電子辞書
「ねー、先輩。明鏡止水、ってどういう意味ですか?」
「簡単に言えば、邪な心がなくて明るく澄んでる心境のこと」
「じゃあ、曖昧模糊は?」
「物事の本質や実態がぼんやりしてはっきりしないこと」
なるほど……。頷きながらシャーペンを動かす。ほんと、意味調べのプリントなんてなんであるんだろう。教科書も辞典も教室にあって取りに行くのが面倒臭いし、携帯を使うなとプリントにわざわざ記載されてるし。先輩がいて良かった。なんでも知ってる先輩ならこれもわかるはずだと思ったのだ。聞けば予想通り、スラスラと答えてくれる。記憶力半端じゃないくらい物事良いよね。脳の容量どうなってるんです?
……あ、最後の一つになった。これで終わる。でも意味が分からない。玉石混交、って何?はじめて見る四字熟語。そもそも四字熟語ってどこで使うの? ねえ先輩、と言えばこれも知ってたみたいで分かりやすく教えてくれた。ほんとになんでも知ってるな。電子辞書みたいな人だ。もしくはウィキペディア。プリントを終えて、先輩をお礼を述べる。お陰様で早く終わりました!
「お前って俺のこと便利屋だとか情報屋だとかって思ってる節あるよな?」
「えっ、全然そんなことないです!電子辞書みたいな人だと思ってます!」
「電子辞書…………?」
だってほら、一つ聞けばポンと答えが返ってくる上にいろんな知識を持ってるのは、電子辞書と先輩くらいでしょ。検索エンジンは結構答えが散らばってるときもあるので。見習いたいくらいの記憶力と引き出す力を持っている先輩は凄い。流石だ。私も見習わなければ。私も先輩のように友達や後輩からの質問にスラスラと答えて尊敬されたい。尊敬じゃなくてもいい。凄いねって言われたい。でも記憶力も引き出す力もどうやって鍛えるんだろうね?
よくわからない、といった顔をする先輩が戸惑ったように「褒められてるのか便利屋扱いされてるのか分からない」と呟いた。褒めてるんです。褒めてるつもりです。私なりの最上級の褒め言葉ですよ。
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