第5話 ラッキーカラーがない

    (お昼休み。教室で一緒に昼食をとる咲とやみこ)


咲「いいなぁ、やみこ。いつもお弁当つくってもらえて」


やみこ「……咲は、今日もコンビニ弁当」


咲「まあね。うちの親、とも働きだから。あっ、すごーい、やみこ。キャラ弁じゃん」


やみこ「…………ダメだ」


咲「えっ、どこがダメなの? 全然いいじゃん。『ぐでたま』でしょ。すごくよくできてるよ」


やみこ「ダメだ……もうダメだ……ううう」


咲「やみこ、ちょっ、だいじょうぶ? なにがダメなの」


やみこ「ラッキーカラーが入ってない」


咲「えっ」


やみこ「今日の私のラッキーカラー『トランスペアレントラグジュアリーバイオレットクリスタルシャイン』だったのに、それっぽい色の食べ物、ひとつもない」


咲「トランス……え?」


やみこ「トランスペアレントラグジュアリーバイオレットクリスタルシャイン」


咲「よく覚えたねやみこ……。でも長すぎるし細かすぎるよ、どんな占い見たの……」


やみこ「トランスペアレントラグジュアリーバイオレットクリスタルシャインが入ってない……トランスペアレントラグジュアリーバイオレットクリスタルシャインが入ってない……うう」


咲「やみこ、もしかして言いたいだけなんじゃ……」


やみこ「トランスペアレントラ――」


咲「(被せて)ま、まあ! ラッキーカラーが入ってなくても、十分りっぱなキャラ弁だからいいじゃん!」


やみこ「よくない。この弁当を食べたとたん、私の今日の運気は急降下するの……。五時間目の授業、体育でバドミントンだからだれかがネットを張ろうとするんだけど、その人が手を滑らせて勢いで飛んできたネットのひもが私の顔にあたって、びっくりした私がのけぞったところにネットの柱があって、そこに私は後頭部をぶつけてしまうの。意識を失った私が目覚めたときには、すべての記憶を失ってしまっていて――」


咲「や、やみこ、考えすぎにもほどがあるよ?」


やみこ「もうダメ。帰る」


咲「あっ、帰っちゃダメだって!」

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