今日も君を殺せなかった

ムイシキ

第1話

「ガキが⋯⋯! 調子に乗るな!」


 この仕事を始めてから、この台詞は耳にタコができるほど聞いた。

 まあ、こういう世界のお兄さんたちにとって、16歳の少年は背丈だけ見ても、ただの調子に乗ったガキにしか見えないからしょうがないんだろう。


「く、来んじゃねえ!」


 ガタイの良い黒服のお兄さんに向かって、俺は低姿勢で地面を蹴った。

 発砲される銃弾はジグザグに移動しながら身を翻して全てを回避した。

 相手も訓練されて兵士ではないから、簡単には当てられない。


「ひっ⋯⋯!」


 悲鳴を上げる直前の、息を呑み込んだ瞬間に喉を取り出したナイフで掻っ切った。

 硬いの喉仏を深く切った感触を感じれば、その男は「ヒュッ⋯⋯」という声にならない悲鳴を残して倒れた。


 目的は倒れた男の奥にいる、椅子に座った歳をとった老人。

 倒れた男から拳銃を取り上げて、それを老人に見せるように持って近づいた。


「あんたが桐島康きりしまやすしであってるよな?」


「ひっ⋯⋯ば、化け物⋯⋯!」


「お前と同じ人間だっつの」


 返り血で血塗れになった俺の姿を見て言っているのか、後ろで倒れているたくさんのボディーガードを見てそう言っているのか⋯⋯。


 椅子から転げ落ちて、情けなくも這いつくばって奥の方へと桐島は少しづつ進んだ。

 恐怖からなのか腰が抜けたのか元々腰が弱いからなのか⋯⋯惨めな姿だった。

 歩いてでも追い付くことができたので、俺は霧島の体を仰向けにして額に拳銃を突きつけた。


「お、お前があのセ・ツ・ナ・か!? 最近噂には聞いていたが⋯⋯」


「そうそう。んじゃ、じゃあな爺さん」


 俺の殺し屋としてのコードネームを知られているのは予想外だった。

 そんなに有名になってきているのか俺。


「や、やめろ⋯⋯! そうだ! 依頼主より金を積んでやるから! いくらでも出すぞ!」


「そういうのやったらキリないだろ。依頼はしっかりこなすって決めてんの。うちは早い者勝ちだから」


「そ、そんな⋯⋯ど、どうして⋯⋯」


 皺だらけの顔に涙が伝っていく姿は哀れと表現するには足りない気がした。

 ズボンもずぶ濡れで臭いし、すぐにでも離れたい。


「⋯⋯あんた、もう人生充分幸せだっただろ? こうやって殺しの依頼を出されるくらいには」


 俺はそう言って、眉間に突きつけた拳銃を更に深く突き刺した。

 震えた老人の体は、大きな発砲音が鳴ると、ビクとも動かなくなり勝手に倒れた。




————————————————————————


 自己満作品なのでおもろくないです。

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