第二十四話 「ночной поезд(夜行列車)」

"ガタンゴトンッ" 


「・・・・っ」


"ガタンゴトンッ!


「こんなモンか...」


"ガタッ!"


「・・・・」


"ドスッ"


モスクワ ― ベルリン間を結ぶ大陸間鉄道、


【орлиный экспресс。

 (クァリーニイェ・エクスプレス】


「置きづらいな....」


"ガタッ ガタタッ"


藻須区輪亜部新聞、第四編集局長、


更には今日朝本社、そして


ヨーロッパの通信社で世界的な規模を誇る


"アラベスク"で、日朝ヨーロッパ管区


総局長を務める河野は、自分が今在籍している


モスクワから丸一日程かけて、


ドイツの首都ベルリンへと繋がる


この列車内に設置された特等車専用の


個室の寝台が置かれた狭い部屋の中で、


自分のパソコンを置く場所がないかと


部屋の中を見渡しながら、パソコンを窓際から


突き出している台の上に置く


「(...藻須区輪亜部新聞...)」


"カタッ"


河野、は狭い室内に置かれた寝台に腰を下ろすと


台の上に置いたパソコンを開き、


今現在、自分が編集長を兼務している


藻須区輪亜部新聞、"第四編集局"の


事について考えを及ばせる...


「(・・・・)」


"ピッ ピッ"


「(状況的には、通常の業務様態じゃ


  まず無理って事だな....)」


"ガタンッ ゴトンッ"


「っ―――、けっこう揺れるな」


現在の藻須区輪亜部新聞の概況が書かれた


パソコン内に表示された雑多な


文書覧に目を通していると、


車輪が線路と接触しているのか


大きな音が耳に入って来るが、


どうやら今自分がいるこの特等車には


その揺れの影響は無いらしい


「(....そもそも、競争過多な時代で


  各社どこも自分達の会社が生き残るのに


  必死で仕事をしている時代だ...)」


"ピッ ピッ"


「(・・・・)」


この、今自分が支局長を務める藻須区輪亜部新聞。


「(アラベスクとの併合の都合で、


  この藻須区輪亜部新聞を日朝本社が


  買い取ったが....)」


モスクワ市内の土地の地価や、


Earth nEwsの事業との連携を考えれば、


この藻須区輪亜部新聞社は


優良な物件とは言えなくは無いが


殊(こと)、この新聞社が行っている


新聞業務に関しては、いくら


大袈裟に言葉を取り繕った所で


"優良"と言う事はできない


【・・・よく分からんなー??


 ―――河野! 頑張れ!】


「(松坂局次長・・・・)」


【頑張れ! ・・・頑張れ!】


「(・・・・)」


文書覧を眺めながら東京本社にある、


すでに繋がりは大分薄くなったが


一応は上司である


松坂 保夫の言葉を思い返すが、


生来適当な性格をしているのか、


松坂は今の藻須区輪亜部新聞の状況に関して


自分に一任すると告げたぎり


特に率先して連絡を取る様な行動はしていない


「(・・・取り合えず、"物件"として考えれば、


  確かに価値はあるが...)」


"ピッ"


河野は、パソコン内に表示された


藻須区輪亜部新聞社の本社ビルの


外観写真を眺めながら


その写真の中に映し出された


ビルの"中"の事について考える


「(土地や、ビルの価値はあったとしても


  肝心のその"中身"である新聞業務の方が


 上手くいってないんじゃな...)」


"ピッ ピッ"


「(・・・・)」


"ガタン ゴトンッ"


「(となると....)」


Earth nEwsの編集局がある、


ドイツ、ベルリンのアラベスクの本社ビル


"トーム・イェメルビル"


を目指しながら、何か藻須区輪亜部新聞の業務を


再び軌道に乗せるために方法は無いかと


模索し始める.....


【頑張れ! ・・・頑張れ!】


「(・・・・)」

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