キングラヴの浮気癖

エリー.ファー

キングラヴの浮気癖

 愛なんて信じてはいけない。

 スパイなんてやるべきではない。

 過ちは繰り返すべきではない。

 絶対に距離を取るべきだ。

 いずれ、僕たちは。私たちは。

 今を失ってしまう。

 奇妙な言葉だが、決して悪い意味ばかりではない。

 前に進んでいるということなのだ。

 荒らしまわってこそ、本番。

 本気になってこそ、今を作り出せる。

 嘘ではない。

 愛なんてそんなものだ。

 キングラヴはいつだって、本気だ。

 人生の中で主人公とは何者なのかを常に考えている。

 忘れてしまえばいいと思う人もいるだろう。

 けれど。

 キングラヴは残念なことに本物だ。

 何もかも積み重ねる。

 何もかも壊してしまう。

 何もかも残っている。

 すべてに影響を与える。

 いつか、神にもなってしまう。

 これは、奇跡に近い何かだ。

 キングラヴのことを侮ってはならない。

 彼は、本物だ。

 一流ではない、超一流だ。

 宇宙すら作り上げてしまうだろう。

 寂しさに憑りつかれて生きている、君たちに絶望を押し付けながら、それを快感に変えてしまえるほどの才能。

 すべては、本物。

 偽物を排除できる強者の証。

 キングラヴの声を聞きに行くべきだ。

 いずれ、僕たちを導いて下さるキングラヴの足にしがみつくべきだ。

 戯言からは、距離を置け。

 しかし。

 キングラヴに忠誠を誓うのだ。

 このままでいいわけがない。

 地球が、宇宙が、世の理が、許そうとしていない。

 言葉を積み重ねた先にある世界を。

 言葉など存在しなくなった世界の先にある未知を。

 キングラヴは知っている。

 愛していると言っても良い。

 人間なんて大嫌いだ。

 命を愛している。

 勘違いをしてはならない。

 キングでラヴなのだ。

 愛の王なのだ。

 誰かに伝わる言葉なのだ。

 これは予言だ。

 キングラヴの遺言だ。

 音を弾く。

 誰にも聞こえない、格言の応酬。

 あぁ、キングラヴ。

 あぁ、キングラヴ様。

 あぁ、キングラヴ様のために。




「キングラヴって何人なの」

「日本人らしいよ」

「よく分からない人らしいね」

「まぁ、噂でしか聞いたことがないからね」

「話してみたいよね」

「みたいけどねぇ。どうなんだろうね。実在するのかな」

「日本人って情報しかないからね。もちろん、嘘の可能性もあるし」

「キングラヴって、いつも何を考えているのかなぁ」

「気になるね」

「気になるよ。知りたいなぁ。どんな小さなことでもいいから」




 キングラヴは天才だ。

 いや、神様だ。

 多くの人が崇め奉る。

 幸せになりたいなら、キングラヴを崇拝すればいい。

 幸せがやってくる。

 キングラヴの教えが、私たちを、僕たちを、人類を幸せにしてくれる。




「僕の家の近くには、小さな小屋があって、その中に神様が住んでいました。名前は知りません」


「きっと、名前と立場を奪われてしまったのだと思います。堕ちた神様は、昔は良かった、と言い訳ばかりしています。なので、とても気持ち悪いです」


「励ましてあげようかとも思いましたが、余り伸びしろを感じないのでやめました。もしかしたら、神様のふりをしているだけなのかもしれません。今度会ったら、叩き潰してやろうと思います。そうすれば、村中に響くすすり泣く声も止まるはずです」


「早く殺したいなぁ。キングラヴも早く殺してあげたほうがいいと言っていたし、本人のためになると思います」

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