第26話 湖

今夜は

ひとり、あの湖へ行くのです


静かな湖水に

そっと、この身を浸して


きよめられるように



いつの間にか

あたしの指を染め

髪に絡みついてしまった


“良くないものたち”を


流し落とせるように




遠くに聴こえる

月の歌声に耳を傾けながら


眼を閉じて


湖水の清らかさだけを感じて


あたしという者が浄められるまで

ずっと、この身を浸して




真に純白になど

なれはしないけれど


つまらぬ妬心としんなどに

よこしまな思いなどに

この身が

染め上げられることのないように



今夜は

ひとり、あの湖へ行くのです






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