第5話悪事
料理屋陣屋にて、2人の男が密談していた。
「何もかも、火付盗賊改方の伊藤様のお陰でごさまいまする。我々の火付けに乗じて、蔵から大量の金品を奪いながらも伊藤様が我々を野放しにして頂いているので、嫌になるほど稼がせていただきやした。これはほんのお気持ちでございます」
盗賊の頭は伊藤に木箱を渡す。
「おーおー、わしの好物の饅頭じゃ。山吹色の饅頭じゃ、ぐへっ、ぐへっ、ぐへへへ。笑いが止まらぬわ。あの、大岡忠相も悔しがっておったわ」
この、2人のやり取りを吉宗御庭番、隼人とあざみは天井裏から聞いていた。
一部始終を吉宗に伝えた。
「あの、
「上様、次の狙いは
「分かった。明日の夜だな」
「はっ」
吉宗は南町大岡忠相に
「忠相、用心しろよ!火盗も現れる。伊藤畿内もとらまえよ!」
「伊藤殿をですか?出来るかなぁ」
「忠相。遠慮はいらん。歯向かう者は切れッ」
「ハハッ」
吉宗はめ組のたまり場、うどん屋たぬきに向かった。
「あっ、珍さん。カシラ、珍さんがきたよ!さっ、珍さんも座って!一杯どうだい?貧乏で酒なんて滅多に飲めねえだろ」
吉宗はムッとしたが、我慢した。
「辰五郎……いや、カシラ、明日の事だが」
「やい。珍ッ!うちのカシラに話があるなら、俺にまず話を通してくんな!」
吉宗はため息をついて、店を出た。その後、新門辰五郎が走って追いかけてきた。
「うちの若い衆がすいません。殴って来ました」
吉宗は振り向き、
「明日、三嶋屋に火付けが現れる。忠相にも話したが、火付盗賊改方の伊藤畿内が絡んでおる。辰五郎、お前の若い衆を三嶋屋近辺に隠しとけ。火盗の奴らに遠慮はいらん。とらまえよ!怪我人は小石川療養所に連れてけ。頼んだぞ」
「ははっ」
そう言うと、吉宗はスーパー銭湯宮の湯に向かった。
江戸城内は、吉宗を探し回っているかと思えば、有馬彦左衛門は葉巻を吸いながら、
「また、城下町で遊んでんな?池に突き落としおって。明日、戻ってきたら説教だな」
と、ポツリと言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます