資産0エルのお姫様!
蚤野ヒリア
第1話姫の物語
緑豊かでのどかな田園風景が見渡せる私たちの村には働き者のお姉さんがいます。
髪は綺麗な金髪で美人と言わなきゃ怒るお姉さんは去年、妊娠していることがわかり、今は家のロッキングチェアでまったりと一日を過ごしています。
だから、今日も今日とておうちでくつろいでいるお姉さんに会いに行きます。理由は家事の手伝い、じゃなくて、お話を聞くためです。
「こんにちは! ホオズキさん、いる?」
玄関のドアを開けて家の中に入れば、いらっしゃいと言葉を返してくれます。
「ねえ、これ、迷惑じゃないかな?」
「なんで?」
「だってさ、妊娠している人の家に、毎日話を聞くためだけに通っているんだぜ? 少しは考えればわかるだろ」
私の隣にいる二人の友達は私を諫めたけど、私はお構いなしにリビングに向かいます。私の友達の男の子と女の子も当然ついてきました。
リビングにはロッキングチェアに座っているお姉さんがお腹をさすりながら、窓の外を覗いていました。ちなみに、お姉さんの隣にはおっきな犬もいます。
私はいの一番にお姉さんの元に向かい、言いました。
「ねえホオズキさん! 昨日の続きを話して。私、気になって昨日眠れなかったの!」
「おい、だから、話を聞くだけだと迷惑だと思われるだろ。家事の手伝いくらいやろうぜ」
「じゃあ、先に始めてて。私はお話を聞いてから参加するから」
「それは卑怯だろ!」
私は男の子と喧嘩をしました。女の子は私たちを止めようとしているけど、おどおどとしていて私たちの痴話げんかは一向にやみません。
そこで、お姉さんが唇に人差し指を当ててしーと言いました。思わず、私たちはお姉さんに従って喧嘩をやめます。
「良い子にしないなら、お話はしないわよ。それでもいいの?」
「よくなーい!」
私が言うと、友人たちも頷きます。
「静かにお話を聞ける?」
「聞けるー!」
元気だけはいい私の返事に、頷きを返してくれたお姉さんは口を開きます。
「そう、いい子ね。それじゃあ、今日は特別に、彼女にとって、とても大切な日の話をするわ。姫としてのしがらみから解放された、とっても大切な日のお話をね」
お姉さんの言葉に私たちは息を呑み、目を輝かせました。
「それじゃあ、始まり始まり」
お姉さんは大きく息を吸い、話し始めました。
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