魔法少女戦争

蜜柑の皮

希望論

★ちょっと先のお話★

 炎が辺りを包む中、握った軍刀の剣先から血が滴り落ちる。

 水滴の音は炎に紛れて消え、辺りに響くことはない。

 

 俺の眼に映るのはたった一つの光景。

 真実だとは言い難く、現実だとは思い難く。

 それでも耳に響く音は、それが現実だと否応なく突きつける。

 

 その場を離れようと歩き出そうとして、切り落とした片腕が足にぶつかる。

 呼吸が早まる、息が続かない。

 今すぐにでも手に持った剣で自分の首を切り落としてしまいたい。

 だが運命と言うのは悲惨でいて俺を苦しめる。

 神様とやらはここで終わらせてはくれなかった。

 

「……な、んで」

 

 震えるような声が後ろから聞こえて振り返ると、そこには一人の少女が後退りしていた。

 様々な感情が入り混じった顔で、俺の目を見つめていた。

 俺は一瞬、なんて答えていいかわからず、軍刀を落として歩み寄ろうとした。

 だがそれよりも早く、彼女はポケットから取り出したモノを胸前で掲げる。

 

「……貴方が、犯人だったんだね」

 

 俺は少し視線を落として、少し手に力を込めたのち、静かに頷いた。

 

「そう、だよ……、事件の犯人。全部、私がやった」

「……」

 

 冷たくも可愛らしい声が俺の口から発せられる。

 未だ聞き慣れない声で睨み続ける彼女に向けて言葉を続けた。

 

「それで。どうするの?」

「っ……!」

 

 少女は一瞬、悲しそうな顔を浮かべて、キッと俺を睨みつける。

 それだけで彼女のやることは十分にわかってしまった。

 わかってしまったから、辛くて、苦しくて、そして

 彼女がその選択肢を取ってくれたことが。

 

「わかりきったこと、でしょ」

「……そう。当たり前か」

 

 俺もポケットからを取り出して胸の前で掲げる。

 チクタクチクタクと鳴り響く音とともに、時を刻むソレにはいくつもの傷が付いている。

 積み重ねてきた傷を見るたびに思う、俺は一体、何処で止まれるのだろうかと。

 力強くソレを握ると、ゆっくりと歩き出し、俺と彼女の握るソレから声が響く。

 

『『Arts Set!! Ready?』』

 

 準備など、初めて殺した時からできている。

 もう止まれないし、止まることもない。

 俺たちは大きく口を開いて同時に声を発した。

 

「「GO!!!」」

 

 殺し合いの始まりを告げる光とともに、俺の両手に握られた軍刀と、彼女の拳が交差する。

 これがきっと、最後の殺し合いになることを願って。

 戦いが始まろうとしていた。

 

 

 

 何故、こんなことになったのか。

 どうして、こんなところまで来てしまったのか。

 全て思い返せば、あの日。

 俺が死んでしまった日。

 

 奴との出会いが全ての始まりだった。

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