1話)ナイスバディ与えられたけど…… で、何をすればいいわけ?

 えーと、神さま?

 で、いいの?


「そういうことにしておけ」


 なんか、威厳のないおじいちゃんだなあ。

 さっきも……。


「おまえさんとこの神さんがどんなもんか知らんが、わしは昔からこんなもんじゃ。とやかくいわれる筋合いはないわい」


 さっきの人は?


「おまえさんとこの世界でいうところの成仏? もうきれいさっぱりな」


 ふーん……。


「興味なさげじゃな」


 どうでもいいし。


 それより、私の姿、こんなだったっけ?


「うむ。いい出来になっとるぞ! 我ながらな」


 なんか、サイズ感が……。

 って、これ?!


「せめてもの、わしからの贈り物じゃ。これから見知らぬ世界に旅立つおまえさんへのな」


 な、な、な、な……。


「お、ようやくちょっとは事の大変さを理解してきたか? そう、おまえさんは……」


 おっぱいで、下が見えない。

 何これ、バインバイン!

 え、修道服?

 もしかしてこれって、私が作ったアバター?

 ノリノリで、現実逃避で、私の理想と夢をありったけぶち込んだ?!


 聖女さま!


「わしの予想とは違う驚きのような気もするが……」


 ちょっとだけ、理解した。

 私、転生って、やつ、したわけね。


 まだやりたいことあったのに!


「なんじゃ、未練はないとかいっておらんかったか?」


 あれは、寝起きだったからというか、寝ぼけていたようなものだったからというか!


 幼稚園か、小学生の先生になって、好きな子供たちと……。


 でへへへ。


「危ない奴じゃなあ。やっぱり、おまえさんを選んだのは失敗かもしれんなあ」


 あ、違う、違う!

 今のは違うの!!


「なにが違うんじゃ。神に危ない性癖ぶちまけおって」


 そうだけど、そうじゃないの!


 あと、えーと……、なんだ、ほらぁん。


「おかしな媚を売られても知らん。……ま、ちょっとはクルものがあるが。……棚ぼた、かもしれんが……」


 うわ、いやらしい目。


「引くな、引くな」


 もう、じゃあ、どうすればいいのよ!


「今度は逆ギレか。まったく、近頃の若いもんは……」


 近頃じゃなくても年寄りは回りくどい!

 私を連れてきたのはおじいちゃんなんでしょ! 無理やり。

 だったら、文句の一つもいわせなさい!

 こうなったらもう、神さまにだって何でもいえるんだからっ!!


「怖い、怖い。いいのか、それで?」


 何が?


「これからおまえさんには、わしの世界へと旅立ってもらう」


 ああ……。

 って、本当に、そんな展開?


「まあ、そうじゃな」


 はあ……。


 それじゃあ、これから何をすればいいわけ?

 その説明をしてくれるって、わけでしょ。


「やっと本題に入れるか。長かった」


 しみじみいうな。


「しかしな、そこはお前さんの好きにすればええ」


 何それ?

 目的があって、私は呼ばれたんじゃないの?


「それはもちろん。だが、だからといって、おまえさんの人生、第二のか? いずれにしても誰も束縛はできんよ。それこそ、神でもな」


 にんまりされても笑えないジョーク。


「ともかく、これからおまえは別世界で生きるんじゃ。きっとおまえさんの力なら、救世主にでもなってあがめられもしよう。第二の人生、それはそれは楽しいことになるじゃろうて」


 本当に?


「おまえさんの心がけ次第じゃがな。そんな選択肢もあるということじゃが」


 いやいや、だから、もっとちゃんと説明してよ!

 世界観とかさあ。

 そんな簡単にポイっと別世界に放り込まれて、うまくやれる自信なんてない!

 私、いっとくけど、陰キャ!

 コミュ障!!

 現実がいやでいやでゲームの世界に入り浸ってた。

 中二病をマンガやアニメで満たしてた。

 ザ・ひ・と・み・し・り!!


「そんなので先生なんぞになれるのか?」


 現実逃避の夢くらい、見せてくれたって、いいじゃない!


「それだけ神にでも文句いえりゃあ、十分じゃな。その意味では、いい人材を取ってこれたもんじゃ」


 リクルートのCMかよ!!


 って!

 チュートリアルとしては最悪!

 そんなゲーム、すぐにオワコン、いやサ停なんだから!!


「まあまあ、ともかく、行ってこい」


 え、ちょちょ、っと、それだけ?

 それで終わり?

 本当に?


「世界は無限に広がっておる。そこで自由に旅してこい」


 そんな自由度の無限をうたうゲームみたいに……。


「人生、そんなもんじゃろうが。選択肢はおのれで勝ち取れ」


 いやいや、ただの女子高生!

 私まだ、進路も決められない、夢見る17歳!

 それに向かって、何を重いこといってるの?!


「ああ、おまえさんの能力なあ。ゲームとやらのそのままを使えるようにしたから。そこはわしの世界と似ていてよかったわい。やりやすいじゃろう、それで」


 無視するなーーーーーっ


 いやいや、いやいやっ!

 現実にゲームの力なんて使えないし!?

 どうやればいいのかなんてわかるわけないでしょうが!!


 いったい、私の運命、どうなるのーーーーーっ!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る