地獄の始まり

@TotueiheiXX

地獄の中で叫ぶもの

その日は、いつも通りだった。

朝起きれば新聞を読みコーヒーを飲む者,寝坊する者,朝食を食べる者,会社で朝を向かえた者様々いるだろう。

そして大多数は明日も同じような日がくると信じて明日、告白する者,結婚する者,子供が生まれる予定の者様々いたはずだ…。

その日、大勢が死んだ多くの人達の中には彼らも多くいたはずだ。だから彼らの遺族が,国民が,大統領は声高に叫んだ。

「「敵を…奴らに手を貸すもの達に報復

を!!!」」

その裏に何があったかも世界の終わりが近付いたこともその結末も人々は知らない…

平和を憎む少年兵が生まれたこともそして消えたことも…



広大な砂漠を一機のヘリが進んでいく。

ヘリの中には少年が1人通信機を使って操縦室に連絡をいれる。

「進路を変更した方がいいです。このままだとストームに巻き込まれます。至急別のルートをとることを求めます。」

もちろんそんな指示に従うわけがない。

「なんだって?」

操縦席の1人がもう1人に聞く。

「進路を変えろだとさ。素人の分際で口出しするなんて面倒なお客さんだぜ。」

「気にするなよ。従う理由もないしこのまま…通信が入った…はい…了解進路変更します。」

「どうした?」

「ストームがくるから進路を変更しろと基地からだ。気味が悪いぜあのガキ予知能力者か?」



「基地司令はっきりと言わせてもらいます。今回の決定には反対です!」

基地司令室内で大声を出して基地司令に意見している。

「君の意見には私も同感だよ。だがね?上層部から彼を動向させれば今回の件を確実に処理できると言われている。君は軍人じゃないからわからんかも知れんが軍人は命令を確実に実行しなければならないんだよ…。」

「上層部てのは国防省の役人か?上院議員か?それとも下院議員?それとも…大統領か?」

「私も正確には知らんよ。」

命令と言われてもこれから先どこの誰とも知らない小僧を引き連れて隣国国境近くまで危険な戦闘地帯を抜けて向かうことなんて普通に考えて自殺行為だ。

すると外が騒がしことに気付き司令と共に外に出る。



ヘリを降りた瞬間歓迎されてないのはわかったがまさかケンカを吹っ掛けられるとは思ってなかった。

おそらくボクシング経験者だろう体格差がある状態で蹴り技ではなく姿勢を低くして殴りかかってくる。

悪いがケンカであってボクシングの試合をやるつもりはない。そもそも階級が絶対に会わないのだから真面目に相手する必要もない。

放ってきた右ストレートをよけ顎にカウンターフックを食らわせ終わらせた。

「このガキ!なにしてくれてんだ!!」

彼と同じ小隊のメンバーだろうさっきまで気にせずに眺めていた癖にやられた瞬間被害者面して敵討ちとは面倒だが相手をすべきだろうか?

「お前達なにをしている!持ち場に戻らんか!!」

司令らしき人物と共に男が1人いるがおそらく彼は…

「すいません!こいつ今日ここに来たばかりで許してくれませんか!?」

割って入ってきたのは陸軍の訓練に参加したとき俺に色々と仲良くしてくれたサミュエルがいつの間にか来ていた。

「悪いが伍長。君もさがってくれ。彼は我々と共に来てもらう。」

「了解」

サミュエルには悪いが司令についていくしかない。

「着いて早々に問題を起こすとはな?」

男の方が問いかける。

いや、責めていると言うべきだろう。

「だが大人相手に勝ってみせるんだ。強さは問題ないだろ?」

司令がそう返すが男の方は納得していないようだった。

「わかった。この坊主を連れていくだが1人の兵士としてしか扱わない。もちろん子守りはお断りだ。」

「そんなことはさせませんよ。僕も介護はお断りですから。」

司令が皮肉に対して吹いて「あとはよろしくな」と一言いって戻っていくが男の方は「まだ40代だ。」と冷静に怒っていた。

「名前は聞かなくても問題ないな?お互いプロだろ?」

「ええ問題ありません。」

「とりあえずよろしくなハンター4」

「よろしくお願いします。ハンター1」

コールサインの確認と共に後二人が待機する場所へ向かった。



ハンター1と共に向かった場所に待っていたのはハンター1と同じくらいの年齢と思わしき男性と女性が待っていた。

「紹介する。そこにいる禿げ頭の男がハンター3でこちらの女性はハンター2だ」

「説明が雑な上に悪口じゃないか?」

「もっと言うことあるでしょ?美女とかね?」

それぞれが抗議しているが興味ないのではやくルート確認をしてほしかったので最初の印象は良くないものだった。



「じゃあ作戦を一応確認するぞ。これは遠足じゃない目標はR国がSR国の頃に建設した極秘サイロ…ICBMクラスの核ミサイル発射をする為のな。」

「それは、知ってる。だけど子供を連れて戦場をピクニックするのは死んでもごめんだぞ。」

ハンター3の気持ちは僕もわかるけどこちらは言い分を聞くわけにはいかない…。

「2人共、子供を責めるものじゃないわよ?ところで…あなたが原子力研究の研究者てのは本当かしら?」

「えぇ本当ですよ。原子力規制委員会の職員にも軍の核技術者にも今回の件は極秘ですから僕が来ることになったんです。原子力研究もしている存在しない少年兵を使うしかなくなった。ただでさえテロで多くの国民が死んだのに核戦争一歩手前だと公表するわけにもいかないから。」

僕がここにいる建前はこれだが本当はもう一つ理由があるけど本当のことを伝えたところで信じはしないからこれでいい。

ハンター2は軽くうなずきながら

「そう、わかったわ」と応えた。

ハンター1は嫌々だが同行させなければ自身の任務を完遂することが出来なくなることを理解し

「お守りは絶対にしないし泣いても連れていくからな!」

キレ気味だが自分も同じ状況なら嫌がるのだから気持ちがわかる…だが問題はハンター3だろう。

「核なら全部吹き飛ばせば問題ないだろ?だいたいこいつはA国が俺達を始末する為に送り込んだ殺し屋だろ!ぜっぇたい!連れていくべきじゃないからな!!お前も反対しろよマック!!」

