第6話 太陽の指輪
転移門に乗って、デンスの街に戻った。
街の前では魔王を倒した私達を住民が歓迎してくれたが、騎士団は足早に去っていった。
「システィーナ、クリスごめん。私、騎士団を追いかける」
「私達も行く」
「システィーナだけじゃない。三人一緒だよ」
「私一人でいい。大した用じゃない。私もだけど、二人ともアメリア嫌いでしょ」
「嫌いだよ。一年間の恨みがあるし」
「システィーナ。ならさ、放っておいてよ。私は、賢者として知りたいことがあるだけ」
「ハルナもアメリアが嫌いなんだよね」
「そう言ってる」
「ならさ、なんで」
「え?」
「なんでハルナは泣いてるのさ」
「あ・・」
◆
私が見た現象をかいつまんで話した。
「なら「太陽の指輪」を使ったとたん、アメリアはおばあちゃんに、なったんだね」
「そうなんだよ、クリス」
「アメリア、使う前に指輪の力は制御が難しいって言ってたよね。そんで老婆になったあと、制御に失敗したって」
「アメリアがそう言ったから、それでいいじゃない」
「けどそれじゃハルナ、あんたが泣いた理由が分からない」
「私もアメリアは嫌い。「太陽の指輪」の制御に失敗して、ざまあ見ろと思った。だけど、賢者の頭脳が違和感を訴えてきたの。アメリアの太陽の指輪や魔道具を鑑定した・・」
「・・」
「太陽の指輪。あれはアメリアに取って、凶悪な神器だった」
「凶悪って・・」
「システィーナにセイントクロスを撃たせたエネルギーは絶大だったでしょ」
唐突に声をかけられた。
「それを知ってしまったんですね」
「あなた方は、アメリアのお姉さんのナタリーさんとマナベルさん」
「妹のアメリアは、ウエス伯爵家の療養所で小康状態を保っております」
「質問していいですか?」
「賢者のハルナさんですね。できれば、何も聞かないで下さい」
「やっぱり・・」
「やっぱりってなんだよ。訳が分からないよ」
「妹は、回復した場合、あなた方が得るはずだった金銭等を着服した罪で、アレンとともにウエス家から放逐されることが決まっております」
「アメリアが「着服」したものは、アメリアの部屋の中から「押収」しました。金貨360000枚はすでに、三等分してシスティーナ、クリス、ハルナのギルドカードに分割して振り込んであります」
「「押収」した物品等も3つの収納指輪に入れ、この街の冒険者ギルドに預けてあります。受け取って、3人で分けて下さい」
「あ、あの」
「爵位等に関しては王都で受領式があります。ご希望ならば、ウエス家で後ろ楯となることもできます。四人に支払われる褒賞金もお三方でお分けください」
「いえ、あの・・」
「この1年間、私達の妹が大変ご迷惑をおかけしました」
「アメリアは自滅しました。それでは失礼します」
「待って!」
「システィーナさん・・」
「なんだよ、この茶番劇」
「ちゃ、茶番劇・・」
「そうだよ。演技すんなら、もっとうまくやってよ。なんで「罪人である妹」を弾劾するのに、泣きそうになってるんだよ」
「あ、ええと・・」
「それにアメリアの処分も決まってたし、「押収」されたばっかりの物がすでに分配されてるの」
「ゆ、有能な事務官が・・」
「金銭も減ってないし、無理があるよ」
「ごめん、お姉さん達。あんた方、人を騙すの向いてない。それに2人の魔力量を勝手に鑑定させてもらった」
「できれば、黙っていてください」
「無理だよ。システィーナとクリスも、もう真実の入り口に入ってしまった」
「「太陽の指輪」の怖さって、何なのか教えて」
「あの指輪の役割は、聖女が聖痕で浄化された聖魔力を勇者に送り、勇者に最終奥義を使わせることなんだよ」
「だけど、聖女から吸い上げる魔力量は並大抵ではありません」
「マナベルさん・・」
「そうなのです。ウエス家でも魔力量が桁違いと言われるマナベルと私でも、システィーナさんにセイントクロスを撃たせるには、万全の状態でギリギリです」
「ナタリーさん、マナベルさん、もしセイントクロス発動中に聖女の魔力が枯渇したら、どうなるの」
「そ、そのときは・・」
「そのときは、太陽の指輪が無理矢理に聖女の生命エネルギーを魔力に変換して、勇者にパワーを送るんだ」
「な、なにそれ・・」
「そしてアメリアの魔力量はお姉さんのほぼ半分。自分の魔力だけで、セイントクロスを発動させるのが無理なことを知ってたんだよね。ねえ、お姉さん方」
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