第19話 ヤ、ヤバい!お兄ちゃんの匂いがする!

〜涼風理央視点〜

前回のあらすじだよ!

 凛くんの連絡先を交換しようと尾行…いや、ストーキング?してたら時間が無くなり交換できませんでした!以上っ!




 春休みは凛くんに助けてもらった次の日から、時間があれば凛くんを探す日々でした。


しかし…


(もう!これだけ出歩いても全然見つからない!)


 見つけることが出来ずに春休みが終わる。




 そして転校初日。


「2年生になったから少しづつは進路についても考えていくように!あと、今日は転校生がいる。入ってこい!」


 と、武田先生の声が聞こえてきたので、大きく深呼吸をする。


 ガラガラ…と教室に入って教壇へ移動する。


 そしてクラスメイトの方を向き…


「初めまして!私は涼風理央。今日からよろしくお願いします!」


 と、挨拶すると一人の男の子と目が合う。


(あ!私を助けてくれた人に似てる!しかもすごく驚いた顔してるってことは、多分あの人、私のこと知ってるんだと思う。ってことは凛くんかな?)


 そんなことを考えると目が合ったので、微笑んでみる。


(よし!あの人の名前をまず最初に確認しよう!)


 そう思った理央だった。




(ふぅ、今日はいろいろあったなぁ)


 学校から帰り、寝る準備をしてからベッドへダイブする。


「まさか凛くんと同じクラスになるとは…。一生分の運を使い果たしたんじゃないかな?」


 そう思ってしまう。


 転入の挨拶をした後、彼の名前を確認すると“汐留凛”という名前だった。小学生の頃と春休みに助けてくれた男の子が同一人物と確認でき、しかも再会と同時に同じクラスになれるのは奇跡に近い。


「でも、凛くんは私と小さい頃会ったこと覚えてなさそうだなぁ」


(今日一日の反応を見ても、覚えている様子はなかった。それなら!徐々に距離を詰めて思い出してもらおう!)


 そう思い、ケータイのラインを開く。そこには“汐留凛”との名前がある。この名前を見るだけで自然と笑顔になる。


「ふふっ、明日はどんな話をしようかな!」


 そんな事を考えながら、“明日の弁当楽しみにしててね!”とメッセージを送る。もう夜遅いので返信はないだろう。


 理央は明日の事を考えながらぐっすりと眠った。



〜汐留凛視点〜

(結局ほとんど寝ることが出来なかったなぁ…)


 時刻は朝6時半。隣で俺の背中に抱きついて寝ている舞を見る。今日は涼風さんが弁当を作ってくれるため、本来なら起きている時間だが、今日はぐっすりと眠ってる。


(いつも弁当を作るために早起きさせてるからな。今日くらいはギリギリまで起こさずに寝かせておくか)


 そう思い脱出を図ろうとするも…


(こいつ!力強いな!全然脱出できないんだけど!)


 いろいろな体勢で脱出を試みるが…


(ヤ、ヤバい!背中に抱きついてるから胸が当たって……。って、妹相手に何考えてるんだ!)


 そんなことを考えてると…


「う〜、お兄ちゃん……むにゃむにゃ」


(……ふぅ、あぶねぇ、起きたかと思った)


 こんな体勢で寝ていたってのが分かると、絶対舞が「何触ってんのよ!」とか言って怒りだすはず!…その未来が簡単に想像できてしまうな……。しかも今のでより一層抱きつきが強くなった。


(ヤバいぞ!これはヤバい!背中に感覚を集中しないようにって考えてるけど……あ、意外と舞って胸が大き……って!それ以上はダメだ!)


 “舞は妹舞は妹舞はsister、myはsister、my sister”と心の中でつぶやく。舞からいい匂いするため、思考回路がショートする。


(これは今すぐ脱出しなければ!)


 “モゾモゾ”と脱出を再度試みる。すると俺が舞の顔を覗き込むような形になる。その時、動きすぎたためか…


「ふぁ〜〜」


 と伸びをしながら目覚める舞。


 すると俺と目が合う。


「ん〜、お兄ちゃん?」


「………………お、おはよう……舞」


 俺が挨拶をするが…


「………………………………」


 一向に返事が返ってこない。なんなら時が止まったかのように動かない。そしてゆっくりと今の状況(舞が俺に抱きついており、俺が舞の顔を覗き込んでいる)を確認すると……


「な、なななな何してんのよ!お兄!」


「痛ェ!」


 ものすごく真っ赤な顔で俺に攻撃をする。すると抱きつきがされ、俺は逃げるようにベッドから転がり落ちた。


 “ドスッ”という音と俺の悲鳴がする。そのため……


「ど、どどどどうしよう、お、お、おおおお兄ちゃんに抱きついてしまった!う〜〜〜、もうちょっと抱きつきたかったのに……なんですぐ離したの!私!」


 と言う呟きを聞き逃していた。




俺は痛みを我慢することができるようになると立ち上がり、舞へ弁明するために動く。


「あ、あの〜、舞さ……………」


「ヤ、ヤバい!お兄ちゃんの匂いがする!」


 と、耳まで赤くして言っている。聞こえてねぇし。しかも自分のパジャマの匂いを恐る恐る嗅いでいる。


(どうやら俺の匂いは恐る恐る嗅がないといけないらしい……。泣きそう……)


 そんなこともあり、俺の無罪を証明のにかなりの時間を要しました。


 もう舞とは寝ない!と心に誓う凛であった。

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