名前を言わないようにしている努力を一瞬で無にする上に過激的な発言をしてるけど…

「こいつは、昔精神系の実験されて以来祖国のことが信じられないんだ…気にするな。」

そんな情緒不安定男を作戦に追加したら不味いんじゃ?そう思うがハンター1が作戦の確認を再開した。

「現在、俺達がいる陸軍基地から陸路でテロリスト達が占拠している複数の街を通るのが最短距離になる。そこで前線の部隊や現地ゲリラと協力して街や拠点の奪還に協力しつつ突破していきテロリストが占拠している極秘サイロを強襲し核の無力化を行う。当然激しい抵抗はあるがやらなきゃ世界が終わる…必ず完遂するぞ。」

彼らには悪いが問題は核だけじゃない。ある重要人物の捕縛も任務だが知らなくていいことだ。



4人だけでの移動となれば機銃付きの軍用車に食糧と水そして武器弾薬を詰め込みそれぞれの武器の装備と調整を行う。

A国採用の制式アサルトライフルは全員共通だがハンター1とハンター3は45口径のハンドガンを装備しているがハンター2と僕は9ミリ拳銃を装備している…できれば共通化させたいけどハンドガンの弾切れは滅多なことがない限りない。

車両には追加でスナイパーライフルを対人と対物をそれぞれ一丁ずつとRPGを一丁積み武器は十分用意できたと思う。

なので、僕はアサルトライフルに日本から持ってきた銃剣を取り付けられるように銃剣とバレルを調整し始めた。

「お前…そんなに長いのライフルに装着できるようにするつもりか?銃剣の役割ならナイフ程度の長さで十分だろうに…?」

ハンター1が、作業を覗きながらケチをつけてくる。

本当は、日本刀を持ってくるつもりだったが重量がかさばる上に室内戦や取り回しにおいて不利になると判断した結果旧日本軍が使用していた銃剣と同型のものをわざわざ用意してもらっている…ここは説明をして納得してもらうとしよう。

「ライフルに銃剣を装備して接近戦をするのならば自分の場合普通の大人よりも短くなります。なら刀身を長くして対応しつつ単体でもマヌチェット代わりに使える…」

「わかった!わかった!!…つけるのはいいがそのアサルトライフルにつけるとバランス悪くなるからアサルトカービンライフルに変えた方がいいと思っただけだよ。何も使うのが悪いとは言ってない。」

話を遮って彼が言ったことを少し考えると確かにバランスが悪くなる。

「…そうですね。変えてきますありがとうございました。」

与えられた装備に合わせて準備するのはいいがここは戦場だ。

経験豊富な者からの意味のあるアドバイスは積極的に取り入れねば死んでしまう。

銃の交換をする俺を見たハンター3がハンター1に対して

「お守りはしなかったんじゃないのか?」

というが

「お守りじゃなくアドバイスだ。ここから先は一人でも失えば俺達の命も危ないからな。」

と言っているのが聞こえた。

そこから先は耳打ちに変えた為聞こえなかったが…おそらく僕の過去を調べられるだけ調べたのだろう…さすがは一流のスパイだな。



ライフルのバレルと銃剣は問題なく装着できるようして出撃するための準備は整い車両に荷物を置き終わるとハンター2に呼ばれた。

「あなたにプレゼントがあるの。受け取って貰えるかしら?」

プレゼントか…なんだろう?僕が考える間に

ハンター2は箱からネックレスを出して見せてきた。

「私の祖国にある伝統のネックレスで厄災を祓うことができるの。着けて見てくれるかしら?」

小さな十字架を中心に作られた金属製のネックレスは高価には見えないが作り込まれた良いネックレスのようだった。

「ありがとうございます。他人からのプレゼントは貰うことが少ないので嬉しいです。」

早速身に付けてみるがどうにもしっくりこない。

見兼ねたハンター2がネックレスを掛け直そうとする。

「あら?先にネックレスをつけていたのね?…あなたも年頃の男の子だもね?でもBASUTAて…あなた以外にやんちゃさんなのかしら?」

BASUTAと書かれたプレートを見てハンター2に言われたがやんちゃかどうかは知らないが端からは子供向きのネックレスという認識であるならば十字架のネックレスはいいカモフラージュになるかもな。

「うん!これ神のご加護があるはずよ。」

そう言ったハンター2はそそくさと車両に乗り込み僕も遅れて車両に乗り込んだ。

すると機銃を担当するハンター3が俺に

「昔、訓練時にサムライボーイて呼ばれてたのは本当か?確か日本刀を持ってきて銃弾を切り落としたとかでそんなあだ名がついたんだってきいたんだが!?」

これの情報源が誰かは察しがつくが問題なのはハンター1が笑いを堪えているのを見て耳打ちしていた内容がこれであることに気づいたが言われた内容は真実である以上認めるしかない。

