第6話 太陽の指輪

転移門に乗って、デンスの街に戻った。


街の前では魔王を倒した私達を住民が歓迎してくれたが、騎士団は足早に去っていった。



「システィーナ、クリスごめん。私、騎士団を追いかける」


「私達も行く」

「システィーナだけじゃない。三人一緒だよ」


「私一人でいい。大した用じゃない。私もだけど、二人ともアメリア嫌いでしょ」

「嫌いだよ。一年間の恨みがあるし」

「システィーナ。ならさ、放っておいてよ。私は、賢者として知りたいことがあるだけ」


「ハルナもアメリアが嫌いなんだよね」

「そう言ってる」

「ならさ、なんで」

「え?」

「なんでハルナは泣いてるのさ」


「あ・・」


私が見た現象をかいつまんで話した。


「なら「太陽の指輪」を使ったとたん、アメリアはおばあちゃんに、なったんだね」

「そうなんだよ、クリス」


「アメリア、使う前に指輪の力は制御が難しいって言ってたよね。そんで老婆になったあと、制御に失敗したって」

「アメリアがそう言ったから、それでいいじゃない」

「けどそれじゃハルナ、あんたが泣いた理由が分からない」



「私もアメリアは嫌い。「太陽の指輪」の制御に失敗して、ざまあ見ろと思った。だけど、賢者の頭脳が違和感を訴えてきたの。アメリアの太陽の指輪や魔道具を鑑定した・・」

「・・」

「太陽の指輪。あれはアメリアに取って、凶悪な神器だった」


「凶悪って・・」

「システィーナにセイントクロスを撃たせたエネルギーは絶大だったでしょ」




唐突に声をかけられた。

「それを知ってしまったんですね」


「あなた方は、アメリアのお姉さんのナタリーさんとマナベルさん」


「妹のアメリアは、ウエス伯爵家の療養所で小康状態を保っております」

「質問していいですか?」

「賢者のハルナさんですね。できれば、何も聞かないで下さい」


「やっぱり・・」

「やっぱりってなんだよ。訳が分からないよ」


「妹は、回復した場合、あなた方が得るはずだった金銭等を着服した罪で、アレンとともにウエス家から放逐されることが決まっております」

「アメリアが「着服」したものは、アメリアの部屋の中から「押収」しました。金貨360000枚はすでに、三等分してシスティーナ、クリス、ハルナのギルドカードに分割して振り込んであります」

「「押収」した物品等も3つの収納指輪に入れ、この街の冒険者ギルドに預けてあります。受け取って、3人で分けて下さい」


「あ、あの」

「爵位等に関しては王都で受領式があります。ご希望ならば、ウエス家で後ろ楯となることもできます。四人に支払われる褒賞金もお三方でお分けください」


「いえ、あの・・」

「この1年間、私達の妹が大変ご迷惑をおかけしました」

「アメリアは自滅しました。それでは失礼します」


「待って!」


「システィーナさん・・」


「なんだよ、この茶番劇」

「ちゃ、茶番劇・・」

「そうだよ。演技すんなら、もっとうまくやってよ。なんで「罪人である妹」を弾劾するのに、泣きそうになってるんだよ」


「あ、ええと・・」


「それにアメリアの処分も決まってたし、「押収」されたばっかりの物がすでに分配されてるの」

「ゆ、有能な事務官が・・」

「金銭も減ってないし、無理があるよ」


「ごめん、お姉さん達。あんた方、人を騙すの向いてない。それに2人の魔力量を勝手に鑑定させてもらった」

「できれば、黙っていてください」

「無理だよ。システィーナとクリスも、もう真実の入り口に入ってしまった」


「「太陽の指輪」の怖さって、何なのか教えて」

「あの指輪の役割は、聖女が聖痕で浄化された聖魔力を勇者に送り、勇者に最終奥義を使わせることなんだよ」


「だけど、聖女から吸い上げる魔力量は並大抵ではありません」

「マナベルさん・・」

「そうなのです。ウエス家でも魔力量が桁違いと言われるマナベルと私でも、システィーナさんにセイントクロスを撃たせるには、万全の状態でギリギリです」


「ナタリーさん、マナベルさん、もしセイントクロス発動中に聖女の魔力が枯渇したら、どうなるの」


「そ、そのときは・・」

「そのときは、太陽の指輪が無理矢理に聖女の生命エネルギーを魔力に変換して、勇者にパワーを送るんだ」


「な、なにそれ・・」


「そしてアメリアの魔力量はお姉さんのほぼ半分。自分の魔力だけで、セイントクロスを発動させるのが無理なことを知ってたんだよね。ねえ、お姉さん方」



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