いつも妹がバカにしてくるので、俺は学校一の美少女とイチャイチャすることにした

譲羽唯月

第1話 俺は、生意気な妹にわからせたい

「お兄ちゃんって、いつになったら、彼女作るの? やっぱ、手遅れじゃない?」


 刹那、妹のゆいからの厭味ったらしい声が聞こえる。

 響輝ひびきはイラっとしたものの、極力冷静さを保とうと必死だった。


 響輝は唯の兄なのだ。

 こんなことで怒っていたら、どうにもならない。


 夕食終わりの自宅。リビングのソファに座っている響輝はラノベを読んでいた。


 一旦、ラノベを閉じ、近くに佇んでいる唯を見やる。

 ツインテールの髪形がよく似合っている妹はニヤニヤしていて、いつまでも童貞な響輝を笑っていた。

 いつものことだが、内心、そろそろ限界だ。


 唯をどうにかしたい。

 そんなことを思い、手にしていたラノベをソファに置いた。


「お兄ちゃん、もしかして、また、エッチなラノベを読んでいたの?」

「エッチな感じじゃないし。普通のラノベだから」

「ふーん、でも、だから、モテないんじゃない?」

「それ関係ないと思うけど」

「でも、お兄ちゃん、今まで彼女はできたことあるの?」

「……ない、な……」

「でも、じゃあ、ラノベ読んでいるのが原因じゃない」

「俺はラノベが好きなんだ。妹からとやかく言われたくないし」


 響輝は強気な口調になった。


「妹に怒るとか、酷いんだけど」


 じゃあ、どうすればいいんだよ……。




「そういえば、お兄ちゃんって、どういうラノベ読んでるの?」

「なんだっていいだろ」


 面倒になった。

 唯と関わるなんて御免だ。

 響輝はソファから立ち上がり、ラノベを手にして自室に向かおうと思った。


 響輝がリビングから出ようとした時、妹が扉の前に立ち、通せん坊してくるのだ。


「お兄ちゃん、そんなに怒らないでよ。じゃ、私が一緒に付き合ってあげるよ♡ それならいいでしょ」

「断る」

「えー、なんで即答なのよ。私のような感じの子なんて、なかなかいないよー」


 確かに、妹の美少女ではある。が、中身が最悪。いくら容姿がよかったとしても、内面に問題がある時点で却下なのだ。


「私、お兄ちゃんのために、エッチなことでもするし」

「そんなの望んでないよ」

「そんなにつれないこと言わないでよ」

「というか、俺らは血の繋がった兄妹だろ。そもそもが無理だろ」

「そうだけど。もし、血が繋がっていなかったとしたら?」


 唯はグッと体を近づけてくる。

 高校生になって、膨らんできたおっぱいを、誘惑するように響輝の胸に押し当ててくるのだ。


「ねえ、私が義妹とかだったら、どうする?」

「……だとしても、無理だな」

「えー、私、お兄ちゃんのために、恋人になってあげたかったのにー」


 唯は嬉しそうな口調で言う。


「顔近いから」


 響輝は妹から距離を取ろうとする。


 実のところ妹となんてありえない。

 絶対に無理だ。

 そう断言ができる。

 響輝はそのまま、リビングから立ち去って行くのだった。






 響輝が読んでいるラノベには、唯と似た感じの美少女が登場している。

 このラノベを読むようになってから、次第に、妹の服装や髪形が、その子に似ているような気がしてならなかった。


 たまたま、似てきているだけであって。多分、唯は、このラノベのことを知らないはずだ。

 妹はラノベをキモイものだと考えている。

 ゆえに、妹自ら似せるようなことはしないだろう。


 響輝は今後どうしようかと考え、うつ伏せになるようにしてベッドへダイブする。


「……」


 響輝の自室には本棚が三台ほどある。昔のラノベから最新のものまでぎっしりと集めているのだ。


「はあぁ……昔は違ったんだけどな」


 昔の唯はもっと可愛げがあった。この頃読み始めたラノベに登場するような妹のように愛らしかったのだ。

 どうして、あんな生意気な奴になってしまったんだろうと思う。


 時の流れというのもは本当に怖い。

 どんなものだって変化させてしまうからだ。

 けど、ラノベの世界だけは変わらない。

 すでに決まっているからだ。


 時間が止まった空間であれば、綺麗なものを、そのまま維持できるのにと思う。


 本当は響輝の唯とは普通に仲良くしたいのである。でも、妹のことをウザく感じるようになってから、どうしても心から仲良くできない自分がいるのだ。


「やっぱ、唯にはわからせてやりたいよな」


 でも、解決手段がないのだ。

 どうやってわからせてやればいいのだろうか?

 けど、考えれば考えるほど疲れが蓄積されていくようだった。


 今日はもう夜も遅いし、そろそろ寝るか……。

 響輝はベッド上で態勢を整え、仰向けになって就寝するのだった。






 翌日の放課後、あり得ないことが発生した。

 正面を見れば、クールな雰囲気を醸し出す、ショートヘアな学校一の美少女――莉緒りおが佇んでいたからだ。


 彼女は真面目な感じで何を考えているのかよくわからない子ではあるが。むしろ、そういうところが良いと、学校中の男子生徒から人気を得て、注目されるようになった美少女なのだ。


 彼女は校舎の裏庭に佇み、正面にいる響輝へと視線を向けていた。


「響輝君って、付き合ってる人っているの?」

「今はいないけど……」


 内心、彼女は欲しいと思っていた。


 むしろ、莉緒と付き合いたい。

 学校では陰キャではあるのだが、告白されたのならチャンスである。

 これで、バカにしてくる妹をわからせることができると思った。


「お、俺でいいのなら付き合うよ」

「いいの? 私と?」

「君の方から告白してきたのに驚くところなのかな?」


 響輝は軽くツッコミを入れつつ、現状を理解する。


 これで学校一の美少女と付き合える上に、妹にはわからせてやれるんだという思いが、内面から込みあがってくるのだった。

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