「…そう…ですよ。」

その一言で僕を覗く3人が笑い声を上げながら車両は発進していった。



移動中の外の景色は遠くで黒煙が上がり銃声も散発的に発生している。

砂と岩しかない風景をみるとこんな辺鄙な所に人が住むなんて不思議なもんだと思ってしまう。

「もうすぐ前線部隊が集合している建物に着くぞ。くれぐれも面倒事は起こさずにしろよ。特にハンター4喧嘩なんかすんなよ。」

「殴られろと?」

「反撃するなと言っているだけだ。」

理不尽に暴力を受け入れろなんて言ってきているのかと思ったけど理性的な解答だった。



集合地点周辺は倒壊した家屋の瓦礫が大量に山のように積まれている中でかろうじて倒壊せずに残っている建物に僕達も入っていく。

「あんた達が諜報局の部隊か!?…ガキもいるのかよ…。」

少年が自分達と同じ装備に身を包んでやってくることは誰も納得なんかできないのは普通だろう。

すると奥から

「ガキだと!?どこのバカだ!そんな奴を連れてきたのは!!」

という声がして隣の3人はウンウンと頷くが僕の方は何処かで聞いた声な気がして何処で会ったか記憶を探るがズカズカと声の主が接近してくる。

周り兵士達が彼を静止しようとする姿を見たとき思い出した。

「ケニー…ケニー伍長ですか?」

「あっ!?お前…サムライボーイか!!久しぶりだなってこのあだ名は禁句だったな。悪いソ…」

「名前は言わないで下さい。一応秘匿しなきゃならないんです。」

まさか、ケニーがいるとは思わなかった。

サミュエルに会うだけじゃなくケニーもいるとは…いや戦争ならここに彼らがいてもおかしくはないんだ。切り替えねば…。

「あぁ悪い知らなかったんだが…それよりサムライボーイの方は問題ないのか。」

建物内で笑うのを堪える人達で溢れるなか言えることはこれだけだ。

「昔から、言われ慣れているしバカにする内容でも時にはそれがしっくり来るときもあるでしょう?」

「確かに。」

この場で納得したのはケニーだけだがこの任務に直接関係無い以上何を言われても笑われるのは甘んじて受け入れよう。

だが気になるのはケニーと共に居た兵士達だ僕とケニーが話している姿をみて最初は心配していたのに今は安心している。

まるでケニーが暴れたりすることを警戒しているような素振りだった。

「あ~悪いんだがここにいる全員で明日テロリストに賛同している連中が根城にしてる集落を制圧するのか?」

ハンター1が笑いを堪えて質問をする。

「いや、もう一分隊合流してくる。合流次第作戦の確認を終えた後制圧戦をすることになる。…もっとも既に敵戦力は瓦解しているようなものだ。」

更に奥から一人やってきた。

「私はバーンズ階級は大尉だ。そちらさんは諜報局のパラミリかな?まぁゆっくりしてくれたいした持て成しは出来ないが。」

正直な話ここを制圧するのは僕達とは関係が薄いが廃墟になったこの地域をテロリストの拠点にされれば別の地域で戦闘が発生した際後方から奇襲や待ち伏せをされるリスクが増えることが理由としてある。

ハンター1が作戦に参加しなくても言いように掛け合うがバーンズ大尉に

「後ろからロケットランチャーをぶちこまれて吹き飛びたいなら構わんがな?潜伏している数が不明な以上手を貸すことが最短だと君の上司も了承している。我慢しろ。」

と逆に諭されてしまった。



予定時刻よりも遅れて分隊が合流してきたが元々作戦開始時刻が明朝4時に開始するためさほど影響はなく作戦の概要の確認が始まった。

「現在この周辺の廃墟はテロリストの仲間が潜伏しているが合流組がくる前にも戦闘が発生したが正規の訓練を受けたこともない雑多な集団だ。だがそんな奴らに爆撃機や攻撃ヘリを持ってくる理由はない。敵がいるポイントは3ヵ所まで絞っている。そこを襲撃し殲滅する。質問はあるか?…無いな?では以上だ。」

要するに敵が少なく潜伏しているエリアも特定できているのだからそのまま殲滅してここに拠点を造らせたくないようだ。

説明が終了すると僕の元に近付いてきた兵士が一人

「よう!元気か?サムライボーイ!」

「サミュエル…まぁそれでいいけど貴方もこの作戦に参加するんですね?」

「兵士に選択する権利はないからな?」

ハンター3に僕の過去を話した元凶だが基地勤務か別の戦闘地域に行き会うのはもっと先だと思っていたのだが丁度いいこれでケニーの話を聞くことができる。

「サミュエル聞きたいことがあるんだけどちょっといいですか?」

サミュエルはケニー共に陸軍の所属で訓練以降も交流はなくとも噂ぐらいは聞いているはずだ。

「え?あぁ…そうかわかったよ。外で話していいか?あんまり人に聞かせたくないんだ。」

察したサミュエルに付いていきケニーについて話を聞くことにした。



明朝4時まだ日が開けていな空を眺めながら僕はハンター1とペアを組み作戦を行う。

本当はケニーと組むつもりだったがバーンズ大尉に止められてしまった。

「ハンター4初めての実戦で色々不安だろうが落ち着けよ。それといくら親交があるからって気に掛けるなよ。ちょっとでも油断すれば死体になるのはお前かも知れないんだからな。」

「…了解!」

他人の心配をしてる場合じゃない。

僕にとっても初めての実戦だ。

落ち着いて敵を処理すればいい。

「いくぞ。敵は素人同然だ案外簡単に」

カルロス少尉が言い終わる前に僕は射撃を始めた。

「何してるんだ!?このガキ!!」

カルロス曹長はキレていたがハンター1とケニーは援護し始めた。

「よくわかったな狙われてるのが。だが先に言わんとそこの小僧みたいにキレるぞ。」

とハンター1は諭してくるがケニーは

「命の恩人だってこと気づいてないから怒るんだ。そんなことより奴らを皆殺しにするぞ!!」そう言いながら重機関銃の攻撃を避け瓦礫に隠れる。

「どうする!このままだとこっちが追い詰められるぞ!!」

カルロスは文句言うが的確な指示は出せそうにない。そこでハンター1に進言する。

「自分が機銃手達を黙らせます。なので援護射撃をお願いします。」

言い終わると了承を得ずに飛び出した。

「おい!待て!あのバカ…あいつを援護するぞ!撃ってこっちに注意を向かせろ!!」

援護があれば接近しやすくなるが確実に命中させるなら100メートル近くまで接近したい。

飛んでくる銃弾を避けながら確実に接近し彼らを射撃して倒れたのを確認した瞬間近くの廃墟からテロリストの仲間が射撃態勢になったことに気づいたが僕自信は、落ち着いていて次の行動をおこす準備をしたが周りの兵士達は銃撃されたこと驚きどころか信じられないものをみた気分だったそうだ。

何せ銃剣でテロリストが放った銃弾を被弾する分だけ切り落としつつ接近して腕を切り落としたのだから常人なら死ぬ状況を覆したのを理解しきれないのが普通だろう…一人を覗いて。

