第72話 指先

伸ばしたこの手の

指先に

そっと触れてくれたひと


わずかなぬくもりの余韻を残して

その手は離れていく



掴まえて欲しかったのに


掴まえて

引き寄せて

その胸の中で包んでもらえたなら


そのぬくもりを

体いっぱいに感じさせてもらえたなら



どんなにか

幸せだったのに




今はもう

指先すらも届かなくて



あの余韻だけが

思い出になっている





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