どうして、わたし、は、死にたいのだろう? 秋葉原編
幻人
第1話 死にたい、を証明してあげる
わたしは、いま、秋葉原の、ある場所にいて、死にたい、と、思っている。
秋葉原はわかるかな?
その住所は神田佐久間町であり、天気は雨であり、目にはいる居酒屋のすべては人で溢れているのであり、いま、とは2022年9月2日金曜日であり、腕時計を見ると19時35分である。
わたしは、白いTシャツに黒いズボンで、いま、パソコンでこの文章を打ち込んでいる。
たぶん、ダサいよね?
靴下は短いものを履いている。
これもよれよれで、変なストライプだからダサいよね?
あっ、そうだ、言い忘れたけれど、わたし、は、いま、34歳である。
えっと、5月の7日に、わたし、は、その年齢になったのだけど、美味しいケーキを食べたよ。
ねえ、どう? ケーキは、みんなは、お好き?
あと、わたしの何を書けばいい?
まあ、いいや、とにかく書いてみよう。
どうして死にたい、と思うのか、不思議に思ったから書くだけであり、とくに、それいがいに、理由はない。
これが初めての、死にたい願望ではない。
これまでに何度も思ってきたが、そのたびに、わたし、は、それをノオトに書きとめて、なんどもなんども見直して、形容詞をつけたり、聞きなれない、むつかしい言葉をひっつけたりして、ながい小説をつくってきた。
わたしは、これまでに4冊の本を書いて、ちゃんと出版したけど、どれもこれも納得がいかない。読みかえせば、読みかえすほど、殺したくなる。
わたしは、なんども自分の文章を殺害してきた。
みんなも、殺したことはある?
自分の文章を殺すことは、ほんとうに、いや、ほんとうだよ?
じつに、じつに、めっぽう悲しいよ。
絶対におすすめはしない。
・・・・・・
あっ、えっと、何を書けばいいんだろう?
死にたいことを、どう書けばいいんだろう?
だれか、ほんとうに、これを読んでくれるのかな?
あっ、今、新時代っていう居酒屋の道を小さなネズミが通ったよ。
新時代は、秋葉原で一番安い居酒屋だと思う。
美味しくない、焼き鳥の、あれ、なんだっけ、鶏皮だ!
あれを、食べながら、90円の生ビールを飲んでいる人間は、どう思う?
わたし、は、あのネズミちゃんよりも醜いと思うよ。
人類は、はやく、自殺した方がいいよね?
みんな、は、どう思う?
ほんとうに、見てるのかな?
わたしの文章は読まれてる?
明日もこうやって書いてみたいよ、死んでなかったら。
だれか、もし、これを読んでくれたら、神田佐久間町で、わたしを探してほしいよ。
そこで、きっと一番ださい人間が、それが、うん、わたし、だよ。
明日も、こうやって書いていくよ。
みんなも、死にたい、って時があるでしょう?
それを、わたしが、ここで証明してあげる。頑張ってみる!
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