機銃の制圧と捕虜にした兵士達を縛りあげるのが終わると当然のごとく僕がやったことを

多くの兵士が聞いてくる。その中にはカルロス曹長とハンター1もいるがケニーは半笑いで「懐かしいな」と言いながら割って入ってくる。

他の兵士達もここが戦場だと言うのにケニーの話を聞こうとする。

「昔こいつとは同じ訓練に参加していたんだが日本から来ると聞いたもんだからサムライボーイて言って小馬鹿にしたんだが怒ることもなく無視して訓練に参加するもんだからライフルで撃ったら刀で銃弾を切り落としやがった…おかげで刑務所に行かずに済んでるがな。」

まぁその後僕も怒られたが今となっては懐かしい話だ。

「アニメの中だけじゃないのか…」

「そんなのがいるのかよ…」

他の兵士達は唖然としてしまっているがそんなことしている場合ではない。

「話は終わりましたか?カルロス曹長まだ周辺の建物に敵兵が潜んでいるかもしません。今すぐに」

「今すぐ敵を探しだして殺すんだったな!いくぞぉ!!」

ケニーが人の話を遮って他の兵士達を先導してしまい掃討が開始された。

そんなケニーに違和感を感じ取ったのかハンター1が僕に尋ねる。

「お前の知り合いだろあのケニーてのは?昔からあんな風に好戦的なのか?普通じゃねぇぞありゃ。」

「それは…」

言うべきではないだろう。

彼は国の為に来ているはずだ決して復讐や憎しみの為に戦いに来ているわけではないと思いたいだけなのかもしれないが。

「そこの2人!敵がいるなかで呑気に話をしている場合か!さっさと索敵しろ!」

カルロス曹長に言われたことで話すことなく索敵を始めることになった。



隣のハンター1を戦闘を見ると無駄撃ちをせず的確に心臓や頭を撃ち反撃も許さずに殺している。

兵士の手本となるべき人間だと感じてしまうとハンター1が僕の射撃を見て疑問に感じたようだ。

「お前さん何で殺さない?さっきの機銃手もそうだしその銃剣で腕を切り落とした奴も致命傷とはならない部位を狙って攻撃している。だがお前さんの腕ならどいつも頭で終わらせれるはずだろ?」

「自分は人を殺すのが嫌いだからですよ。それに殺さなければ捕虜にして情報を引き出すこともできます。」

「論理的には価値がある。問題はな殺さなきゃならない時に殺せるかどうかだ。」

ハンター1が言いながらRPGを撃とうとしたゲリラ兵を射殺する。

僕自身、理解しているけどなぜか殺しを忌避してしまう…これまでの訓練時には頭部と心臓を狙うことは出来ていた。だけど今さっき敵を前にして無力化することしか考えられなかった。

ケニーのこともあって集中できていなかったのか?…考えるのはやめよう。

落ち着く為に周囲を見渡すそこにあったのはおそらくテロリスト達の死体であり道路に投げ出されていた。

「ケニー!もう充分だろ!!これ以上は投降を呼び掛ければ応じるだからやめろ!!」

「カルロス大尉…俺達はなんのためにここに来てるんです?テロリスト共を,国家の敵を殺すためだ!そうだろ皆!」

ケニーの言葉に頷く者もいれば呆れている者も様々いるがケニーは気にせず掃討を続ける。

ここにある死体も大半はケニーが殺したのかもしれない…もはやケニーには復讐することしか考えていないのだろうと思っただから違和感に気づくのが遅れた。

ケニーが蹴破ったドアの奥に銃を向けたにも関わらず静止してしまっていた。

次の瞬間にはアサルトライフルの射撃音と共にケニーの身体に銃弾が何発も命中する。

「ケニー!!クソガァ!」

ケニーが撃たれたのを確認した兵士達がドアの奥の敵に射撃をする。

「撃つのを止めろ!!」

カルロスが、射撃を制止するが既に敵兵は死んだだろう。

問題はケニーの方だ急いで止血と摘出手術をすれば間に合うはず。

「止めとけもう死んでる。頭に一発食らって息もしていない。それと敵兵も見るんじゃねえ…忠告はしたからな。」

ケニーに近付いた時点で視界に入っている…ライフルを握ったまま事切れている少年が1人死んでいた。

「理性に…殺されたんだな。」

「なんだと?」

「ケニーはあの日お兄さんをテロで殺された…その時からケニーは憎しみに取り憑かれて殺すことだけを目的にしていた。だがあの少年を見て引き金を引けなかった。最後の最後で理性的になって殺されたんだ。」

