【雌鬼】こんな場所に居られるか!俺は今すぐ帰るぞ!※ネタバレしろ【にじこん/鬼公方アラヤ】 そのなな

 ついに我々は辿り着いた。みるくの例を考えるに、ここがあの男のハウス……もとい卓丸が居ると思われる屋根裏部屋。流石に卓丸が真犯人とかいう流れのシナリオではないと思っているのだが、道中の苦労を考えると面倒臭え場所に隠れやがってこの野郎という気持ちが強い。


「長い、道程みちのりだったね……」


チャット▼

・復活のタカシがこの世界で種馬になる覚悟を決めた瞬間は膣が熱くなった

・正気を取り戻した雌鬼が身を挺して爆弾からアラびきくんを守ったシーンは涙なしに見れなかったね……

・※なおこれらのシーンは本作には収録されていません

・お前らはそうやっていつも存在しない記憶を差し込もうとする……

・そこは慣れってやつよ

・まさかイマジナリー彼ピ検定をお持ちでない?

・必須資格やぞ

・ところで今童貞って言いました?


「言ってないっすね」


 勝手に読み方を変えて変換するな。


「さて、最後のひとりは果たして無事なのか……いざ!」


 ここに来るまでの謎解きによって出現した階段を昇り、解錠。気合を入れつつ突入して行く。


 ふむ……雌鬼は居ない、と。内装の方は何と言うか、物置というよりかは秘密基地に近い風情だ。ベッドまで置いてあるし、何ならここで暮らせそうなくらい。

 すると物陰の影が動き、声が。


卓丸「お前、アラびきか!? 無事だったんだな!」▼


アラびき「卓丸! こんな所に居たのか!」▼


「ホントそれな」


 まあ階段下ろすための手順考えたら、隠れ場所としてはこれ以上ないと思うけどさ……。ゲームの舞台になるこの手の館ってクッソ暮らし辛そうなんよね。


 ともあれ初の五体一本満足な再会に喜ぶアラびきくん。協力して脱出しようと提案するが、ここに来てまさかの卓丸が本領を発揮し始める……。


卓丸「駄目だ、今は腹が減って一歩も動けない!」▼


「は?」


 こいつ……まさか今の状況を理解した上で言ってるんか?


卓丸「ちょっと前にみるくが食い物探しに行くって出て行ったんだけど、アイツ全然戻って来ねーし!」▼


「はあ!?」


 こ、この野郎……! 何でみるくがここの鍵持っていたのかと思ったら、そういうことかよ!


アラびき「みるくのことを……」▼


・伝える◀

・伝えない


卓丸「はぁ? 何言ってんだお前。どうせ見間違いだろ!」▼


「あっ、さてはこれ何言っても意味ないやつだな?」


 みるく可哀想過ぎない? つーか卓丸こいつ、まさかのパニック映画お約束のクソ女枠かよ……。


卓丸「そんなことよりアラびき、お前が代わりに何か持って来てくれよな!」▼


 あーはいはい、なるほど。なるほどなぁ……。


「よーし、今からここに雌鬼連れて来ようぜ!」


チャット▼

・仲間売る気満々で草

・ここに来て大分空気読まないキャラだよね、卓丸w

・まあでも日中のヒトメスの扱いなんてこんなもんよ

・せっせと尽くす働きアリゆえ

・ヒトオスくんは何よりも大切にしないとだから……

・全肯定しなきゃ


 お、お前ら……普段のコメントではアレでも、本当は健気でいじらしいお嫁さん属性持ちの清楚な──、


チャット▼

・だが夜になったら覚悟しておけ!

・一度分からせてやればこっちのもんよw

・生意気言っちゃうお口は26時間体制で塞いじゃいま~す♡

・もう二度とイキれないね

・御恩には奉公がセットって習わなかったんですか~?w

・こっちは別に謀反してもいいんですけど???

・つよつよのヒトメス様が何の見返りもなしに従うワケないだろッ! ワガママ言った数だけ人口増加に貢献しろオラッ♡


 知ってた。


 むしろ何度目なんだろうね、この流れ……。イチモツ連鎖の頂点過ぎるだろこのチート生命体。


「そういうとこだぞお前ら。ホントそういうところなんだわ」


 つれぇ、やっぱつれぇよ……。何が辛いって、配信だと貞操の危険がないから、こんなのでも徐々に自分のリスナーに対する愛着みたいなのが生まれつつあるのがマジでつれぇ……。


 ま、まぁそんなことより今は攻略だ。卓丸への不満をリスナーに愚痴りつつ、遊戯室へと逆走。厨房にあるのは料理というより食材だし、最後にみるくが居た場所だからね。もう合間の襲撃には何の感慨も抱けない身体になっちまったよ。


「っていうか遊戯室って確か……。うっわ、開けるの地味に怖いんだけど」


 中に入ると──、


「……誰も居ない」


 まさか雌鬼の死体すらないとは……。あいつら何処行った?


