第60話 ダメ、凛に拒否権はない

前回のあらすじっ!

 また、理央のペースに乗せられて、休日に遊ぶこととなりました。できれば家に引きこもりたかったです。以上っ!




 理央が教室から去ると…


「邪魔者はいなくなった。一緒に帰るよ、凛」


 そう言って俺の手を引く美羽。


「わかったから引っ張るなって!」


(今日は寄り道せずに家に帰れそうだな)


 と、思っていたが…


「凛、私たちは今からアウトレットに行く」


「なんで!?」


「約束した」


「………………」


(うわぁ…そういえば山野と放課後にアウトレット行って家に帰ると怒られて、舞と一緒にアウトレット行く約束をされたんだった)


※詳しくは41話を参照!


(とりあえず、4日続けてのアウトレットは疲れるので、全力で回避を試みよう!目標はひたすら延期させて、約束を忘れさせる!ミッションスタート!)


 そう思い…


「それは今日でないとダメ?今日は疲れたから、また別の日にしたいんですけど……」


 と、提案するが…


「ダメ、凛に拒否権はない」


 はい、終了ー!


(また、今日もアウトレット行くのかよ!)


 そんなことを思いながら、美羽に引っ張られる凛であった。




 電車に乗ってアウトレットへ向かっている

時…


「なぁ、美羽。どうして今日、俺に学校で話しかけてきたんだ?」


 今日一日ずっと思っていた疑問を聞いてみる。


 俺たちは幼馴染だが、学校内で人気の美羽と陰キャ代表の俺が、幼馴染とバレると、美羽に迷惑がかかると思っていたため、関わるのを制限していたのだが……


(結局、誰からも幼馴染のところにはツッコまれなかったなぁ。どうやら美羽が会話していることに周りは驚いたらしいが……。ホント、今までどーやって学校生活を送ってきてたんだろう……)


 すると美羽は……


「そ、それは………凛が悪い」


「原因、俺かよ!」


(どうやら俺が不甲斐ないせいで、幼馴染として話しかけたらしい。……泣きそ……)


 そんなことを思い、アウトレットでは何を奢ろうか?と考えていたため…


「……凛のバカ。私以外の女とイチャイチャして……」


 と、電車の音や周りのうるささもあって、美羽の呟きは凛に届かなかった。




 少し移動してアウトレットに到着する。


「で、どこに行く予定なんだ?」


 俺がそう聞くと…


「ん、まずはスイーツを食べに行く」


「おー!いいな!俺も小腹が空いたんだよ!」


 そう言いながら美羽に付いていく。


 しばらく歩くと…


「ここ」


「………すごくオシャレな店だな」


 美羽に連れてこられたのは、いかにも女の子向けの店だった。オシャレすぎて……。


「なぁ、ここ、俺入っても大丈夫か?」


(俺一人では、絶対に入りたくないなぁ)


「ん、大丈夫。私がいるから」


 そう言って俺の手を引き、店へ入る。


「いらっしゃいませ〜?」


 と、店員さんから挨拶をされるが、美羽と俺を見て、不思議そうな顔をされる。


(まぁ、美羽は周りから見ればかなりの美少女だからな。そんな子と目まで前髪で隠れてる人が一緒にいるのはおかしいよな)


 店員が俺たちを席へと案内しないため…


「ん!!」


 美羽が店員へ圧をかける。


「あ、も、申し訳ございません!あちらのテーブル席へとご案内いたします!」


 と、慌てて、俺たちを案内する。


 席に案内されて、俺たちは各々デザートを注文する。


 しばらく待つと、俺の“抹茶パフェ”と美羽の“フルーツパフェ”が届く。


「「いただきます」」


 そう言ってお互いにパフェを食べる。


「うん!おいしい!」


「ん!ここはパフェがすごくおいしい」


 そう言いながらお互いにパフェを食べていると……


「凛、私も抹茶パフェが食べたい」


 そう言ってくるので…


「いいよ!」


 そう思い、抹茶パフェを美羽の手元に持っていこうとすると…


「あー!」


 と、口を開けて待機する美羽。


(またかよ!今日の昼ご飯のときも思ったけど、さすがに恥ずかしいんだけど!)


 そんなことを思うが、一向に口を閉じようとしないので、俺は観念して…


「あ、あーん」


 と、美羽の口元へスプーンを持っていく。


「ん!」


 “パクッ”っと一口食べて、美味しそうに食べる。


(恥ずかしかったけど、俺の頼んだ抹茶パフェを気に入ったようでよかった)


 そんなことを思っていると、今度は美羽が…

「凛、抹茶パフェのお礼」


 そう言って、俺の口元へスプーンを持ってくる。


「えっ!い、いいよ!そんなお礼なんて!」


 そのように俺が言うが…


「ん!」


 と、またもや一向に引く気がないので…


「あ、あーん」


 と、顔を少し赤くしながら“パクッ”と一口もらう。


「どう?おいしい?」


「あ、あぁ、おいしいよ」


 そう答えるが、正直、恥ずかしくて、どんな味がしたか、わからなかった凛であった。

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