仏壇カラーのRZ250

栗原慎一

第1話 終わったエンジン



俺、今一生懸命 エンジンの終わった仏壇カラーのRZ250を押して

家に向かっている


猫を助けてトラックに轢かれて、女神様に導かれた

異世界へ転移してあげる、と聞かされ、剣と魔法の世界を予定してたら

昭和の日本にそっくりな世界に転移していた


異世界でいいのは、飲酒に関してはかなり緩いのと

道交法がゆるゆるでノーヘルもスピード違反もごめんなさいで済む位だ

後は10代に若返ったくらいだ


歩道は段差だらけで、車椅子では通れない

そんな道を、かれこれ三時間は押している


予定じゃ魔法で転移して だったのだが魔法のない世界だった

後二時間で家に着く計算だが、ヘタレてきてるので休憩の回数が増えてきた


朝イチ峠の登りでエンジンが焼き付いて、コケる前になんとかクラッチが切れて

減速が出来て運が良かった


そう思わないと、この仏壇カラーのRZ250を押していく気力がなくなる

市街地に入ってきたので、お店も道に増えてきて缶ジュースも飲み放題になってきた


峠の方では自販機も稀で、見つけるととえあえず買って飲んで次を目指すを繰り返し

都合六時間 なんとか家まで帰ってきた


エンジンが終わったとは言ってもどこまで終わってるか

ピストンとシリンダーだけなら

腰下は生きていて欲しい と祈りながら とりあえずご飯を食べて寝る


翌週の日曜日 朝イチからRZ250の冷却水を抜きシリンダーヘッドを外す

キャブも外して、ピストン廻りにCRCをガンガン掛けて

オイルもたらしてプラハン叩きながらシリンダーをなんとか外す

外れてくれてラッキーだ


腰下は?

と廻してみると、生きている

ピストンの角が欠けてシリンダーと一瞬固着しただけみたいだ


俺のクラッチ操作が間に合ったのではなく、そもそも完全固着していなかった

そうは言っても、ピストンに欠け シリンダーには縦傷


仕方がない


シリンダー・ピストン・シリンダーヘッドの三点セットが終わったのが確認された

ダンボール箱に仕舞ってあった、部品に交換を始める


今宵も深けたようで

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