ハンター1は何も言わずに聞いてくれた理由の一つに少年兵である僕に再開したことで判断が鈍った可能性をあげることなくただ黙って聞いていた。



作戦は、完了し経路の安全を確保することができた以上弾薬の補給を終えすぐさま移動する。

ハンター2とハンター3は苦労することなく殲滅することができたようで僕達がくる前に補給まで終わらせて待っていてくれたが今現在車両の中で交代で寝ている。

「お前も寝ていいんだぞ?」

ハンター1の方こそ運転で疲れているはずなのに僕の心配をする。

「問題ないです。いざって時に動ける人間がいないといけませんから…それよりハンター3を・起こさなくていいんですか?」

「敵が来たら起こせばいい。揺すって起きななきゃビンタしろ。」

「了解です。」

応えた後に「冗談なんだが」と小声で言ってるが緊急事態ならやるべきだろう。

その後、問題なく進むことができたが野宿することになり食事を取ることにした。

「レーション食べるのなんて久しぶりだな。」

「好き好んで食べるようなものじゃないからなぁーあーホットドッグ食べたい。」

「材料があれば私が料理するのに…次からは材料もらって」

「「お断りします。」」

「??」

ハンター2が手料理を作ることを断られたのは彼女の出身がE国であり食事が美味しくないことで有名なのと彼女自身が下手だからである。

とはいえレーションが美味しくないことは事実である…ジャングルで食べた芋虫よりはましだけど。



「泣かないんだな。知り合いが死んでも。」

ハンター1と共に仮眠を取るために車両に入ると第一声でそう言われた。

泣きたいかどうかといわれば泣くべきだろうだが彼は死んでしまったのだ。

それを悲しんで前に進まなければこれから先全てが無に帰ってしまう。

「泣くなら全てが終わってから泣きますよ。それまでは機械のように進むだけです。戦争を終わらせるためにも。」

「…お前さん兵士に向いてないな。これが終わったらちゃんとした学校いけよ。」

「一応大卒ですよ?僕は。」

「なら就職だな。」

ハンター1が不器用ながら心配する姿に理想の父親像を見るが彼が未婚だとはまだその時知らなかった。



A国国防省内部一室にて

「彼らは順調に目的地に近付いているのか?」

黒スーツの初老の男性が尋ねる。

「はい、この調子であれば必ず間に合うかと」

30代ほどの男性が初老の男性に解答する。

「彼が奴を殺さなければ我々に安心はないんだ…必ず辿り着いて作戦を遂行してもらわなければな。」

「もちろんです。大統領も支援するよう念押しされていますから。」

会話をしながら初老の男性はコーヒーを飲みながらサンドイッチを頬張る。

「うまいな。だがもっと肉々しい物が食べたいな。」

「手配します。」

その空間には戦争の気配を微塵も感じさせない日常が存在していた。



日が昇る1時間に出発した車両は土煙を巻き上げながら砂漠を爆走する。

「ロレンス!じゃなかった。ハンター3アクセル踏みすぎだ!!」

隣で制止するハンター1の言葉をきかず爆走する彼は…酒か薬物を接種したとしか考えられない。

「飛ばすぜぇベイベー!!」

もしくはハンドルを握ると性格が変わるタイプだろう。

片輪走行する車内で横転しないことを願いながうことしか僕にはできなかったが車内に設置してある無線機から応答するよう声がする瞬間車体が水平に戻った。

「聞こえるか?ハンター共聞こえてるかどうかは知らんがなちょっと手を貸してくれ!」

…もしかして僕達のことだろうか?

緊急なのか知らないけどよくこの周波数帯だと知っているな?

「無視だな。」

「そうだな。」

「そうね。」

「そうですね。」

満場一致で無視することが決定したけど通信をいれてきた時点で悪い予感しかしない。

「待て待て。俺は諜報局の人間だよ。後これは大統領より緊急の命令なんだよ!」

「今の任務も緊急なんだがな…」

呟きに同意したかったが命令に従うしかない…本当は一刻も早く目的地にいきたいのに。



「ようこそぉ~マックと愉快ななかぶぇっ!?」

愉快そうなおっさんがエルボー食らう瞬間なんて見に越させられたのかと思うと心底時間を無駄にしていると思う。

「いきなりエルボーはやめろよ…痛ってえな」

やはり知り合いみたいだけどさっさと話を進めてほしいんだけど?

「さぁ~てハンター共。あんた等に任務がある。といっても狩りのお仕事じゃぁ~ないんだなぁ~さてそのお仕事とは…誘拐されたガキ共と我が国の研究員の奪還だ!」

「撤収だぁ!?」

ハンター1が話を聞き終わると切り上げようとするが僕が彼を引き留めた。

「何すんだ!ハンター4!!」

「彼のことはともかく子供達を助けるなら協力すべきです!」

その言葉にハンター2と3は眉をひそめた。

自分でも余計なことを使用としている自覚はあるでも彼らはここに住んでいただけで巻き込まれた被害者達で助けるべきだ。

「つまり…正義の味方にでもなりたいのか?お前は…こんな世界でこんな仕事をしている俺だから警告しておく。そいつになろうとすれば心が壊れる。間違いなくな。」

僕は正義の味方になりたいわけじゃない…憧れてはいるけど。

「まっ!落ち着けよな。とにかく大統領命令なんだよさっさと終わらせれば早く移動できるからな?手を貸してくれよ。」

ちなみに現在絶賛撃ち合い殺し合いで敵が占拠している病院を前に攻防が続いている。



結局4人で敵が選挙する病院に突入することになるがその為に注意を反らすために攻撃をしているが待ち伏せされていた為前進できない状態だった。

状況を打開するために用意してもらった銃剣を使い人の肉を骨を簡単に切り落とし敵を無力化するがいささか切れ味が良すぎる為指先を切り落とすか薄く切り傷をいれるようにしないと最悪死なせてしまう。

「切った人間放置するなよ?後カバーに入る俺達のこと予測して行動するなよ。こっちが一瞬驚く!だろうが。」

会話しながらも警戒を怠らない時点で特に心配する必要がない気がするけど?

最後尾を任せていたハンター2が屋上に向けてスナイパーライフルで射撃する。

「二人とも会話するよりも進みましょ?一応屋上と窓側の敵は殺しておいたから。」

先導する彼女の後ろを歩いているハンター3

がハンドシグナルで急げと指示を出す彼を見てこの状況で一番怒っているのは彼女だと感じるには充分なものであった。



病院といっても至るところに死体とテロリストもはや機能しない廃墟といって差し支えない状態だがここを奪還すれば周辺地帯がより安全になることは相手も理解している。

だからこそ彼等は死に物狂いで防衛しようとする。

死角が多いなか互いをカバーし合いながら僕以外のメンバーは順調に射殺していき僕は無力化した人間から話を聞こうとするがだいたい黙りを決め込む為無駄骨となり続けている。

「そいつから何か聞き出せそうか?」

ハンター3が聞いてくるので軽く肩をあげ何も得られなかったと合図する。

「なら代わりに拷問してやろうか?こう見えても得意分野なんだよ。」

うずうずしてる彼の顔を見た瞬間絶対に引き渡してはならないのを直感で理解できとりあえず今は先に進むことが最優先なので首を横に降ってハンター1と2と合流しライフルに銃剣をつけ敵に突進するのだった。



…彼らは約束を守るだろうか?

私を救出することができれば最悪問題はないできれば研究データと研究材料も持ち運びたかったが仕方ない。

「博士さっさと移動するぞ!あんたがどんな研究してるかは知らないがA国に対する人質になるかも知れないねぇからな!」

アサルトライフルで武装した現地人に誘導される…だからこんな土地で研究なんて嫌だったんだ!

部屋をでる前に空き缶が投げ込まれた。

いや、違うこれはフラッシュバン!!

強烈な閃光と音で視界と聴覚を封じられる。

ガッ!ドゴッ!!

