第124話 桜吹雪と共に

桜の咲く姿は

何故こんなにも

人を惹き付けるのだろう


桜の散り際は

何故こんなにも

人を切なくさせるのだろう



あたしの

誰にも言えない想い

あのひとにすら伝えられない想いを

それでも

この胸に閉じ込めておけたら

背筋を伸ばして

前を向いて

いられると思っていたのに


切なくて

切なくて


溢れんとする想いならば

いっそ

散らしてしまおう

この桜吹雪と共に



淡い花びらの

一枚一枚に

この想いを乗せて

舞い散らそう


差出人の無い手紙を

出すように


想いだけを綴った

あのひとへの

最初で最後の花びらの文ラブレター


届きはしない文だけれど

せめて

美しく散り去ってくれたら





そうして


この桜の樹が

すっかり葉桜になる頃には

あたしも

何もかも忘れたふりが

できますように





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