第38話 これがギャップ萌えってやつなのかな?

〜山野凪視点〜

前回のあらすじです!

 ウチがドジして悪い男に絡まれたら、ものすごいイケメン店員が助けてくれました!でも、あまりのイケメンさに逃げるように店から出てしまいました。これは反省です。以上です!




「ど、どどどうしよう!ウチ、あの店員さんから逃げるように店から出てしまった!あの店員さん困惑してるだろうなぁ」


 と、あれから、ウチ、山野凪(中学3年生)は家に帰ってベッドにダイブしてから振り返る。


「それにしてもカッコ良かったなぁ」


(イケメンなのはもちろんなのだが、私が困っていると知るとすぐに駆けつけてくれた。店員さんだからかもしれないけど。他にも悪い男に勇敢に立ち向かうところや、最後には私の心配をしてくれるところとか……)


 そう振り返って最後に見せてくれた笑顔を思い浮かべると……


「〜〜〜〜〜〜〜」


 と、ニヤニヤしながら足をジタバタさせる。


「あの人、おそらく私に危害が加わらないように立ち振る舞ったんだと思う。後半から悪い男の人はウチなんか忘れている感じがしたし……。性格も良くて、困っている人の気持ちが理解できて、すぐに駆けつけることができる。多分そんな人だろうなぁ」


 もしかしたら店員さんだったから、そんな対応をしてくれたのかもしれないが……


「また会いたいなぁ」


 そう思う凪であった。




 あれから時間がある時は喫茶店に行くことが増えた。というか毎日通ってる。ちょうど受験生とのことで、勉強との口実で親に許可をもらってから、喫茶店へ行く日々が続いた。


 いつバイトなのかわからず、“今日は来るかなぁ”と考える時間はすごく幸せな気持ちになったが、来なかった日の帰りは憂鬱になる。


 そんなことを繰り返していると…


「君、最近よくここに来て勉強してくれているけど、もしかして、イケメンのバイト君が来るのを待ってる?」


「!!!」


 驚きすぎて咄嗟に声が出なかった。


「ははっ!大丈夫だよ。俺は言わないから。いつも入口をチラチラ見てるし、誰かが入ったらすぐに入口を見てはガッカリしてるからねぇ。カウンターから見たらすごくわかりやすかったよ」


 そうマスターに言われて、そんなに怪しかったんだ!と反省する。


「はい。前回助けていただいた時は逃げるように喫茶店から出てしまったので、もう一度会って謝罪ができればと思い……」


 そう説明すると…


「なるほどね。それなら今週の日曜日は昼からバイトに入ってるから、その時間に来るといいよ!」


「ほ、ホントですか!?」


「うん、ホントだよ」


 と、マスターは丁寧に教えてくれる。


「あ、ありがとうございます!」


 そう言ってウチは頭を下げる。


(この喫茶店はいいところだなぁ)


 そう思う凪であった。




 マスターから教えてもらった日曜日、つまり助けていただいた次の日曜日。ウチは喫茶店にいた。来るのは昼からと聞いていたが、少しでも早く会いたかったので、早めに来た。すると、マスターが…


「そんなに入口ばかり見ても、早く来てくれるわけじゃないよ?」


「す、すすすみません!」


 いきなり声をかけられて慌ててしまう。しかも「早く来てくれないかなぁ」と思っていたところでもあったため、顔が赤くなる。


「ははっ、大丈夫だよ。彼、12時からだからそろそろ来ると思うけど……」


 そんな会話をしていると1人の男性が入ってきた。目を髪の毛で隠しているため、顔は確認できないが……


「お!来たよ。彼が」


「え!どこですか!?」


 そう言われてテンションが上がる。


「ほら、今入ってきた男性」


「え!あの方がそうなんですか!?」


 先週助けてくれた時とかなり違う。でも、マスターが言うならそうなんだろう。人って髪を結ぶだけで、すごく変わることを改めて実感してしまった。これがギャップ萌えってやつなのかな?それとも1週間ぶりに会ったためかな?助けてもらった時の格好でないが、髪を結んでない状態でも、見るだけですごくドキドキする。


「ほら、やっと会えたんだから、こんなところに座ってないで、早く声かけに行きなさい」


 と、マスターは優しい声で言う。


「は、はい!ありがとうございます!」


(ホントマスターはいい人だなぁ)


 と、何度も思う凪であった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る