第15話 お着換えチャレンジ再び
ゆうかガチャは俺に辛い禍根を残した。
五人全てがみなムサい男で、美少女みの欠片もなかったから。
ついでに言うと受付嬢のお姉さんに啖呵を切られたもので。
そこで俺達は酒場を後にし、武具屋へと向かった。
目的は当然ながら武器の更新。
あと防具も少し見て行こうという事に。
「白金の剣に白銀の盾、ねぇ……どう見ても二番目の街で扱う装備じゃないよな」
しかし早速、想像を超えた豪華な品々に驚かされる。
武器も防具もやたらと宝石や貴金属が散りばめられててやたら煌びやかだ。
値段は至って普通なんだけども。
「基本的に戦いは敵が勝手に死ぬのを待つ事ばかりで、実際に武具を使う事はあまり無いですからな。需要が少ないせいで供給側のグレードばかりが跳ね上がった結果ですぞ」
「なぜその状態で武器防具屋が成り立つのか」
武器は消耗度の問題で、防具はドリル一強のせい。
防具に至ってはオシャレ装備扱いだから豪華さだけしか取り柄がないし。
おかげで全体的に値崩れし、一品モノだけが幅を利かせている状態だ。
きっと最初の街も同様な状態だったんだろうな。
「お、新型ドリルあるじゃん。商品名は『よいドリル』、まんまじゃねーか!」
よく見ると定番と化したバグ装備も売っている。
更にはその上位商品まで。
やはり武器防具だけでは商売が成り立たないからなのだろう。
「あ、それはゴミなのでいけませぬ」
「見紛う事無きゴミね」
「産廃ゴミでっすね」
「なんで!?」
「初期品と違い、防御がたった60000程度しか上がらないからですな」
「充分高い気がするんだけど!?」
「ならこっちのチェーンソーを装備した方が上がりまぁす」
「それ武器に装備した方がずっといい気がするんだけどォォォ!!?」
けどどうやら品質=防御力となる訳では無いらしい。
その辺りがとてもバグっぽくて笑えない。
おまけにユーリスがどこから持って来たのかすんごいの勧めて来るし。
やめなさいユーリス! 店の中でウィンウィンしないで!
どうやらドリルもチェーンソーも道具扱いで、武器として装備出来ないらしい。
どう見てもチェーンソーは普通の剣より強い気がしてならないんだけども。
というかなんであるんだよ。
ホントこの異世界なんでもありだな!
よくわからない世界観にまた悩まされつつ、雑貨コーナーから出る。
それで再び防具コーナーへと戻って来たのだけれども。
するとその手前でウィシュカが立ち止まった。
どうやら俺の目論見を察したらしい。
途端に眉間を寄せて美顔を歪ませる。
「な、何をしに防具コーナーに戻るのかな?」
「もちろん、ウィシュカの良い服装を探す為に決まっている!」
「やっぱりー!?」
そんな顔も、たちまち肩ごとだらりと下がる事に。
すぐ観念してくれてこちらも助かる。
「母親から聞いた話だと、紐づけされる様相は代によって違うらしいからな。もしかしたら今ある装備の中にまともな姿になれる物があるかもしれん」
「どうしてそこまで容姿にこだわるの!?」
「さっき言っただろう! 後世に伝わる勇者パーティのメンバーはビジュアルも大事なのだとォ!!!」
「うぐッ……!」
ウィシュカ自身も今が最良とは思っていない。
ただ「知る中で最もまとも」だから選んだだけで。
けどもし今の装備の中に、真にまともな姿へと変われるモノがあるのだとしたら。
どうせ買う訳では無い、試着すればいいだけだ。
それだけで真の美少女になってくれるのならば、俺は労力を懸ける事だっていとわないッ!!!!!
そんな想いを目力でぶつけつつ手招きする。
その視線は更に試着室へ、彼女を引っ張るかの様に移させた。
全ては勇者の為に。
この信念があるからこそ、ウィシュカも逆らうつもりは無い様だ。
けどこっちも無理に従わせたい訳では無い。
ただ今だけは我慢して欲しいと心に願う。今後の為にも。
あとで何か美味しいものでもおごってあげようとも思いつつ。
「じゃあ第一弾はシルキーライトジャケットだ」
「わかったわ。こうなったら覚悟を決めてやるんだから!」
早速、既に見繕っていた一品を手渡す。
素の見た目も申し分ない、白を基調とした美しい装備だ。
それを受け取ったウィシュカが試着室でゴソゴソし始めた。
「サイズ的にはどうだ?」
「問題無いわ。さすが翔助、見る目があるわね」
二人きりでこんな事をしていると、ちょっと浮ついた気分になる。
きっと女の子とデートするとこんな気持ちになるんだろうな、と。
後ろで着替える音がなんだか背中と心をくすぐってたまらない。
「さ、着替え終わるわよ」
「そんな事まで言わなくても――」
だが直後、俺はその背に予想もしえない<衝撃>を受ける事となる。
くすぐったかった体が急激に潰されかねない程の。
それで遂には壁を突き破り、青空の下へ。
「んぬぅんぐぇッ!!!!」
更には重圧で身動きさえ出来ないまま、空高く押し出された。
叫ぶ事さえ叶わず。
そして途端に衝撃が背から離れ、不意にぐるりと宙を舞う。
そんな中で俺はとてつもない状況を目の当たりにするのだった。
巨大なレッドドラゴンが武具屋を内部から崩壊させていた光景を。
「いくら何でもそれはねぇだろォォォォォ!!??――」
その衝撃的な光景を前に、俺はただこう叫ぶしかなかったんだ。
余波で崩れていく建物達を眺めつつ、街外れへと吹き飛びながら。
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