隣人さん

ハル

第1話 念願の、ひとり暮らし

私、石山 砂耶香(いしやま さやか)。20歳。


親元離れて、干渉されたくないのもあり、念願の一人暮らしを始めた。




「ヤッターー!これで自由気ままに好き勝手出来る!ラッキー!」




私は普通のOL。


確かに、女性の一人暮らしといえば狙われやすいし怖いけど、嫌気がさしていた家を出て来たんだから、頑張って過ごして充実な毎日を送りたい。




「砂耶香ちゃん、どう?一人暮らし始めてみての感想は」




立井紫 痲由香(たていし まゆか)さん。同僚の先輩と飲みに来ている。


私の面倒を良くみてくれて可愛がってくれて良い先輩。




「はい、もう超嬉しい毎日でハシャイでます♪」


「私も最初は、そうだったのよねー。でも、慣れてくると、たまに淋しくなったりして。その繰り返しだったのよ。砂耶香ちゃんは、今が1番楽しい時期かもね」


「そうかー……だけど、一人になりたい時って良いですよね?」


「まーね。だけど、誰かに傍にいてほしい時とか誰もいないと淋しいものよ」


「じゃあ、私にも、その時が来るのかな?」


「多分ね」





私達は色々、話をしていた。




「だけど、ひとり暮らしするのは良いけど、隣人の人とかって会いませんよね」


「そう、そう。不思議と会わないものなのよね。私も驚いちゃった。いつも隣にいるのに何故か自分だけしかいない感じ。声とか聞こえたりするから住んでるんだって思うけどね」



「そうですよね」






ある日の夜――――




バタン


隣の部屋のドアが閉まる音が聞こえた。




「隣の人?住んでる人いたんだ。あんまり静かだから誰もいないのかと思った」





 数日後――――




「ヤッバー!遅刻!!急いで準備しなきゃ!!」





バタバタ……





私は急いで用意をする。


そして、部屋を出た瞬間、隣のドアが開く。





ガチャ




「おいっ!」




ビクッ




「は、はい!」

「朝っぱらから騒々しいんだよ!」


「す、すみません…寝坊しちゃって…ごめんなさい!すみません!」






私は謝るだけ誤り走っていく。




「全く、何なんだよ!」




✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕




「後で、また謝っておこう。気悪くしたよねー」




その日の夜―――――




ピンポーン



「…………………」




「はい」



ガチャ

ドアが開く。





「あの…朝はすみません…改めて謝ろうと思って」

「あー…別に」

「これ良かったら、お詫びとして受け取って…」


「あー、ごめん。俺、甘いの嫌いなんだよね。良いよ。気持ちだけ貰っておくから、アンタにあげる。じゃあ」


「待って!」



ドアを止める私。





「何?」

「受け取ってもらわないと、私、気が済まなくて」

「いいよ。いらない!」

「そう言わないで…あの…」




「龍ちゃーーん、何してんのーー?早くーーぅ♪」




《女の人》




「あっ!ごめん!すぐ行く!じゃあ」

「あっ…」




パタン


ドアが閉まり鍵を掛ける音がした。



私は仕方なく自分の部屋に戻り、渡すはずの品物を袋に入れ、ドアノブにかけていた。


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