第3話 くつひもが切れた

    (帰ろうとするやみこを引きずり戻す咲)


咲「だからダメだって……学校行こうよ」


やみこ「私、黒猫になっちゃうから……私、黒猫になっちゃうから……」


咲「やみこ、なんでもいいから私に全体重あずけるのやめて……自立歩行して……!」


やみこ「あっ」


咲「えっ?」


やみこ「くつひもが切れた……」


咲「足をひきずるからでしょ……。いいかげん立ってよやみこ」


やみこ「くつひもが……切れた……」


咲「あの、やみこ。まさか『不吉なことが』とか言い出すんじゃないよね」


やみこ「……やっぱりダメだ。私、今日は学校に行っちゃダメなんだ。だってくつひもが切れた!」


    (咲、やみこのくつひもを確かめる)


咲「あっ、大丈夫だよやみこ。くつひもは切れたんじゃなくて、ただほどけただけだから。ほら、よく見てよ」


やみこ「――ひもの端の繊維が0.5ミリくらい切れてる」


咲「え……?」


やみこ「もうダメ。帰る」


咲「やみこー!」

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