第52話 あ、ありがと……う、嬉しいよ……お兄ちゃん

前回のあらすじっ!

 全部店長が悪いです。以上っ!




 店長の「汐留さんにもコスプレをしてもらって、彼をメロメロにしてしまいましょう!」という言葉から、復活できずにテンパってる舞に…


「そんなことする必要はないからな?舞はコスプレをするために、ここへ来たわけじゃないだろ?」


 と、俺は声をかけるが…


「い、いや!みんなやってるんだから、私もしないと!」


 なぜか山野と理央に対して、対抗心を燃やしている。


(どこに、舞をやる気にさせるスイッチがあったかは定かではないが、こうなった時の舞は止められないから、放っておこう)


 そう思ったときに店長が…


「おー!汐留さんも着てくれるんですね!これで彼を虜にしてやりましょう!」


「う、うん!私、頑張るよ!」


(なんか店長と舞が盛り上がってる。……もう、帰っていいかな?)


 そんなことを思っていたら、突然、店長が…


「それなら!今日も彼に衣装を選んでもらいましょう!」


「えっ!また!?」


 もう、この件に関わりたくなかったんだが!?


「君、“俺、関係ないから帰っていいかな?”とか思ってたでしょ!?」


(ギクっ!なんで分かったんだんだよ!)


「そ、そそそんなこと思ってなかったぞ?」


「ふーん、思ってなかったんだ」


 と、なぜか舞に疑念を抱かれる。店長からは…


「なんでこんなことになっているのかわからないって………幸せですね!」


「やかましいわ!」


(この店長、言いたい放題言いやがって!)


 そんなことを思い、店長を睨んでると……


「じゃ、じゃあ………わ、私は、ど、どれを着た方がいい?」


 と、舞から聞かれる。さすがにこの状況で、適当に選ぶわけにはいかないので……


「えーっと………こ、これとかどうかな?」


 そう言って俺が手に取った服はミニスカの巫女さん衣装。


「えっ!こ、これ着るの!?ど、どうしてその服を選んだの?も、もしかして、巫女さん好き……とか?」


 舞が顔を真っ赤にしながら言う。


「い、いや!そ、そんなことはないけど……、舞の巫女さんが見たかった……から?」


「そ、そうなんだ………」


「うん………」


 と、俺たちはお互い顔を赤くしながら、しばらく無言の時間が続いた。その間、店長が微笑ましい様子でこちらを見ていたことには、気づかなかった。




しばらくすると…


「よ、よし!着ます!」


 と、舞が勢いよく言う。


「え!着るの!?」


(俺、コスプレ衣装を見せたら、「着るのやめる!」って言うのかと思ってたんだが!)


 この言葉を聞いた店長は……


「その言葉を待ってました!」


 と、舞の手をとって、舞を試着室へ移動させる。行動力すごいなっ!


(まぁ、何故か知らないが、舞が着るって言ったんだ。着たら満足するだろう)


 そう思って、店の外のベンチで休もうと歩き出すが…


「グヘっ!」


 と、店長にまたもや、服の襟を掴まれる。


「この展開は見えてましたよ!」


 ドヤ顔で店長が言ってくる。


「そんな展開、見えんでええわ!」


(さっきまで、試着室にいたよな!?相変わらずの瞬間移動なんだが!)


 そう思いながらも引っ張られて試着室前へ連れて来られる。


(これは居ないといけないんだ)


 そう思い、しばらく待つと、カーテンが開き…


「ど、どうかな?す、スカートの丈が、み、短くて……は、恥ずかしい……けど……に、似合ってる?」


 と、耳まで真っ赤にし、スカートの丈を両手で伸ばしながら、舞が出てくる。


(くっ!なぜだ!いつもかわいいが、舞と巫女さん衣装がマッチしすぎて、こっちの舞もかわいく感じる!やっぱりコスプレにはすごい力があるんだなぁ)


 そんなことを考えていたため……


「あ、あぁ、いつもかわいいが、巫女さんの舞も、かわいいぞ」


 と、脳内で思ってたことが口に出てしまった。


(やべぇぇぇ!何が“いつもかわいいぞ!”だよ!変態兄貴じゃねえか!さっそく訂正しなければ、舞に引かれる!)


 そう思い、慌てて訂正しようとするが…


「い、いつもかわいいっ!……あ、ありがと……う、嬉しいよ……お兄ちゃん」


 と、真っ赤な顔して上目遣いで、微笑みながら言われたので……


(まぁ、いつも思っていることには変わりないからな。変態兄貴って思われても仕方ないか)


 そう思う凛であった。

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