第2話 黒い猫に横切られた

    (帰ろうとするやみこを励ます咲)


咲「だめだよ、やみこ。ちゃんと学校いかなきゃ」


やみこ「でも私、死んじゃったし……」


咲「いや、死んでないってば」


やみこ「今日は渡れたからいいけど……渡れなかったら私、死んでたから」


咲「そんなことで死なないよ……。あんまり死ぬ死ぬっていうの、よくないよ。ほら、もうすぐ学校――」


やみこ「あっ」


咲「えっ――あっ、黒猫! かわいい!」


やみこ「……黒猫に横切られた」


咲「ええと、や、やみこ?」


やみこ「ダメだ……いま学校に行ったら、不吉なことが……」


咲「それ迷信だよ、やみこ。大丈夫だから」


やみこ「ううん。そんなことない。きっと学校のクツ箱に呪いがかけられていて、フタをあけた瞬間、私は黒猫になっちゃって、それからの一生を猫として過ごすことになるの。そんな私の姿をみて、代わりに私そっくりに変身した黒猫はほくそ笑みながら、私になりきって人間として生活する……」


咲「想像力ふくらませすぎだよ、やみこ」


やみこ「ダメだ私、もう帰る」


咲「あっ、やみこ!」

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