性悪聖女アメリアはざまぁさせない

とみっしぇる

第1話 聖女が支配する勇者パーティー


「やっと最悪な旅が終わる」


明日、私達勇者パーティー四人は人類の未来をかけて魔王城に突入する。


200年ぶりに復活した魔王をとうとう追い詰めた。


私は、氷魔法が得意な賢者レナ。つぶやいのは私だ。


一年前、魔王復活と同時に人類側にも四大ジョブが現れた。


魔王領の北側、アグニ王国で、偶然にも同じ18歳の女性四人が、女神の祝福を受けた。


勇者システィーナ、拳聖クリス、賢者ハルナ、そしてあの女、聖女アメリアだ。


女ばかりの魔王討伐隊に不安の声も上がった。


でも神器を扱えるのは、選ばれし四人しかいない。それに、三世代前の魔王討伐隊にも女子パーティーは存在した。


一人の犠牲者は出たけど、乙女たちが心をひとつに、世界を守った史実もある。


そう、心をひとつにすれば…


◆◆

その日の夕方。



「ほらほら夜営よ。騎士隊はテント張って!」

「ねぇアレン、あなたは私と二人きりよ。こっちで一緒にテント張りましょう」


最終決戦の前日まで、聖女アメリアはこんな調子だった。


アメリアの実家、ウエス家の騎士隊は10日前に合流したばかり。

彼らの役目は、魔王の結界を穴を空け、私達を魔王の元に万全で送り届けること。そして魔王戦が終わったあと、私達を連れて帰ることだ。


要するに、騎士隊は敵かもしれない。


分かんない?ちっと私の愚痴を聞いてくれ。


システィーナは孤児院育ち、クリスは冒険者の娘、私ハルナは魔道具屋の次女。三人とも国の最東イース出身で友人だ。


どこから見ても平民。


対して聖女は国の南端、魔国に隣接する場所に領地を持つ防衛の要、ウエス伯爵家の三女。

土地柄、魔獣と戦える精鋭がそろい、アメリアは、その精鋭の中でも上位だ。


建前は四職平等だけど、家柄なんかを盾にやりたい放題だった。


旅のルートは東のイースからダンジョンを攻略しながら王都に行った。

そこからウエス領の領都デンスで援護の騎士隊が合流。

デンスの南に位置する魔王城まで来た。


改めて言うが最低な一年間だった。



◆◆

一年前、祝福の日から10日後、貴重な転移門を使い、聖女アメリアはイースに現れた。


「聖痕」の力を使って各地で人を救い、慈悲深さもあるウエス家の三姉妹は、辺境の私達も知っていた。


「孤児救済や色んな善行の話も何度も聞いた。魔王は怖いけど、そんな人と旅ができるなんて楽しみ」


目を輝せたシスティーナ。


親もおらず、孤児院の弟妹の面倒を見ながら、街の食堂で働く人気者。

苦しいことも多い境遇の中、笑顔を絶やさない。

やせてるけど、かなりかわいい。


そして、同じ孤児院出身のマークと支え合い、愛を育んでいる。



そんな、私が大好きなシスティーナにいきなり糞聖女は言いやがった。


「あら、勇者ちゃんはガリガリ。さすが辺境でも底辺のみなし児ちゃんね」


「よろしく・・お願い・・します」

涙を浮かべ、何とか声を絞り出したシスティーナの顔が今でも忘れられない。


◆◆

旅立って2日目。


早くもシスティーナがアメリアのターゲットになった。


最初に到着したパルムの町で勇者パーティーを一目見ようと人が集まった。

そのとき、酔っぱらいが余計なことを言った。


「聖女さんより勇者ちゃんの方がべっぴんじゃねえか、ガハハハ」

「なんでえ、貴族で聖女とかいうから、わざわざ見にきたのに、この程度かよう!」


便乗して男達が騒ぐ。アメリアの顔がひきつった。


勇者システィーナは暴風にさらされた。


その日の宿から、アメリアの精神攻撃が始まった。

「運良く勇者に選ばれたんだから沢山食べなさい。でないと私の肉壁になれないわよ」

ご馳走だけど言葉にたっぷり、毒が振りかけられていた。


魔法修行がスタートした。

「勇者固有魔法ライディンが使えない? なら雷魔法でパチパチ火花を出しなさい。そしたらせめて、花火みたいに楽しめるから」


希望を捨てきれないシスティーナは、慈善事業についてアメリアに聞いてみた。


アメリアは腹を抱えて笑いやがった。


「孤児救済?あれは二人の姉がやってるの。貧しい地域への支援物資には、送り主のとこを私の名前に書き変えれば、手柄は私のもの。簡単でしょ」


システィーナだけじやない。クリスと私も唖然とした。


持ち物自慢も欠かさない。いずれも高価なマジックアイテムのネックレス、服、ブレスレット。で、極め付きは伯爵家の指輪。


「いいでしょ。左手の薬指に輝いてるのは、魔力制御の月の指輪。高貴なる私のために伯爵家が用意したマジックアイテムよ」


ちなみに私がこの指輪を「鑑定」しようとしたら、バカみたく怒られた。

「平民に鑑定されたら高貴な指輪が汚れる」

私の目からは、瘴気でも出てたのだろうか?


「三人とも婚約者がいるらしいじゃない。田舎者でしょ。いいわ、優しい私が、高貴な紳士を紹介するわ」

それは善意じゃない。



金持ちの癖に、金銭にもがめつかった。ダンジョン攻略で得た金貨100000枚も三人には一人50枚。どう計算したらそうなる・・


いく先々の贈り物なんか、堂々の独り占めだ。


嫌なやつだけど、彼女のお陰で、私達は強くなった。



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