額縁

第1話

　俺澤井は、物書きを生業にしている。

数年前、ある出版社主催コンクールで、大賞は逃したものの、結構話題になり書籍化されだんだ。

　それ以降、何かと原稿依頼はあるので、生活には困るほどではないが、然しいつまでもそんな悠長な事は言ってられない。

忘れられないうちに、第二弾を書きたいのだが、最近この部屋の様子が変んで落ち着かない。

　隣の女性の声だと思うのだが、耳について仕方ない。

決して気のせいでは無いと思う……俺もそこまで神経質ではないから、耳を澄ませて聞いているなんてことしてないし。

だからこそ、今まで住めた訳だ。

　毎晩喧嘩？　とにかく奇声、罵声が酷いのだ。

よく問題が起きるなぁなんで、初めは感心していたが、三週間毎晩続けば、いいかげんにしろと言いたくもなる。

　畜生！　集中出来ない！　仕方なく俺は引っ越しをする計画を立てた。

怒鳴り込んで、逆上でも為れたら目も当てられない。

大家にも言ったが、そのうち、そのうちで先延ばし。

　俺は諦めて、物件探しをネットで始めたある日、面白いものを見つけてしまった。

｢騒音対策に持って来い！　壁に額縁をかけるだけで、もうあなたの部屋は防音対策万全！｣

　嘘みたいな話だ。あるわけ無い！　だが、然し、もし本当なら引っ越し費用諸々要らなくなる。

利用者の声を読む。

買って良かった！隣人トラブル回避　素晴らしい！　Ａさん

高架下の騒音トラブル回避

Bさん他。多々載せてあった。

眉唾ものなのは判るが、そそられる。

価格は？……一万円！安！　

よし！俺は清水の舞台ならぬ、アパートの階段4段辺りから飛び降りた。

　翌日、それは届いた。

頑丈な梱包だ！結構重い。

久し振りにわくわくしている。

お～出てきた額縁はマホガニー色。

色はお任せだったが、結構気に入った。

　見た目は普通の額縁……トリセツには、ボタンを切り替えると外の音をシャットアウトする。とだけ書いてある。

注意！絵は入れないこと。それだけだった

今更だが……やられたかもと思い始めてきた俺。

畜生……一万円ドブに捨てたか？

俺は若干苛立つも、隣室との境の壁に額縁を無造作にかけた。

｢これで済めば御の字だよなぁ｣

そう言いながら、水槽に餌を放り込んだ。

金魚はパクパクと食べている。

この静けさが欲しいだけなんだよ。

　ああ～ああ～寝てしまった。

時計を見ると夜九時を過ぎている。

どんだけ寝てた？　腹が減ったなァ、コンビニでも行くか。

　部屋を出ると、ばったり隣の女性と鉢合わせ、なんと間の悪い。

｢ｱｯ……今晩｣

女性は黙って会釈し部屋に入っていった。

　俺は、結構好みだったなあなんて思いつつ、

｢あの女性が、毎晩毎晩奇声を発しているのか？　見えねなぁ～

まぁ人は見かけによらないって言うからな｣

　コンビニから帰宅すると、心なしかマホガニーが濃くなったような……まあどうでも良いや。

　俺はデスクに向かい、買って来たおにぎりを頬張りながら、仕事を始めた。

時計を見る。午前零時かぁ。

あ～始まった！　うん？　心なしか声が小さい？　いや～でもまだまだ聞こえる。

俺は、気になりながらキーボードを打つ。

　確かに、徐々にであるが女性の声は小さくなっていった。

　三日を過ぎた頃には、微かに聞こえるか、どうかぐらいになっていた。

　おお～良いねぇ！　今夜は何も聞こえない！　とうとうやった！　思考はフル回転しるぞ！　今夜中には書きあがる。

カタカタ……聞こえるのはキーボードの音だけだ。

さてと、一服するかと立ち上がって壁を何気なく見ると……

俺は恐怖で腰を抜かした！

がっ、がく、額縁に隣の女性の顔が！！えっ！　動けない！　誰か誰か！　声も出ない。

失禁していた……それは後から気づいたのだったが。

目を閉じているのが唯一の救いだ。

俺は這うようにリビングへ行き、トリセツを探す。

あっ、あっあった！

えっ？こんな事書いてなかったぞ！　嘘！　嘘！　やめろ！

｢貴方に迷惑をかけた原因は、元から絶つのです。一度額縁の力を受けたものは、音、声を失うのです！　効果は完璧です！　此れを読んでいるあなたは、大成功なさったのです！　おめでとうございます！　なお、額縁のスイッチをオフすれば、元に戻りますが……失った音、声は戻りません。あしからず。｣

ど、ど、どうする……兎に角、兎に角、スイッチ切るだろう！　そして外す！　怖い！けどやらねば。

気持を落ち着けて、戻ろうとしても足が、足が進まない。

いやいや～こんな状況を放っておけるか！　俺は震えながら、スイッチを切り、額縁を外すと壁は傷一つ無く、隣の女性の顔も消えていた。

幾ら押しても……壁に変化は無い。

ほっとしたのも束の間、ドアベルが鳴った！もう駄目だ。死にそうだ。

恐る恐るミラーを覗くと、ギヤァ隣の女性だ！　なんだ！　なんだ！　開ける前に用件を聞いたが、返事がない。

もう一度ミラーを見ると、彼女は一生懸命頭を下げてる。

俺はドアを開けて、

｢はい……何か？｣

彼女はスマホ見せた。

そこには書かれていたものは……

｢私の声を返えせ！！｣

終

最後までお付き合い有難うございました！🙇🙇🙇

すみません！

ホラー気味作品……

初め書いたので怖くなくても

許してくださいませ。

勉強！勉強！あるのみ🙇🙇