第14話 シルヴィアの報告

◇◇◇


 ウィリアム達が、マリーの報告を受けている間、シルヴィアは、早速、ルフをみなに紹介して回ることにした。


(先ずは、お母様とお兄様に、ご紹介しとうございますわ)


 シルヴィアは駆け出したい気持ちを必死に押さえながら、フローラの部屋を目指した。



 フローラは、私室で報告を待っていた。


 膨大な魔力の発動と、鳴り響く警鐘。そして、あの咆哮と圧。ただ事ではない。外出しているヴィーは無事なのか。敵襲ならば、望みはない。


 圧から解放され、しばらく経ったが、実に静かだ。敵襲ではなかったことに安堵した。


 何も手に着かない。

 何が起きたのか。

 早く、知りたい。


「お母様!ただいま戻りましたわ」


 満面の笑顔で部屋に入ってきたヴィーを、ほっとして、強く抱きしめた。


「ヴィー!お帰り。あら!可愛らしい犬?だこと」

「ルフと名付けましたの。今日から、ルフも我が家の一員ですわ」


 ルフの御陰で、ヴィーの憂いが晴れたようだわ。


「よろしくね。ルフ、ヴィーを護って頂戴」

『無論』

「まあ!驚いたわ。ルフは、聖獣なの?」

「お母様。ルフは、真神様ですわ」


 フローラとその場に居合わせた家人は一斉に、深々と臣下の礼を執った。


『構わぬ。楽にせよ』

「ご光臨賜わりしこと、誠に恐縮至極に存じます」

『シルヴィアは、我が魂の片割れ。我が加護する』

「!!!!!光栄至極にございます!」


 フローラは再び、美しき守護神に、深々と淑女の礼を執った。


 冷静に、先ずは落ち着いて話を聞かなければ。散歩に出かけて、犬ではなく、神を拾ってくるなんて。魂の片割れ?加護する!

 ヴィーに何が起きたというの。


 シルヴィアは、アルバートの姿を探している。


「直ぐにアルも来ることでしょう。ヴィー、話を聞かせて頂戴」

「はい。お母様」


 ソファーに腰掛けると、アルバートが血相を変えて、部屋へ飛び込んできた。


「お母様!ヴィー!」

「お兄様。ただいま戻りましたわ」


 ちょこんと淑女の礼カテーシーを執るシルヴィアを、アルバートは抱きしめた。


「アルも一緒に、こちらでヴィーの話を聞きましょう」

「はい。お母様」


 アルも、ヴィーが心配で仕方なかったようね。今にも泣き出しそうな顔をしているわ。


 ハンナは、ハーブティーとメレンゲクッキーを、テーブルへセットした。


「お兄様、この子はルフ。ルフは真神様ですわ」

「えっ・・・・・・。ヴィーは、神様と知り合いなのかい?」

「ルフは今日から私達の新しい家族ですわ」


 混乱から回復したアルバートは、慌てて、ルフに臣下の礼を執った。


『畏まらずとも良い。発言を許す。ルフと気安く呼ぶが良いぞ』

「ありがとう存じます。ルフ・・・様」


 フローラは、アルバートに着席を促し、シルヴィアの話を最後まで口を挟まず聞いた。


 牧草地へ行き、魔法を使ったら、精霊が姿を現し、神々の住まう森へと導かれ、真神に名付け、館へ招き、空を飛んで帰ってきた。


 突っ込みどころが多すぎて、言葉を失うフローラであった。


◇◇◇

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る