第110話 春の笑顔

目覚めて

カーテンを開ける時

気持ちも一緒にふわりと揺れる

すっかり春めいた空が嬉しくて


僕の元に

もう春は来ない、来なくていいと

そう思ってから

幾度、季節は巡っただろう

時の流れは

やっぱり春を連れてきて

夏も秋も冬も連れてきてくれた

そうして、

静かな流れで僕を癒してくれて

深かった傷も

少しずつふさがれていったんだ



今、僕は

明るい気持ちで春を待っている



きみはどうだろうか


僕よりも明るい気持ちで

春を待ちわびているかな


僕よりも早くきれいに

あの傷はふさがったかな



もう知ることはできないけれど

春の笑顔でいるきみを

そっと

思い浮かべているよ



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