 と、そこで唐突に表示されるカウントダウン。


「は!? ……あっ、これさっきのガスのせいか!?」


 ガス漏れっていうか毒ガスエリアの扱いじゃねーか! えーっと、確かバーカウンターの奥につまみか何かがあった筈だ。急げ急げ。


 ──ふー、ちょっと驚いたが、なんとかノーミスで制限時間内に無事脱出。

 そんなことよりも、


「あの……雌鬼と一緒にみるくの死体、消えてました……」


チャット▼

・な、なんだってー!?(仰け反り)

・はえー、さっぱり気付かなかったわー(感心)

・不思議なこともあるもんだ(棒)

・よく分かったね~凄いね~

・気付けて偉い! 


 わざとらしすぎるんだよなぁ! このタイミングでの全肯定は止めろや! 


 とにかく取るものは取ったし、若干の不穏さを感じるがさっさと戻ろう。





 屋根裏部屋再び。


 卓丸に食料を渡すと、食い出がないことに不満を漏らしながら、ガツガツ! ムシャムシャ! とクッソ汚ねえ鳴き声で食料を貪り始める。お前そのキャラで食いしん坊枠なの?


「うんうん、次舐めたこと抜かしたらマジで殺すからなお前」


チャット▼

・ヒエッ

・なんか雌鬼に食われた時よりキレてない?w

・今日一番ヘイト高い相手が卓丸は草

・ヒトオスの敵は同じヒトオスだった……?

・卓丸とアラびきは裏でマウント取り合ってそうな雰囲気ある

・やはりヒトオスハーレムは悪、我々に分配すべき


 まあ同じ群れにいると、上下関係とか縄張り意識みたいなのが生じるのが動物だよねって。

 でもそうなると、基本は獲物を分け合うヒトメスの方が生物として賢いことにならん……?


 恐ろしい事実に行き着きそうなところで、ゲームの方にも変化が。屋根裏部屋に何者かが侵入して来たようだ。


家政婦「くんくん……。美味しそうな匂いがするのはここかな?

 ──嗚呼、それにしてもお尻……。男性のお尻に思う存分この身体を叩き付けたい……!」▼


 そして例によって例の如く雌鬼に変貌。隠れているアラびきと卓丸を探し始める。しかもこれまでと違い、時間切れや安全地帯が存在しないおまけ付き。


「わーお……」


 パリピは論外として、手料理が食べたいだけの貴婦人にもっと優しくしておけばよかったかな……。でもあいつはあいつで約束守らずタカシ食ってんだよな。


チャット▼

・性癖歪み過ぎやろw

・雌鬼とは業深き者……

・まあ正直分からんでもない

・パンパンされたいけどパンパンもしてみたい気持ちはあるね

・ヒトオスをメス堕ちさせる背徳感は言語化出来ない程の愉悦と聞く

・流石に可哀想でしょ

・か わ い そ う は か わ い い

・お前のプライドがズタズタになる姿が見たいんだ……♡

・嫌われても知らんぞw

・せめて撫で回すくらいにしとけ

・そもそも相手がいないからへーきへーき

・それはそれで悲しすぎんか……?


 よかった……。いやよくはないが、もしこれがヒトメス共通の性癖だったらこの世界を生き抜く自信を失うとこだったわ。


 ひっそりと引退の危機を脱したところで、画面上ではアラびきに対して「お前が後を尾けられたせいなんだから、お前が何とかしろよ!」と卓丸がヒスっている。


「もうこいつ差し出してクリアで良くない?」


チャット▼

・駄目です

・そんな選択肢はない

・自力で何とかしてもろて


 卓丸よ、お前に心からのファッキュー。

 更にここで選択肢。この場を切り抜けるための対応を決めるようだ。


・アイテムを使う◀

・自分のお尻を差し出す

・他の方法を探す


 アイテムって言われてもな。鍵や謎解きで使ったものは破棄されるし、残ってるのなんてライトみたいな汎用アイテムくらいしか……。


・割れたお尻 :1 ◀

・懐中電灯  :1

・ドライバー :1


※よく引き締まったお尻。既に割れている※


「ま、まさかくるみのことか……? そんなの駄目に決まってるだろ! くるみとはここまで一緒に頑張って来たんだぞ!? それなら足手まといの食い倒れチンポ野郎を生贄にするべきだろ!」


