短編小説集

眞田家の者です。

不思議なカフェ

ある町にある小さなカフェ。そこの店主である菜種ナタネ 露華ツユカは、24歳もの若手店主である。露華のお店はナタネカフェと言い、創業60年を超える老舗であり、今は前店主である露華の祖父が亡なったため、露華が数年前に継いだのである……



――――――――――



「はい!どうぞ!」


「ありがとう」


私といつものやり取りを交わす常連客如月さんとは、かれこれ三年程の付き合いになってる。接客のみでも、毎日顔を合わせているってなると、嫌でも慣れるんだろう。とても美人さんで、全く嫌じゃないけど。

今日もこの時間帯はお客が如月さん一人か、如月の連れである黒崎さんの二人だけなのだが、今日は如月さん一人だけなので、いつも通り如月さんの向かいの席に座って色々な事を話し合っている。


「そっか…大変なんですね」


「そんなモノだ。長年やっていれば慣れるモノだしな。そんなことよりも、その年で店主をやっているそっちの方が大変じゃないのか?」


「こっちも慣れですよ!幸い体調も崩さずに、今までやれていますし…寧ろ楽ですね!」


昼過ぎまで、お客さん殆どいないし…


「そうか…」


いつも通り話していたときに、急に扉が開いてベルが鳴った。そして、とても柄の悪い男が入ってきた。


「あ!高梨さん!この時間帯だと珍しいですね?いつものご用意すればいいですか?」


「おう!頼んだ。露華チャン」


この時間帯だと、お店には基本的に人はあまり来ない。来ても数人なので、私一人で全て回している。

それにお客さんがよく来る時間帯でも、多くて二十人ぐらいだし、それがお店的に良いのかはわからないけど、お店は潰れずにいれてるから、良いのかな?


「やっぱここはランチに丁度いいな〜」


「ありがとうございます!」


「露華、コーヒーのおかわりはもらえるか?」


「はーい」


そうしてカップを受け取って調理場に向かって、おかわりを用意していると、急に扉が吹き飛んだ。

恐る恐る覗くと、一人の厳つい筋骨隆々の風貌の人が立っていた。


「おい!おらァここの一体取り仕切ってる、ハカタいうもんや」


「ハ、ハカタさん。こちら、には何用で…?」


「んなもん決まっと「おい、兄チャン?」」


そう言って高梨さんがわざわざ後ろからその人に寄り掛かり、脅すように、というか脅しながらその人にご退去願っており、少し可哀想に見えて来た。


「お、おらァは、天下の極道組織。龍紋会直系、瀧河組、若頭補佐の!」


まだ話してる最中なのにフォークが目にも止まらぬ速度で飛んできた。ちなみに如月さんの方から飛んできた。


「ヒィィイ!」


「おォー、兄チャン。随分と腰抜かしてんじゃねェか…若頭補佐ともあろう御方が…みっとねェなァ!?あァ!?」


「ヒィ…!!お、オメェら覚えとけ!」


それはそれは、とても小物臭凄い逃げ方だった。


「二人共ありがとうございます。お客さんなのに、迷惑な人を追い払って貰っちゃって…」


「良いってことよ!いつも旨いモン胃に入れさせて貰ってんだしよ。お互い様だ!」


「そうだ。毎日美味しい物を作って貰っているんだ。これくらいはさせて貰って大丈夫だ」


「そうですね!」


「ハハッ!自分で言うかいなっての。やっぱこの店が最高だわ。おっと、冷めちまってる」


「もう、アイスコーヒーにしちゃいましょう!メニュー表にないですけど…」


「頼んだ!露華チャン」


やっぱり、働いている時って凄く楽しいな!



――――――――――



日が落ちて暗くなった頃に、昼間と同じように、直したばかりの扉が勢い良く飛んでいった。

流石の私も一日に二度もやられたらたまったもんじゃない、と思い、武器を構えて調理場から出た。


「どちら様で?」


「オメェらやっちまえ!相手は女一人だ!!」


「ウォォォオ!!」


昼間と同じ声が聞こえた瞬間、雄叫びが聞こえた。私は、短刀を構えて襲いかかる男の一人の腕を斬り裂いた。


「ァァア!」


刹那の間すぐに叫び声が上がった。

今は、彼等の士気が下がって、すぐにどっか行って欲しいなと只々思う。


「これ以上来るなら…わかるよね?」


「クッ…!ひ、怯むな!相手は女一人だぞ!!」


「はぁ…なんでかな……?」



その後は彼女の蹂躙で終始終わり、彼女の眼は殺気立ったモノから、普段の優しい眼となっていた。

明日は定休日にしようと思う露華であった。



――――――――――



日が替わって、取り敢えず店の清掃をしているとき、丁度如月さんが店に来た。

彼女は焦ったような顔をして店に入って来ていた。


「あら?如月さん。どうしました?」


「いや…無事なのか?」


「ん…無事ですが?まぁ、扉は壊されてしまいましたけど…」


「そっちでは……まぁ、いいか…」


それから如月さんは、少し頭を抱えていつもの席に座る。


「まぁいいか。それよりも、そこを掃除するのには時間が掛かるだろう」


「まぁ…はい」


「清掃用具はどこにある?」


「すいませんね、本当に。あと清掃用具はあそこの扉をを入ってすぐにあります」


「手伝おう。こういうのは慣れているからな」



そうしてまた、私達は新たな一日を過ごす……

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