何かを撲る音がするが私も巻き添えにたおれてしまった。

視界が戻って来るとそこにいたのは拳銃と大振りのナイフをもっている少年が立っていたが私を見るなり冷徹な目で私に拳銃を向けてきた。

引き金をが引かれると感じた瞬間に40代くらいのおっさんが走って彼を制止する。

その際、少年に「俺達はもういい歳なんだから急に走るんじゃねぇ!」

と言い少年は少年で「まだお若いですよ。」と挑発するような発言をする…たぶんワザとではないだろうが。

するとおばさんが私に

「あなたがグレック博士?あなたを救出するためにワザワザ来たんだけど移動出来るわよね?」

あって数秒だが怒らせてはならない気がするほどの圧を感じる以上逆らわずに指示に従うしかないが少年兵?のことが気になってしまう。

「すみませんがあの少年は?見たところ現地人でも無いようですし少年兵は条約で禁止されているはずですよね?」

「彼のことは機密扱いなのよ。それは米国の研究員でありながらこんな辺鄙なところで大統領命令で研究している貴方なら機密が重要なものだってことは理解しているはずよ。」

これ以上聞くなという訳か…まぁ彼のことを知る為の手段ならいくらでもあるここは大人しく彼女の指示に従うとしよう。

それにしても死体と血だらけの廊下を歩くのは気味が悪くて仕方ない後薄暗いし…。



救出された子供達が兵士達の誘導に従いながらトラックに乗っていくのを僕は遠くから見守っていたが最後に乗車した男の子が僕に気付き手を振ってくれたので振り返したとこでトラックは発進してしまい彼の顔をしっかりとみていなかった結果次に会う時全く気づかなかったことは彼ら自信知らないことである。




既に戦闘が終わったようで仲間の死体を運び身元の確認を急いでいる傍ら敵だった者達の死体は放置されている。

戦争である以上こういう光景は訪れるべくして訪れている。

そこに悲しいだとかかわいそうだとかは科学者としては非論理的であり我々は第三者視点で者を見なければならないのだ。

「だからこそ彼を我が国純然たる戦力に出来れば我が国の軍事力の基盤になれるかもしれない。」

「まぁ難しくはないでしょうな?今回の戦争で彼の貴重なデータもとれるはずです。」

私を迎えにきた諜報局の人間はそれ以上話すこともなく基地まで車を走らせた。



再度移動を開始した車内では前回断ったはずの食材持ち込みがされていることが発覚し野宿する際にどう処分するかが話し合いが展開される。

もっと既に彼女が調理することが決定してしまっている。

ハンター1と3に至っては彼女が見ていない合間にハンドサインで会話を進めている。

まぁ僕も彼女の準備段階でもう駄目だと理解した為適当に理由をつけて交代している。

しかし、彼女は何を作ろうとしていたんだろうか?パイ生地だったり下処理すらしていないイワシだったりであまり知りたくない…

しかもイワシは完全に腐っていた為パイ生地と共に埋めることになり残った野菜で料理を作っる羽目になった。

ハンドシグナルを止めて2名が料理を見学しに来た。

「どんな料理を作るんだ?やっぱりみそスープか?それとも寿司か?」

味噌汁は味噌を準備していればやれなくはないけど寿司は…埋めたイワシには申し訳無いが生で食べれば命を持っていかれる。

「野菜オンリーのコンソメスープかよ?肉かベーコンはないのかよ?」

「肉ならいれてますよ?丁度蛇がいたから捕まえて調理してから鍋にいれています…どうしました?」

また、2人でハンドシグナルを開始しすると同類と認識してきたのかハンター2が接近してきてくるのは正直…不名誉です。

「お待たせしました。蛇の唐揚げとコンソメスープです。」

完成した料理に懐疑的に口に運ぶ彼らが何も言わずに完食するのを横で見ながら食べ終わった。



SR国が建設したサイロは山岳部に秘匿されて建設されておりお得意の人海戦術で建造している為車両による移動は厳しく馬による移動が合理的であると判断して馬を4頭借りることにしていたが1頭は弾薬や銃を担いでもらい僕はハンター1と同じ馬に跨がることになった。

「車両じゃないとなると腰に負担がかかるな?」

ハンター3が不満を口にする。

「1人1頭で考えてたけどハンター4には身長的に難しかったはね?」

ハンター2が僕に対して謝罪をするが10年もすれば軽ると乗馬することはできるだろう。

遠くからムリーと鳴く鳥の声が聞こえたような気がする…おそらく幻聴だろう。

「おら、お喋りしてないで移動するぞ。身長が低い子供であるお前が悪いんだ。さっさと乗れ!」

将来、禿げると彼に今伝えたら怒られるだろうから彼には伝えないようにそっと胸の中に仕舞いこんで移動を始めた。



「秘匿されてる割にはかなり近い所に街があるんですね?」

目的のサイロに直接乗り込むわけではなく訳ではなく近くに存在する街で襲撃に向けて作戦を確認する予定である。

「まぁ、元々街がなかったんだがSR国の連中が撤退する時に重機やコンクリとか建造に適した材料を置いていってるから街ができただけだからな。」

この土地の人達からすれば知らぬ間に軍事施設を建設してそのための機材を放置しているのを利用して街を作っただけだ最悪核をここで爆発させれば二次被害もあり得るということだ。

遠くから誰かが手を振ってきているように見える。

「おーい!!止まってくれぇ!!」

服装がかなり乱れている老人が呼び止めてきた。

「どうした?なにか問題でもあったか?」

ハンター1が老人を心配する素振りを見せる。

完全に無視するのは失礼な上非道な人間と見られるのを恐れたかはわからないが話を聞くことになった。

「あんた達は異国の兵隊さん達なんだろ?戦争になってからあちこちで孤児が生まれてることは知っているだろ?私は彼等を親代わりになって育てているんだがあんた達の軍が強く失った兵を補充するためにと彼等を兵士にしようとする連中が大勢で押し掛けとるんじゃ…助けてくれ!!」

