9・真実に気づく時

 哉太は佳奈に、自分のことを知ってもらいたいと願った。


 自分がどうして、他人に対してぶっきらぼうになってしまうのか解って欲しい。取っつきにくいと言われ怖がられて、中々人と仲良くなり辛いが本当はみんなと仲良くしたいというのが本心であること。


────自分のことばかり。


 彼女は一言もダメだしなんてしなかった。

 そのままで良いと言ってくれたんだ。


 その後、自分の好きな音楽を彼女へ奨めたのは彼女と良さを共有したかったから。洋楽しか聴かない彼女に自分の趣味を押し付けることが間違っていると気づいたのは、今しがただ。


────同じ土俵の上で、自分の好みを見つけるべきではなかったのか?


 今ならわかる。相手に合わせて欲しいと思うのは愛じゃない。

 そして、無理矢理自分に向けようとするのも身勝手なだけだ。

 何度も何度も”恋人と別れさせてやる”と彼女に告げた。

 言葉では飽き足らず、手紙でまでもシツコイくらいに。


 彼女からの返事は、いつだって

”面倒なことになるから、自分でなんとかする”

の一点張り。

 その度、本当は相手に気持ちがあるのではないか? と疑った。

 その返事にはいつだって、

”何かあればすぐに俺を呼べ。俺が何とかしてやるから”

だった。


 彼女は暴力的な解決をするのではないか、と思ったに違いない。彼女は暴力的な解決に対して、低能で野蛮としか感じていない。

 きっと軽蔑したのであろう。段々と彼女からの好意は感じなくなった。


 焦った哉太は、更に必死なったのだ。


”たまにでいいから、二人きりで会いたい。またデートしよう”

と彼女を誘う。

 しかし返事はNO。

 自分のことを好きなハズなのに何故だ、といきり立つ。


────俺は自分に酔っていた上に、思い上がっていたんだ。


 初めのうちは返事も、やんわりという感じだった。

”恋人がいるから、浮気という形になってしまうの。二人きりでは逢えない”

 そんな内容であり、哉太は、

”どうして好きでもない相手に義理立てしなければいけないのか”

と理不尽に思ったものだ。


 だが、冷静な今なら理解できる。

 彼女が貫いたのは相手に対する誠実さではない。

 付き合いの在り方というモノに対し、真っ直ぐな姿勢でいたいと願ったのだ。浮気をするような人間は所詮、本当に好きな人が出来ても上手くはいかない。

 相手に裏切られたとしても、因果応報というものなのだ。恨むのは相手じゃない、付き合い方に対し誠実さを欠いた自分自身。


 理解することのできなかった当時の自分は、これまたしつこく逢いたい旨を伝えた

 。最終的に、

”どうして恋人でもないのに、二人きりで逢わなければ、ならないのですか?”

と言われ、お高くとまっていると勘違いした自分は酷い暴言を吐いてしまう。何ともプライドの高い、バカな勘違い男である。


────自分勝手で、それこそ傲慢で救いようのないバカだ。

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