【機神の錬金術師】〜「無能のあんたが憧れの錬金術師なわけない!」と俺を振った幼馴染の聖女。俺が結婚したかった人だと知り死ぬほど後悔してるがもう遅い。俺の錬金術に惚れ込んだ王女と偽装婚約しちゃったので
34話。幼馴染、自分こそ聖竜機バハムートの主だと主張する
34話。幼馴染、自分こそ聖竜機バハムートの主だと主張する
「我がヴァルム公爵家は聖銀(ミスリル)を採掘できる鉱山を所有し、貯蔵もそれなりにある。父上に掛け合い、それを無償で提供することを約束しよう! 王国を守る兵器の開発のためだと言えば、父上も納得されるハズだ!」
「えっ? よいのか?」
意外な申し出に、俺は目を瞬いた。
「無論だ。【薔薇十字団(ローゼンクロイツ)】なる不逞の輩はこの俺様を騙し、俺様を殺そうとしやがった。その報いを受けさせねばならんかな!」
大貴族らしい傲慢さで、アゼルは宣言した。
「それに、ヘルメスは俺様の命を救ってくれた。その貴様が困っているというなら、大貴族として助けてやるのも、やぶさかでない!」
「……へぇ。偉そうにしているけど、要するに減刑してもらいたいってことだよね?」
シルヴィアがボソッっと呟いた。
アゼルは【薔薇十字団(ローゼンクロイツ)】の武装集団を王宮内に招き入れた罪がある。
「ぐっ! ま、まあ、それも事実だが……ヘルメスには助けられた。恩には恩で報いるのが貴族というものだッ!」
これは渡りに船の提案だった。
「ありがとう、アゼル公子。国王陛下、それではアゼル公子には寛大な処置をお願いします」
厳罰など与えて復讐するよりも、国内の大貴族を味方につける方が、俺にとっても有意義だ。味方は多い方が良い。
「うむ。ヴァルム公爵家の協力が得られるならありがたい。アゼル公子よ、ヘルメスたちの活躍で幸い被害は最小限に抑えられた。反省もしておるならミスリルの無償提供と、被害者への賠償で勘弁してやろう」
「はっ……! 国王陛下。ありがたき幸せに存じます!」
アゼルは深々と腰を折った。
「じゃが、次に問題を起こせば、さすがに獄中生活はまぬがれんぞ?」
「き、肝に命じます!」
王家としても、ヴァルム公爵家のような大貴族を敵に回したくないのだろう。
レナ王女とアゼルの縁談も白紙となった訳だし、落とし所として妥当だと思う。
「【聖竜機バハムート】!? それって、海竜機や風竜機の仲間ですよね!? ヘルメス様! もしかすると、私なら操縦できるんじゃないですか!?」
それまで、俺たちのやり取りを見守っていたティアが割って入ってきた。
「聖女様! あなたまだ懲りていないんですか!?」
「何を根拠にそんな妄想を垂れ流しているのよ!」
ドラニクルの少女たちが、一斉に反発する。
「ぐっ……私は聖女よ! 聖魔法の使い手である私なら、きっと聖竜機の主になれるわ! だって、名前が聖竜機。素材が聖銀(ミスリル)! どう考えても聖女の私が使うのに、ふさわしいでしょ!?」
ティアは自信満々に言い放つ。
いや、別にティア専用の機体として開発した訳じゃないんだけどな……
主候補が見つからない問題については、すでに解決の目処が立っている。
「そして、ヘルメス様と愛の合体をするのよぉおおお!」
「……いや、ティア。さっきも話したけど、資格が無い以上は、ここにはもう立ち入らないで欲しいんだ。そして、ここで知ったことは、すべて他言無用で頼む」
みんなが呆気に取られる中、俺はティアを冷静に諭した。
「えっ、で、でもヘルメス様。聖竜機の操縦者テストくらいはさせていただけますよね……?」
「聖竜機は、まだ開発中だ。部外者には、これ以上の情報提供できない。すまないが、今日はもう帰ってくれないか?」
ヘルメスや【ドラニクル】の情報を必要以上に知ることは、ティアの身を危険に晒す。首を突っ込んで欲しくない。
「……聖女ティアよ。パーティ会場への乱入といい、おぬしの行動は目に余るぞ? 次に何かしでかしたら、ワシはおぬしを問答無用で牢に放り込むつもりだ」
「そうよ。お兄ちゃんへのストーカー行為はやめなさいよ!」
「ティア様、わたくしたちは婚約カップルなのです。察していただけませんか?」
「ぐぅ……!?」
国王陛下、シルヴィア、レナ王女から集中砲火を浴びて、さすがのティアも押し黙った。
「お兄ちゃんと愛の合体をするのは、私なんだからね」
シルヴィアが俺の腕を取って、ティアに見せつけるように告げる。
「むっ! シルヴィアさん、今回は譲りましたが、ヘルメス様と合体するのは婚約者であるわたくしの役目です!」
さらに反対側の俺の腕を、レナ王女が取って叫ぶ。
「お、おい、ちょっと……!」
レナ王女はれいによって柔らかい膨らみをグイグイと腕に押し付けてきて、俺はタジタジになってしまった。
「ぐっ、あんたたち、ヘルメス様が嫌がっているじゃないの!? 離れなさいよぉおおお!」
ティアが悔しそうに怒鳴るが、ふたりの少女はまるで意に介さない。
「兄妹なんだから、スキンシップは当然だもん! ねぇ、お兄ちゃん。今夜は久しぶりに一緒にお風呂に入りたいなぁ」
「はぁっ……!?」
「ヘルメス様、今夜はぜひベッドの上でも合体を……!」
妹からの申し出に絶句していると、レナ王女がムキになったかのように爆弾発言を放った。
「ちょ、ちょっと、何を言っているのよ!?」
「そーだよ! お兄ちゃんは私のモノなのに!? ふたりで背中の洗いっこするんだもん」
ティアとシルヴィアが大激怒した。
「いや、しないって……!」
「うむ! よくぞ申したぞレナよ! これで我が国の将来は安泰じゃ! 早く孫の顔を見せてくれ」
「はいっ、お父様!」
「くっ……悔しいが、俺様もヘルメスが相手なら負けを認めざるをえん。レナ王女を任せるにふさわしい男だぁ!」
国王陛下とアゼルまで、レナ王女を後押しするようなことを言ってきた。
「いやいや! 婚約しただけで結婚をした訳じゃないでしょ! そんなことは絶対にしないっていうか、ふたりとも離れろ!」
俺は絶叫した。
「ぐぅあああああっ! 許せない! 許せないわ! ヘルメス様を襲う魔の手から、絶対に私がヘルメス様を救ってみせるんだから!」
「はぁ? あなたが一番危ないから! お兄ちゃんは私が守るの!」
ティアが怒鳴り声を上げ、シルヴィアがツッコミを入れた。
戦場から帰ってきたら、別の戦場が待っているとは……
とにかく、疲れた。心を癒すために、しばらく錬金術の工房に引きこもって聖竜機の開発に力を注ごう。
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