老人からすれば我々は侵略者の一団という認識であるはずそれなのに助けを求めて来るのはそれだけ危険な状況に彼等はさらされている訳か。

「……助けてはやりたいだが俺達にあんた達を助ける義理はないんだ悪いが他を当たってくれ。」

ハンター1の言うことは正しい。

けれど僕は既に彼と共に助けに行くことを選択して行動していた。

「ハンター4勝手な行動はするな!お前には任務があるんだぞ!…それにそいつらだけ助けても何も変わらないかえられねぇんだよ!!」

「僕はここ数年の記憶しかありません。その数年間は勉学と戦闘訓練ばかりでした。でも後悔も不幸だと思ったこともありません。お爺様が僕を強くさせたいのには特別な理由があったとしても僕自身強くなりたかった…なぜかは解らないけど。助けたい理由も本当は解らない。ただ助けたいんです。」

そう言い終わると老人が引き連れていた馬に乗せて貰い急いで子供達のいる場所へと向かった。



「いいの?行かせて…違うはね。一緒について行かなくていいのマック?」

あの坊主が離れてからキャサリンが俺に尋ねてくる。

「あいつが勝手に単独行動しただけだ。そのうち合流出来るだろう。」

「あの子、集合地点を理解しているかしら?それに彼が今回の作戦の要のはずでしょ?放置していてなにかあったら作戦は瓦解するわよ?」

ロレンスが弁解をしようとしてくれたがキャサリンの言うことの方が正しくもある。

「若いうちは命令よりも自分が信じる道を進むぐらいじゃないと特に男性はね?貴方だって本当はあの子の手助けをしたいでしょ。」

「俺は別に…死んだら困るのは俺達…なら助けに行っても問題は…たぶんないだろう。」

ロレンスの奴は呆れた顔をしていたがなんとなくこうなる気がしていたのだろう。

手を振って行くように促してくるようにしてきた。

「2人で街まで行けるな。合流するのは夜中になるが大丈夫か?」

「問題ないわ。」

キャサリンの返事を聞いてハンター4が向かった方に馬を走らせる。



200人の兵士達で50人の子供の拉致をしようとする奴らには戦力を補充したいのだろうか?

子供達の中には15歳を越える者も数人いるが彼等が武器も持ったことが無い素人であるが戦うつもりであるため説得するのに時間をかけてしまった。

この体では少年兵であることなど簡単にバレてしまい年齢を偽る為に元々用意していた身分証を見せてようやく老人から状況を聞くことが出来る。

「この寺院は崖をくり貫いて作られているから後方からの攻撃は無いが同時に逃げ場がない。既に連中は近づいてきておる…正直もう駄目だと思っておったが…2人しか来ていないなら現状絶望的じゃな。」

「この爺さんから処分するべきか坊主?」

激しく同意したい気持ちを抑えながら彼を諭す。

「実際、2人しかいないのに200人を相手にしないといけないんです。普通に考えても打開するのは不可能ですよ。」

一応、切り札はあるだがそれを使うと後始末をしなければならず最悪死人を出してしまう。

「地雷くらいは設置しておきたいけどよ…そもそも持ってない。」

「作戦らしい作戦じゃないけど僕1人で彼等を相手します。ハンター1は後方から狙撃してください。ただし敵のリーダーは狙わずに。」

「何か考えがあるのは分かるが余裕がなきゃ撃ち殺すからな。」

「了解です。」

準備らしい準備をせずに敵兵集団を迎え撃つことになってしまった。



「装備は銃剣とハンドガンでいいのか?アサルトライフルくらいは持ってもいいだろうに。」

「ライフルは敵が持ってるから問題ないですよ。出来れば混戦にすればなお制圧しやすいですけど。」

敵の接近を目視で確認をした後に装備を見た1が心配そうに聞いてくるが僕の説明を聞いて納得したのか「位置に着いてくる。」と言いポイントへ向かっていく。



200人が数台のトラックに乗って向かってくる姿を見ると少し壮観に感じる。

彼等を統率している指揮官は来ている可能性は低いがそれならそれで恐怖を与えれば逃げるかもしれない。

トラックから降りた1人が拡声器を使用して投降してくるように呼び掛ける。

だが誰も応答なんてするわけもないと分かっての行動でありあくまでも建前としての行動だろう。

15人ほどの兵士たちが寺院の入り口へと近づいてくるのを確認すると最初のターゲットであるドアを開ける為に近づいた兵士の両目を切り裂いた。次にその兵士が持っていたライフルを奪い取り残りの兵士達の腕や足を重点的に弾倉が空になるまで撃ち続けた。

「ガキが反撃して来たぞ!ぶち殺せ!!」

指揮官ではなさそうな男が大声で叫ぶのを合図に兵士達が撃ち始めた。

拉致が目的であるはずだろうに統制の取れてない連中だことである。

「崖の方からも撃たれてるぞ!撃ちかえ」

言い終わる前に頭を撃ち抜かれ死んでいく兵士を見てパニックになる者もいれば撃たれたと思われる場所に撃ちかえす者と様々だ。

そんな彼等に対して沸き上がる感情は怒りでも嘲笑でもなく無情なほどにいい経験になるということだけであり生きた人間を斬らなければ得ることができない感覚は次第に僕の剣技をより高精度にしていく。

敵集団に突っ込んで目に付く敵の腕を足を切り落とし拳銃で顎に数発食らわせるなどして無力化する過程で次第に腕や足の健を切りつけるだけで充分攻撃能力を奪えることを改めて実感する。

「返り血が多いと気持ち悪いな。」

呟きながら銃剣の血糊を落とす姿を見た敵兵達の士気は目に見えて下がっている。

痛みに悶え転がっている兵士達その中心にいるのが血だらけの少年兵という状況はさながら悪夢そのものだろう。

「悪夢だ。……戦場の悪夢だ。」

「こんなのありえない…ガキを拉致するだけじゃなかったのがぁ!?」

相変わらずハンター1が容赦なく射殺しているがこれで彼らも戦闘を継続するのは不可能だろう。

我先に逃げる彼らをトラックの後方の四輪車に控えていた指揮官らしき男が彼らに向けて機関銃を撃ち射殺した。

「誰が撤退していいと言った!!お前達が不甲斐ないから戦力補充に来ているのだ!!神の敵を殺す為にガキ共を連れてこい!!!」

殺すべき敵を前にしてすぐさま攻撃を開始する。



「色々と想定外だが困ったなあの指揮官は兵士を捨て駒としかみちゃいねぇ。まぁ頭ぶち抜きゃ終わるがそろそろ移動しないとRPGぶちこまれるからな…それまで持たせろよ坊主。」

崖上に陣取ったハンター1が双眼鏡で四輪車から顔を出した男が指揮官かどうか確認をしていたが後先考えない行動を見て思わず独り言を呟きながら移動を開始した。



もはや兵士達に正常に物を考えることはできていない。例え射線上に味方がいても射撃を初めてしまう者達ばかりで臆病な人達は既に隠れてしまっている。

出来れば今すぐ全員臆病者になって欲しいけどっね!

