第46話 リスにものすごく恨みがあるんだろう

前回のあらすじっ!

 俺は店長とイチャイチャなんかしてないっ!以上っ!


※“反省してます”のプラカードは店長に回収されました。




 涼風さんに全力でイチャイチャしてないことを伝えると、渋々納得してくれた。


 説得中は店長の笑い声をBGMとして、説得していたが、納得してくれるまでにかなりの時間を要した。


 ちなみに今もゲラゲラ笑ってます。


(笑ってないで接客しろよ!)


「ねぇ、汐留くん?結局私はどの衣装を着ればいいのかな?」


 と、言われるので考える。


「涼風さんに似合いそうな衣装は………そうだな、ナース服かな?」


「ど、どうしてその服なの?」


(えっ!ど、どうしてって…べ、別に俺がナース好きとかではないぞ!?)


 そんなことを思いながら…


「え、えーっと、す、涼風さんがナース服を着てるところが見てみたかったから?」


「そ、そそそういうことなら、は、恥ずかしいけど、な、ナースの服を、き、着よう……かな」


 モジモジと顔を赤くしながら言う。モジモジって破壊力ハンパないな!そして、その横の店長を見てみると親指を立てて“グッド”ってしてる。


 ………もう店長のリアクションにいちいちツッコむのはやめよう……。


「じゃ、じゃあ、着替えてくるね!」


「おう!なら俺は外で………」


 “待ってるから”と言おうとしたが、店長から謎の圧を感じた。見てみると、「どこに行こうとしとるんじゃ!?お前はここにおらんか!」と、笑顔が訴えていた。


 注: 上記の訴えは凛が感じただけです。本当は「君?どこに行こうとしているのかな?君はここにいないとダメだよ?」と笑顔でオーラを出しただけです。


 恐怖を感じたため、渋々この場に留まる。


 しばらく待つと、カーテンが開き……


「ど、どう……かな?汐留くん?わ、私、変……じゃない……かな?」


 すると、そこには耳まで真っ赤にして、上目遣いをしているナース服を着た涼風さんがいた。


 しっかりと胸元までボタンを止めているため、逆に涼風さんの胸の大きさが強調される。しかも、このナース服は太ももまでしか長さがなく、太ももから下は生脚となっている。


 そのため、童貞の俺には直視できない格好となっているが、何故か目を逸らすことができない。


 しばらく俺が見惚れていると……


「そ、そんなに見られると……その……恥ずかしい……と、言いますか……」


「あ!ご、ごめん!!」


 そう言われて慌てて目を逸らす。すると…


「ど、どうかな?私、似合ってる?」


 そう上目遣いをしながら真っ赤な顔で言う。


「あ、あぁ、とても似合ってて、かわいいよ」


「そ、そう………ありがと……」


 と、お互いに目を合わせられない時間が続いた。




 しばらくすると店長が「はいはい、イチャイチャしないの!」と言ってきたので、慌てて復活する俺たち。


 その後、涼風さんが着替えた後、店を出る。


(そーいえば、涼風さんがナース服に着替えた後から客が増えた気がしたが、気のせいかな)


 そんなことを考えながら隣の涼風さんに、次の目的地を聞く。


「次はね!ガチャガチャコーナーに行きます!」


 と、元気に言う。


「おー!いいね!」


 とりあえず、便乗しておく。さすがに“昨日行ったんだけど!”とは言えず、涼風さんと一緒にガチャガチャコーナーを目指す。


 ガチャガチャコーナーに入ると…


「わー!この猫ちゃんのガチャガチャすごくかわいいね!」


 等々、すごくはしゃいでいる。涼風さんの無邪気な一面に“かわいいなぁ”と思っていると……


「あ!これ!知ってますか!?」


そう言われて見てみると…


「また“ドゲザリス”かよ!」


 しかも、今見ているのは、昨日とは別のガチャガチャ。


「あ!やっぱり汐留くんでも知ってるんですね!」


「汐留くん“でも”は言いすぎじゃね!?」


 唐突に悪口を言われる。まるで、“陰キャは知らないと思ってたよ!”でも言われてるようだ。ま!知ったのは昨日だがな!


「ごめんごめん!女子高生には流行ってるんだけど、まさか、男子にも広まっているとは思わなくて」


「なるほどね。でも、俺、このキャラ知ったの昨日だから、涼風さんの思ってることは正しいよ!」


 俺は“涼風さんの思ってたことは正しいよ!”と伝えるためにそう言うと…


「へぇ、昨日、後輩ちゃんに教えてもらったんだね。どこで?」


 なぜか暗い声で言われる。


「そ、それは…………はい、ここです」


 なんか、反論してはいけない空気を感じた。理由は不明だがな!


「まぁ、そんなことだろうとは思ったよ」


 なぜか呆れたような感じで言う。


「じゃあ、このガチャガチャは昨日したの?」


「い、いや、別の“ドゲザリス”のガチャガチャを……」


 そう言うと、元気が出たようで…


「なら!これを一緒に回そ!?」


「え!なんで!?」


 俺、このリスが不憫でならないから、欲しくないんだが!?


「いい!?一緒に回すの!!」


「………はい」


 有無を言わせぬ圧力を感じた。


「じゃあ!さっそく、私が引きます!」


 そう言って“ドゲザリス”のガチャガチャを引く。


 すると…


「おー!かわいい〜!」


 そんな声が聞こえてきたので、見てみると、ツッコミどころのないくらい、完璧な土下座をしたリスがいた。


「かわいい……のか?」


 そこには“単位ください”と書かれた紙を両手で持って土下座しているリスがいた。このリス、留年しそうなんかい!


(俺、このリスを見ても、“哀れ”や“不憫”としか思わないんだが!)


 相変わらず女子高生の“かわいい”の基準が理解できぬ。


「はい!次は汐留くんの番だよ!」


 と言って促される。


(まぁ、ガチャガチャは安いから、一回くらいはいいか)


 そう思ってガチャガチャをして、カプセルの中を開けると……


「……………………」


 そこには“他の女にデレデレしてごめんなさい”と書かれた紙を持って土下座してるリスがいた。


(リスに何があったんだよ!逆に気になるわ!)


 俺の感想をよそに涼風さんは「このリスもかわいいね!」とか言ってるが、全く同意できない。


(このキャラを制作した人はリスにものすごく恨みがあるんだろう)


 そんなことしか思えない凛であった。

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