第10話 お兄は妹に“あーん”をするのが仕事なんだよ?
ちょうどタイミングを見計らったかのようにマスターがパフェを運んできた。ちなみに舞のパフェは作り始める前にいなくなったのでキャンセルできた。
「わー!美味しそー!いただきまーす!」
目をキラキラさせながら食べる涼風さん。
「そうだな。ここのパフェは絶品だから、是非他の味も食べてほしい」
そう言って俺も「いただきます」と言ってからパフェを食べる。相変わらずここのパフェはうまいなぁ。
そんなことを考えてると…
「じゃあさ!私のチョコレートパフェを少しあげるから、汐留くんの抹茶パフェを少し貰ってもいいかな?そーすれば一気に2つの味が楽しめるよ!」
そう言って涼風さんは俺の抹茶パフェに狙いを定める。おい、奪い取る気じゃないだろうな。
「交換ならいいぞ」
「やったー!じゃあ、汐留くん、口を開けて!」
「えっ!」
「はい、あーん!」
昼休みに“あーん”をしたからか、恥ずかしがる素振りはない。まぁ、俺も耐性はついたから、何事もなかったかのように食べることができるはず!
「あ…あーん…」
嘘です無理でした。心臓飛び出るかと思うくらいドキドキしました。いや、涼風さんくらいの美少女に“あーん”をされると何回されようがドキドキしてしまうわ!
「ふふっ、照れてる照れてる!」
涼風さんがニヤニヤしながら顔を近づけてくる。くそぅ、俺だって男だ!やられっぱなしってわけにはいかないだろ!
「なぁ、涼風さん」
「ん?なーに?」
「抹茶パフェ、食べたかったんだろ?ほら、あーん」
そう言って涼風さんの口元へスプーンを持っていく。
「ふぇっ!い、いや!汐留くんはしなくていいんだよ!?」
耳まで真っ赤にしながら手を顔の前でブンブンと振る涼風さん。
「どうした?恥ずかしがる必要はないぞ?あぁ、そうか、照れてるのか」
ほれほれ〜とスプーンを口元へ再度持っていく。やべぇ、楽しい。
「うぅ〜!えいっ!」
“パクッ”っと勢いよくスプーンにかぶりつく。相変わらず涼風さんの顔は真っ赤になってる。若干涙目でこちらを睨んでくる。上目遣いとなってるため、ただただかわいいとしか思えない。今も「うぅ〜」と上目遣いでうなってる。かわいいかよ。
“こほんっ!”と一つ咳払いを挟んで涼風さんが
「やってくれましたね!汐留くん!私は汐留くんから抹茶パフェを奪って、たらふく食べる予定だったんです!」
いや、そんなことを堂々と言われても、ダメに決まってるだろ…。まぁ、今現在も顔を赤くしてるので何を言われても恐怖を感じない。
「待って!何か勘違いしてない!?私は別に恥ずかしかったわけじゃないよ!?ただ……えーっと………そう!ビックリしただけだよ!?」
すごく目が泳ぎまくってるぞ……。テンパってるの丸わかりだな。
「はいはい。あ、もう一口食べていいぞ。あーん」
そう言って涼風さんの口元へスプーンを持っていく。
「うへっ!あ、あーん…」
俯きながらスプーンを咥える。今度は頬を赤く染める程度で食べることができているが、「うぅ〜」と言いながら涙目でこちらを睨むのは変わらず。
(だからかわいいだけなんだって……)
すると涼風さんが立ち上がっていきなり…
「どうして!恥ずかしがることなく“あーん”ができるの!?私はとても恥ずかしいのに……」
最後の方は聞き取れなかったが、どうやら俺が平常心でやったことが悔しいらしい。
「ふっふっふ〜。それはな!時々舞にやってるからだ!」
ドヤ顔で言う。いや、ドヤ顔で言うことじゃないな…。若干引かれてるような気がする…。
「……何それズルすぎだよ舞ちゃん……」
何やら下を向いてぶつぶつ言っている。これは完全に引かれたな。
(うん、俺も言っててこれはダメだろって思ったからな)
舞からお願い(強制)された時にいつも「兄妹がすることじゃない!」って言っても、「はぁ?お兄は妹に“あーん”をするのが仕事なんだよ?」って堂々と言うから、お兄ちゃんが大変な世の中になったんだなぁって思ってたんだけど……。
とりあえず、この空気をどうにかしよう。でないと舞に嬉々として“あーん”してる奴になってしまう!
「あー、えっと、その……俺はシスコンじゃないぞ!?」
やべぇ、なんの説得力のない言葉が出てきた……。涼風さんがジト目で見てくる。
「はぁ、汐留くんが実はシスコンということは置いといて…。」
「いや待ってください。置いとかないでください。弁明させてください」
「ふーん………まぁ、聞かないんだけどね」
相変わらずのジト目。だんだんと目を合わせられなくなってきたぞ……。
いや、聞かないんかい!と、ツッコミたかったが、そんなことしてると一向に帰れないので引き下がることにした。これで俺はシスコンになってしまった…。ホント嬉しくねぇ…。
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