佐世保のレモンステーキ
お昼は吉野ヶ里歴史公園レストランや。気合入れほどのもんやないけど、お土産も仕入れるついでや。
「ハンバーグ定食」
「コロッケ定食」
「やわらかチキンカレー」
肉は佐賀牛なんか。
「ご飯が古代米なのがおもしろいよ」
こういうとこのレストランやから期待してへんかったけど、思いの外にアタリや。メシ食ってお土産仕入れたら、
「クライマックスに向かって出発」
吉野ヶ里から佐賀市、小城市を抜けるまでは我慢の市街地走行や。ここを抜けるほかに道ないもんな。ほいでも小城市を抜けたら空いてきた。
「伊万里だ♪」
今日は通過や。
「佐世保だよ」
通過や通過。佐々浦渡ったら、
「どうなるの?」
どうもなるか! 近づいただけじゃ。
「九十九島は?」
時間があらへんからパスや。次の信号を右やで、
「らじゃ」
「へ~い」
ユッキーは言うまでもないけどタフやが、結衣は連日の長距離ツーリングにヘバッてきとるかな。でもこの道は、
「なんか急に空いたね。快適、快適」
昨日からほとんで市街地走行やったからコトリもそうや。この辺はリバーサイドロードか。信号も少ないしピッチもテンションも上がって来るわ。
「ところで合ってるの」
たぶん。そやけど道路案内が出て来んのは嫌やな。
「直進で神崎鼻公園って書いてある」
ほら見てみい。トンネル潜るみたいやけど、道も広いからバイパスでも整備されたんやろな。
「飛ばせ、飛ばせ、捕まるのは先頭のコトリだけだ」
白バイに追われたら最後尾の結衣かって危ないやろうが。
「真ん中のわたしは安全地帯」
黙っとれ! トラス橋を渡ったらこれはシーサイドロードでエエやろ。
「あれ、道が急に狭くなってる」
ほいでもって左に曲がれってなってるな。うわぁ、こりゃこんな道が続きそうや。この辺は漁村やろうな。ほいでもってここは漁港みたいやけど、なになに、
「クランクで漁港を抜けろってなってる」
ああここか。またエライとこにあるもんや。漁港の倉庫の裏みたいなとこやんか。こんなとこ、観光客がクルマで来たらエライ目に遭うで。それでも駐車場とトイレがあるのはありがたい。ここからは歩きやな。遊歩道をちょっと登って、
「あれだ!」
階段で下ったとこにモニュメントがあるやんか。円形の展望台にもなってるんやな。展望台の下は磯になっとるから、ここがまさしく本土最西端や。前に島が見えるのが玉に瑕やが、
「景色としてはあった方が良いかも」
ここも来る奴は少ないやろ。
「夕日は綺麗だろうけど」
コトリも見てみたいが、そんな事しとったら宿に着かんようになってまうわ。佐世保に引き返すで。目指すは佐世保駅や。
「ここの自転車駐車場はタダなんだ」
ほいでもってホテルは東横イン。愛想ないけど時間と手間とコストや。
「コトリ、お腹減った」
たく餓鬼か。ほいでもコトリもそうや。わざわざ佐世保駅前に泊ったのは、
「レモンステーキ? ステーキにレモンはよく使うけど」
佐世保は昔から軍港やけど、今でもアメリカ第七艦隊の基地があるねん。海軍は陸軍に較べるとメシが美味いと言うのは世界共通みたいなとこがある。
「海軍カレーは有名だものね」
話ではアメリカ海軍さんが食べるステーキに目を付けたそうや。アメリカさんやからドでかいステーキやったんやと思うけど、日本人が食べるにはボリュームがありすぎるし、味も重すぎると感じたそうや。
日本料理の肉料理言うたらすき焼きになるんやが、アメリカのステーキをすき焼き風にアレンジして出来上がったのが佐世保のレモンステーキらしいわ。
「ステーキとすき焼きのコラボには見えないね」
コラボいうよりフュージョンやと思うけど、ここまで完成度が上がったから定着したんやろな。
「コトリ、これってどうやって焼くの」
出て来たんは薄切りステーキ肉とでっかい焼き皿や。
「コンロがないよ」
だから薄切りのステーキ肉なんよ。これを焼き皿の上に置いたら、そこにやな、このレモン醤油ダレをかけるんや。
『ジュー』
薄切り肉やからすぐに焼けるで。裏返してお好みの焼き加減でレモンをタップリや。
「これ軟らかくて美味しい」
「レモンがあっさりさせています。いくらでも食べれそう」
肉を切るのはナイフとフォークやけど、箸でお肉を取ってご飯に巻いて食べても、
「美味しい」
「日本人ならこういう食べ方が一番です」
そいでやな。ご飯が残ったら焼き皿の中に移して、タレと混ぜて食べるのが通らしいけど、
「肉無しステーキ丼かな」
「こんな食べ方が出来るのも楽しい」
よう工夫がされとるわ。薄切りステーキ肉やから熱した焼き皿で焼けるし、焼きすぎへん。さらに肉が醒めへんねん。
「なるほど、卓上コンロ無しで手軽に鉄板焼きが楽しめるのか」
わざわざ佐世保に寄った甲斐があったで。こんなもん我慢できるかいな。
「お代わり」
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