第9話 またお兄がバカなこと考えてるよ…
それから半泣きのマスターにそれぞれデザートを注文する。俺は抹茶パフェ、舞はいちごパフェ、涼風さんはチョコレートパフェを注文する。
(デザートを奢ることで少しでも舞の怒りを抑え込もう。何でここまで怒るのかわからないけどな!)
カウンターでは「まどかだってさ、家事忘れてることあるじゃん」とぶつぶつ言っていた。結構声が大きいところから、今回怒られたことに、かなりの不満があるらしい。
(後で奥さんに伝えておこう。少しでも俺への被害が減るように生贄となるがいい!はーはっはっはー!)
「またお兄がバカなこと考えてるよ…」
「な、なるほど。この顔はバカなことを考えてる顔なんだね…」
なぜか二人から引かれているが、今は気分がいいので無視する。
「そんなことよりお兄、何で涼風さんと一緒に帰ることになってたの?」
と、怒った表情で俺に詰め寄ってくる。
(あ、全然怒りが収まってないぞ!?いつもなら甘いものを奢ると機嫌良くなるのに!まだ足りないというのか!でも、甘いものばかり食べてるけど、全然太る気配ないなぁ。細すぎていつか倒れるんじゃないかと心配してるんだが…)
そう俺が現実逃避していると…
「ちょっと!聞いてるの!?」
火に油を注いでしまった。
「舞ちゃん落ち着いて?確かに汐留くんは聞いてなかったようだけど、なんで舞ちゃんが怒ってるのかわかってないと思うから許してあげて?」
「そこはしっかりと俺をフォローしろよ!」
フォローしてくれるかと思ったら、更なる爆弾を投下しただけだった。火に油を注いでさらにガソリンを撒いた感じだ。
(俺を殺しにきてるのかな?確かに、何で怒ってるのかわからないから否定できないんだけどもっ!)
「い、いやぁ、俺も何で涼風さんと帰ってるかわからないんだよなぁ」
冷や汗が止まらない…
「じゃあ涼風さん、何でお兄と下校してたんですか?」
今度は涼風さんの方を向き、舞が聞く。
「それはね!明日、汐留くんにお昼の弁当を作ってくる約束をしたから、何が食べたいかなーって」
どこかから、血管が切れる音がした。俺の弁当は絶対に作るっていつも言ってたからなぁ。やべぇ、舞の顔が見れない。
「お、お兄の……ばかー!」
そう言って喫茶店からものすごい勢いで出て行った。
「ふふっ、可愛いね!舞ちゃんって!」
そう笑顔で言う涼風さんが悪魔に見えたのは言うまでもない。もしかしてラスボスなんじゃないかと思わせる振る舞いだ。
(はぁ、これは家に帰ったら舞の機嫌を取るのが大変だなぁ。まずは何で怒っていたのかを考えよう)
ちなみになぜ怒ってたか涼風さんに聞いたが、「それ、本気で言ってるの?」と、呆れた表情で言われた。どうやら呆れられるほど簡単らしい。涼風さんは妹の本心を理解できる能力をどこかで会得したらしい。滝に打たれたら会得できるかなぁ………。
「で、何で俺を追いかけてきたんだ?」
ようやく俺が疑問に思っていたことが聞ける。ものすごく遠回りをしたがな。
「それはね!一緒に帰りたかったからだよ!」
と、笑顔で言ってくる。そう言われて俺の顔はすぐに真っ赤になってしまう。し、仕方ないだろ!?女の子への耐性は妹か幼馴染しかないんだから!
「あれ?もしかして照れてる?」
今度は一転ニヤニヤしながら言う。しかも俺の顔を覗き見るように上目遣いで行ってくる。
(くっ!手玉に取られてるのは癪だが、かわいいから言い返せない…)
どうにかしようと思っても涼風さんから目が離せなくなり…
「そ、そんなことないわ!」
真っ赤な顔して説得力のない返答をする。その返答に満足したのか…
「ふふっ、そうゆうことにしておいてあげるよ!」
満面の笑みで言われ、その笑顔に見惚れる凛であった。
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