No.43【短編】メトロチルドレン
鉄生 裕
【第一章】八月三一日、青春最後の日
昔は『青春』という言葉に明確な定義は無かったらしい。
しかし、それは僕が生まれるよりもずっと前のことだ。
人々が生まれながらに不死になったことで、
国は人間の一生を次のような明確な言葉で区分するようにした。
〇歳から五歳までを〝幼児期〟
六歳から一二歳までを〝幼年期〟
一三歳から一七歳までを〝青年期〟
一八歳から六四歳までを〝壮年期〟
僕たちは生まれてから死ぬまでの六五年という長い年月のほとんどを、
勤勉もしくは勤労に捧げなければならない。
それがこの国で生きていくための絶対条件であり、
僕たち一人一人に課せられた義務であった。
そんな窮屈な一生の中で、
自由を謳歌することを許された唯一の時代があった。
僕たちはその時代を『青春』と名付けた。
一七歳になった年の六月一日から八月三一日までの九二日間。
この期間だけは、勤勉や勤労といったあらゆる枷から解放され、
自分自身の意思で自由を楽しむことが許された。
青春とは、生きとし生けるものに平等に与えられた時代であり、
最初で最後の自由な時代であり、
生まれながらにして夢を選定された僕たちの希望の時代であった。
青春最後の日、僕は彼女と出会う。
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