第13話
長い一日を終え、朝から疲れきった重たい体を引きずるように僕は1組へと向かった。
1組のホームルームは既に終わっているようで、
「いや、そんな睨まれたってうちの先生話長いんだからしかたないじゃん。そんな怒んないでよ、ごめんって」
僕は一応謝った。
「別に怒ってないから」
そう言って彼女は下駄箱へと歩き出した。それで怒ってないのなら怒ったらどうなるのだろうかと、彼女を怒らせてみたくなったのは秘密だ。
「それで、これからどこへ?」
素朴な疑問を問うとまた睨まれてしまった。
「話をするだけなんだから近くの公園でいいでしょ別に」
蛙を睨む蛇のような彼女を僕は心の中で蛇女と名付けた。
「いや、放課後の公園なんてカップルの溜まり場になんでわざわざ行かないといけないのさ。喫茶店とかにしようよ」
僕の提案を彼女は受け入れなかった。
「嫌よ。あなたと過ごす時間にお金を使いたくないもの」
どんだけ僕は嫌われているのだろうか。
「いいよ君の分は僕が払うから喫茶店にしよう。ゆっくり座って話せるところの方がいいし」
「わかったわ。そうしましょう」
彼女は一応納得してくれたようだった。
しかし、喫茶店に着くとこの日に限って満席で僕らは店内に入ることができずにいた。
「僕の家、近くなんだけどうちでもいい? 分かってると思うけど、別に変な意味ではないから」
単純に僕が疲れていた為、もう家でもいいやとなげやりになった末の選択だったが、あまり良いものではなかったかもしれないと口にしてから後悔した。
「わかってるわよ! 苛つくわね。別に構わないわ」
彼女はなんと僕の提案を受け入れた。
かと思うと横に並び歩く僕の裏ももに蹴りを入れてきやがった。
「痛ッ!? なんで蹴るんだよ!」
当然の抗議も彼女には届かず、ズカズカと歩いていく彼女の背中を見送りしばらくしてから声を掛けた。
「おい、そっちじゃねえよ。うちはこっちだ暴力女」
そう言うと、彼女は目を見開き走り出すと闘牛のように僕に突っ込んできた。
僕は、無言で自宅へと駆け出した。
僕は遠慮などなしに他人と接することなんて久しぶりだった。それが楽しくて、この瞬間だけ僕は疲れていたことも忘れていた。
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