第51話 おいぃぃぃぃぃぃ!コスプレの話は今いらねぇだろ!

前回のあらすじっ!

 会いたくない店長に会ってしまった……。これからどうしよ?………以上っ!




「こんにちは!店長!」


「あ!こんにちは!汐留さん!」


 一度、店長は俺の顔を見て思考を停止した様子が見られたが、舞から挨拶をされたため、慌てて挨拶をしている。そして、俺は店長の顔を見て…


「こんにちは〜」


 とりあえず挨拶をした。そして目で「余計なこと喋るなよ!?」と訴える。すると、店長が俺に向けてウインクをしてきた。


(お!これは俺の言いたいことを理解してくれたようだ。なら俺は、店長とは初対面という感じを出すだけだな)

 

 そう思い、安堵するが………


「そちらの男性は昨日ぶりですね!」


「……………………」


(何も伝わってないんだが!?さっきのウインクはなんだったんだよ!!)


 その言葉に舞が反応し…


「へぇ、昨日ぶりだったんだ。………誰と来たの?」


「えーっ…………」


「はい!胸の大きい綺麗な女の子と来てました!」


「なんで店長が答えてんだよ!」


 もうやだ、この店長………。


「ふーん、胸の大きい女の子ねぇ……」


「えーっ…………」


「あ!今思い出したのですが、一昨日はかわいい後輩の女の子とこの店に来てました!」


「どーでもいいわ!そんなこと!」


(あ!とかいうから大事なことでも思い出したのかと思ったら、ものすごくどうでもいい情報だった)


 しかし、妹にとっては大事な情報らしく……


「へぇ、一昨日はかわいい後輩の女の子とこの店に来てたんだ」


「えーっ…………」


「はい!それも仲良さそうに!」


「そろそろ俺に喋らせろよ!」


 なんでさっきからずっと店長が答えてんだよ!おかげで、弁明できる機会が全然訪れないんだけど!!


「で?昨日は胸の大きい女の子、一昨日はかわいい後輩とこの店に来た。これは間違いないんだね」


 と、舞が隣で言う。どんどん俺の手を握っている力が強くなってきている。


「いや、来たのは来たんだけど、別にやましいこととかはなかったぞ?」


 そう言って店長を睨む。「おい、今度こそは変なこと話すなよ?」と目で訴える。すると店長が俺にウインクをしてくる。


(お!今度は理解してくれたな。さすがにこの流れで、舞をさらに怒らせるようなことはしないはず。ま!なんで怒ってるかはわからないがな!)


 そう思って安堵するが…


「いえ!そんなことをないですよ!だって!かわいい後輩ちゃんや、胸の大きい綺麗な女の子にコスプレさせてましたから!」


「おいぃぃぃぃぃぃ!コスプレの話は今いらねぇだろ!」


(誰が俺の言葉を否定しろって伝えた!俺か?俺なのか!?)


 そんなことを思いながら店長を睨む。


 すると…


「パチッ!」


 と、俺に向けてウインクをしてくる。


(もう、この店長のウインク当てにならねぇ………)


 そのため、何か言おうと舞を見ると、ゴミを見るような目で俺を見ていた。


 そして……


「死ねば?」


「……………はい」


 何も言い返すことができない俺であった。




 この暗い空気を察してか、店長が俺のために話題転換を図る。


「まぁまぁ、彼が浮気していた話は、ここじゃなくて別のところでお願いします!」


 全然俺のためではなかった。普通に店で浮気の話をしてほしくなかっただけだった。てか、初めて店長らしいところ見た気がする。


 ………3日目でようやく働いてるところを見るって、どんだけサボってるんだよ!


「そうですね。家に帰ってゆっくりと聞きたいと思います」


 そう言ってこの場で怒られることは避けられた。


(まぁ、寿命が少し伸びたくらいだな。ちょっとは店長に感謝しておこう。……俺、初めて店長に感謝してるわ……)


 すると店長が……


「汐留さん!ずっと気になってたんですけど、彼と手を繋いでいるってことは、この方が彼氏さんとか!?」


「か、彼氏!……そ、そうなんです!この人が私の彼氏なんです!」


「今日一日だ…………」


「キャァァァァァァ!!!!」


「うるせぇぇぇぇ!」


 俺が“今日一日だけ”って伝えようとしたら、ものすごく大きな声で叫び出した。俺の浮気話(冤罪)より普通に店長の声が一番迷惑だと思うんですが!?


「え!でも、汐留さん!この彼、昨日、一昨日と別の女の子とデートして、挙句の果てにコスプレさせてましたからよ?」


「そ、そうなんです!だ、だから家に帰ってからゆっくりと話をしようかと…」


 その答えを聞いた店長は……


「この彼、綺麗な女の子が何人もいるから、また浮気しますよ?」


 と、いらない告げ口をする。


「うっ……そ、そうかも……」


「いやいや!そもそも浮気では………」


「なので!汐留さんにもコスプレをしてもらって、彼をメロメロにしてしまいましょう!」


 と、訳の分からない提案を勢いよくする店長。


 その言葉に……


「な、なんで!?わ、私はこ、こ、コスプレなんてしませんよ!」


 と、テンパる舞と…


(そろそろ、俺に浮気じゃないことを説明させろよ!このままでは、舞と恋人同士ってことが定着してしまうぞ!)


 そんなことを心配する俺がいた。その俺のもとに店長が近づいて来て、耳元で……


「かわいい妹さんですね!」


 そう、笑顔で言ってきた。


(そうそういえば、理央が俺のこと“汐留くん”って言ってたなぁ。…って感心してる場合じゃねぇ!コイツ、全部分かってて、場をメチャクチャにしとる!)


 そんなことを思う凛であった。

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