラグナ様は王族なんですよ。

カルゼ様に対しても不誠実です!」


ちょっと待て。

普段密室で男侍らせといてどの口が言ってんだ。


私に喧嘩売ってんの?


「シフォン、ラゼントリオ嬢に何を言っている!

身分を弁えろ!!」


その喧嘩買ったろ!と思ったらラグナが出てきた。


この子、危機察知能力はあるんだよね。


私がここでシフォンに何かしたら王子自分を巻き込んだ凄い醜聞になるの目に見えてるもんね。


その能力を父親が王命出す前に発揮して欲しかった。


「第二王子殿下、わかっていると思いますが、学園は社交界の縮図です。

努努お忘れになりませんよう。」


忘れてるっぽいからね。


あんた達が表立って非難されないのは婚約者が静観してるからだってのもわかってなさそう。


「ああ、わかっている。」


どこがよ。

ま、いいか。

放っとこ。


「では失礼致します。」


一般食堂でご飯食べないとお腹がうるさい。


カルゼがなんか言ってるけどいちいち相手にしてたら昼休みが終わるからね。


私はお昼ご飯をしっかり食べ図書館で読書をしながら昼休みを過ごした。

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