 自分を差し出す選択肢はあるのに、卓丸を差し出す選択肢がないのはおかしいと思うんですよぼかぁ。


チャット▼

・大分凄いこと言ってるぞお前w

・ブチギレやん

・卓丸への怒りが留まることを知らない

・謎の尻>卓丸は草なんよ

・食い倒れチンポの語感はすき

・落ち着け、くるみはお前の脳内が生み出した幻だぞ

・このゲームにはね、そんなキャラは存在しないんだ……

・っていうかお前も今の今までくるみのことなんて忘れてたろw


 うるせぇこの配信では俺が正義なんだよ。

 とにかく三番目だ三番目。要は他にも手があるってことだろ。


 ……よし、雌鬼女の視界を避けて周囲を探索していると、不自然に目立つポスターを見つけたぞ。どうやら男性の写真がプリントされているようで、調べてみるとこれで後ろの穴を誤魔化していたらしい。向こう側にお外が見える。


・割れたお尻で罠を作る◀

・何もしない


「あ、なんとなくオチが見えたわ」


 選択の幅は雌鬼コロコロに関する問題でしかなく、どうあがいてもくるみとはお別れしなければならないらしい。


「すまないくるみ、どうかあの雌鬼と射精しか能がない卓丸を恨んでくれ……」


 選択肢を選び、何やらゴソゴソと作業音の後に完成。うむ……壁の穴に合わせて設置された姿はまさしく、


「壁尻じゃん」


 ポスターの意味はそういうことかよ。観光地の顔ハメパネルじゃねーんだぞ。


チャット▼

・いちいち卓丸への罵倒挟むの止めろw

・恨みの対象から自分を除外してるの地味にこすい……

・お前が壁尻になるんかーい!

・早朝お散歩してるとこんなんなってるヒトメスたまに見かけるわ

・どうしてその乳と尻で通れると思うのか……

・いや、通りすがりのヒトオスに助けて貰って合法的に恩返しするためだよあれ

・古典に倣うってやつよね


「発想が当たり屋のそれ」


 恩返し系の物語って大概どれも押し売りなとこあるけどさぁ……。


 さて、仕掛けが済んで暫くすると、雌鬼がくるみの存在に気付いた。そして猛烈な勢いで突進して行き、


 ──ぐしゃっ。


 そのまま壁を貫通、見事に落下して逝った。


 音はエグいのに絵面は割とギャグなんだよなぁ。

 雌鬼も怖いは怖いんだけど、単純というか本能のままというか……。もしやこれ、製作者の壮大なヒトメス自虐作品なのでは?


「まさか今のは……あの伝説のはっけよ院さん……!?」


チャット▼

・どすこ院さん! どすこ院さんだったんですか!?

・ぶつかり稽古で御座ったか……

・正直あのお嬢なら向かう次元を間違えて迷子になってそうではある

・<四十八手院カリン>キレそう

・草

・キャラ崩壊はマズいですよ社長!


「やっべ、バレた……。ごめんゴメン、でもほら俺おっぱい相撲とかは結構好きだからさ! 今度事務所に行く時にケーキ買っていくから、それで許して?」


 それにしても、この人がコメントに居ることを特に誰も気にしなくなってんな……。


チャット▼

・それフォローになってる?

・詫びケーキは草

・ケツの肉気にしてる奴にカロリーの塊与えんなw

・ヒトオスくんからの差し入れとか拒否権ないやん

・……ところで雌鬼が釣れたってことはさ、あのアイテムって男の尻じゃね?

・あっ……


 えっ。

 嘘だろ……? でもそう言われると確かに……。


「く、くるみお前男だったんか!? そんな……俺の中じゃもう、タカシを踏み台にアラびきと卓丸も手籠にして、いよいよみるくが勘付く直前だったのに……! 実は男だったオチなら作風変わっちゃうじゃん!?」


チャット▼

・いつの間にそんなに話進んだんだよw

・勝手に脳内で架空ドラマの続きを放映するな

・私らにもアウトプットしろ

・まさかくるみの正体が女装ヒトオスだったなんて……!

・くるみ→ナッツ→たまたま

・あの名前は伏線だった……? 


「つまり、みるくは腹違いの弟にメイドの格好でご奉仕させていたことに……?」


チャット▼

・はぁ~(クソデカ溜め息)

・おこだよ?

・みるくの女郎許せねえ

・まだ囲う男増やすんですか???

・それはそれとして、女装メイド弟というセンスは褒めてやる!

・お前が卓丸に卵を投投げつけるように、我々もみるくに卵を投げるのだ

・何で卵?

・怪我するのは可哀想じゃん……

・唐突な優しさアピール止めろw


 最初に拾ったアイテムから生じた物語がまさかの展開(※ゲーム本編とは一切関係がない)へ突入したことに動揺を隠せない我々。


 だが心を落ち着ける暇は与えられない。無情にも雌鬼を排除したことでイベントは進み、部屋の奥にひっそりと置いてある写真立てがひとりでにパタリと倒れた──。

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