第20話 アイツ、俺でさえ涼風さんからお弁当をもらったことないのに!(妄想)

 朝起きたら涼風さんからラインがきていた。


 涼風理央:明日の弁当楽しみにしててね!


 汐留凛:おう!楽しみにしてるぞ!


 と簡単に返答をする。


 舞と朝ご飯を食べ、いつものように一緒に登校する。別れ際に「涼風さんに変なことしないように!いいね?お兄!?」と言われてしまった。俺が涼風さんに変なことをすると思われてるらしい。信用ねぇなぁ……。


 そんなことを考えながら教室へ行く。


 いつものように誰にも挨拶されず席に着くと思っていたら……


「あ!おはよ!汐留くん!」


 他のクラスメイトとの会話を切り上げて俺の下へと来て挨拶をする涼風さん。


「あ、あぁおはよう。涼風さん」


 と、俺もつられて挨拶をする。周りからは


「え、アイツ誰?」


「なんで涼風さんはわざわざ挨拶しに行ったんだろう?」


「お、お俺なんかまだ目を合わせてもらってもないのに!アイツ許さん!コロス!」


 え、涼風さんに挨拶されただけで殺害予告いただいたんだけど!これ以上はここで関わるのをやめよう。そう思い席に向かうが…


「ちょっと!まだ話終わってないよ!」


「えっ!」


 どうやらまだ話すことがあるらしい。クラスメイト全員がこちらの会話を聞いている状況で……


「昨日の約束通り今日、汐留くんの弁当も作ってきたから、昨日の場所で一緒に食べようね!」


 と、爆弾発言をする。


「…………え?」


(え!一緒に食べるの!?てっきり昼休憩の時にこっそりと…「はい!これがお弁当ね!じゃ!これで助けてもらったお礼は終わりだからね!ホントは昼に会うのも嫌だったんだけど義理は果たさないと……」みたいなことを言われるのかと……。いや、言われたら数日は寝込む自信あるな)


 凛はそんなことを考えているが、周りは……


「え、ホント誰?アイツ」


「涼風さん、昨日初対面なのにもう弱み握られたらしい。助けてあげなきゃ!」


「アイツ、俺でさえ涼風さんからお弁当をもらったことないのに!(妄想)許さんぞぉぉぉぉ」


 新学期二日目で敵ばかりを作る凛であった。


〜火口雪菜視点〜

(マ、マズイよこれは!ど、どどどどうすれば!)


 私は持っていたペンを床に落とす。どうやらそれだけ衝撃的な事案だったようだ。その事案とは先程、転校生の涼風さんが昼ご飯を一緒にどう?と汐留さんに誘っていたことだ。


「おーい、ゆきっち〜、戻ってこーい」


 何やら私の前で手がブンブンと動くのが見えます。


「はっ!わ、私は今なにを!」


「お〜、やっと戻ってきたか〜」


 そう言われてしまう。どうやら衝撃的なことが目の前で起こってしまい、パニックになり、思考が停止したようだ。


 私に声をかけてくれたのはクラスメイトの『先島日菜子さきしまひなこ』さん。一年の頃から同じクラスで一年の頃には委員長をしていた。


 金髪で髪をサイドテールにしており、校則に引っかからない程度に制服を着崩している。見た目はギャルだが全然ギャルじゃない……と思う。頭脳はクラストップ3には入っていたし、運動もできる、コミュニケーション力も高く、オマケにかわいい。いや、全然オマケじゃないんだけど……。どこの世界の主人公なんだろうか?


「ねぇねぇ、どーするどーする?ゆきっち。強力なライバル出現だよ?」


「う、うぅ〜〜〜」


 私は一年の夏休み頃、汐留さんに助けてもらったことがある。ホント些細なことだったけど、私はとても嬉しかった。その日から授業中には汐留さんのことを見てしまい、夜は“汐留さん何してるかなー”って考えてしまう。そのため、一年の夏休み後に先島さんに相談したら……


「それは恋でしょ」


「こ、ここここい!?………こいってあの池を泳ぐ鯉!?」


「いや、教科書通りの綺麗な勘違い返答してくるね……」


 これが“恋”と言われてもイマイチピンと来なかった。


「うーん、そう言われてもピンと来ないんですよ」


 そういうと先島さんは「なら!」と勢いよく言い…


「汐留君が他の女の子と仲良くしているところを想像してみてよ?嫌な気持ちが芽生えたらそれは“恋”だよ」


 と、言う。しかし学校で女の子(男の子もだけど)と話すところは見たことがほとんどないので想像出来なかった。私が首を捻ってると……


「なかなか想像できないようだね」


 と言いながら苦笑いをする。


「まぁ、今は自覚しなくてもいいと思うよ。でも、もし“恋”って自覚した時に汐留君と距離が離れてたら埋めるのに時間がかかるでしょ?だから、日々、少しずつでもいいから、汐留君との距離を縮めること!そうすれば“恋”って自覚した時にすぐ汐留君にアプローチできるでしょ?」


 そう言われて“なるほど”と思う。


「よし、私頑張るよ!ありがとね、先島さん!」


「いいよいいよ!頑張ってね、ゆきっち!」


 そう言いながら背中を叩いてくれる。ホントいい人だなぁと思ったのは一年の9月くらいだったのだが……


(あ、あれから私は何してたの!汐留さんへの想いを深く考えず、挨拶や雑談を簡単にするだけの関係に満足してしまっていた。昨日はまた同じクラスになれて喜んでしまったけど、この気持ちも、先島さんが言っていたように“恋”だったんだ!やっぱり先島さんが言ったように汐留さんが他の女の子と仲良くしてるところは見たくない!)


「よし!」


 と気持ちを切り替える。


(もっと積極的に汐留さんにアプローチをしよう!)


 そう考えがまとまり、汐留さんを見ると……今現在も涼風さんとイチャイチャしてる。見てるとイライラしてくるね……。


「お!ゆきっちもついに自覚したかぁ」


「うん!私頑張るよ!」


「よし、頑張って!」


 そう言って背中を叩いてくれる。ホントいい人だなぁと改めて思う雪菜だった。

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