既に敵兵で無傷なのは20人くらいか?さっさとあの指揮官を無力化して撤退の指示をださせればすべて終わる。

マッチョな敵兵がマヌチェットを出して

「お前なんか怖くねぇぶっ殺してやるぅ!」

よくわからんが取り敢えず顔面に膝蹴りをかまして気絶させた彼を踏み台に指揮官と思われる男に斬りかかる。

男はすぐさま機関銃で迎撃しようとするが

空中で銃弾を斬りさきながら彼に突撃する。

「撤退しろ!これ以上やってもお前達に勝ち目はない!!」

「勝ち目がないだと!!神の敵は殲滅するのみだ!!お前達が神に裁かれるのを神の隣で待っててやる小僧!!!」

いつの間にか手榴弾のピンを抜いている。この狂信者がぁ!

彼を蹴りながら車両から飛び降りると同時に爆発が起こり吹き飛ばされた。



爆発に坊主が巻き込まれたようだが生死の確認がここからだとわからん。だが指揮官が殺されたことでもはや兵士達も当初の目的達成よりも逃げることを優先するだろう。

後はあいつに近づく奴を片っ端から殺せば任務に戻れる。

「兵隊さん!子供達を…子供達を止めてくれ!!」

「爺さん!?子供達だと?…まさか!」



あれから何秒過ぎた?いや何分か?爆発の影響なのか頭がはっきりとしない。

射撃音がする…

「こ……ひと」「にげ…は…」

兵士達が慌てている指揮官が死んだからには見えない。

一体何が起きているんだ。

動けない体を誰かが動してくれたが見知った顔であった。

「大丈夫か?君の戦いを見て俺達も戦う決心がついたよ。ありがとう。」

「何を…言っているんだ?早く隠れ…ろぉ…」

銃声と子供達の罵声が聞こえ彼らを止められない自分の情けなさを感じながら意識はそこで途切れてしまった。



心地よい揺れを感じとり目を覚ますと夕暮れの荒れ地を進んでいた。

いつの間にか馬に乗せられて街までハンター1が向かっていたようだ。

「よう。目が覚めたか?一応怪我してないか確認したが無傷とは…運がいいよな。」

「……」

「子供達のことはお前の責任じゃない。それと爺さんはお前さんにもらった名刺を持ってA国の基地か大使館に残った子供達と向かうそうだが本当に費用負担するつもりか?」

「お金はありますからこう見えて自分かなりのお金持ちですよ。」

「お金持ちで何か隠し事がある少年兵か笑えてねぇな。」

やはり少年兵が核関連の技術者てだけじゃ納得しないよな。……そろそろ本当のことを打ち明けるべきだろうか?出来れば知らせずに終わらせたいがあの爆発で無傷なのを確認されたら半ばバレたようなものだけど。

「合流したら名前教えろよ?俺らもお前に教えるからよ。ハンターてのは呼びにくいし命令無視もしてるんだから名前を呼ぶ方が結束するだろ?」

明らかに今さらなことを提案している気がするけど不思議と嫌に思わない。

はっきりと今なら言える彼ら信用できる大人達だと…いや一名違うか?

街まで後どれくらいか僕にはわからないが日が沈んでいるはずにも関わらず向かっている方角はかなり明るくなっている。

ハンター1はその明るさに何か違和感を感じたのか無線機で2人に連絡を取ろうとしている。

「クソ!連絡が取れない!悪いが急ぐぞしっかり掴まってろよ!」

「了解。」

近づけば近づくほどにその明るさの正体が何かを理解し始めたが僕自身はそれを否定したかった。



20分前…

街から少し離れた場所にキャサリンとロレンスは待機していた。

「街に入って何か食わないか?正直なところ腹が空いて限界ギリギリだぁ~。」

ロレンスが嘆くように言うのに対してキャサリンは冷静に

「レーションかチョコでも食べて待ちなさい。合流するまでは街に入るつもりは無いわよ長居して逆に襲撃されるのは嫌だもの。」

と返すので諦めてチョコを食べることにしたようだ。

最初に異変に気づいたのはロレンスの方だった。

「なぁ…この地域まで味方の航空戦力がくるなんて聞いたか?」

「いいえ?なんでそんなこと聞くの?まさか敵の航空戦力がくるとでも言うの?彼らにそれだけの戦力は」

シュドォーン!!

彼女の会話を遮って街に爆発が起こりそれを合図にするが如く何発も爆発が起こる。

「敵襲か!?俺らが街に向かってるのを知って無差別攻撃でも始めやがったか!」

「なら私達の居場所を把握してピンポイントで攻撃した方が確実でしょ!?それよりも双眼鏡は!」

ロレンスが慌てて双眼鏡を手渡しキャサリンが街に対する攻撃の原因を探しだそうとする。

「嘘ッ!?あれは…A国の無人攻撃機!!」

「あいつら俺達を抹殺する気だな!返り討ちにしてやる!」

ロレンスが暴走してライフルを攻撃機に撃ちまくるがキャサリンは冷静に基地に連絡を取ろうとしていたが繋がらない。

「動いてる目標には流石に当てられ無いわね私の腕じゃあの子がいればそう難しいないでしょうけど…もどかしいわね。」

彼女には、ただ街への攻撃を見守ることしかできなかった。



現在

街は燃え上がり航空機のような何かが爆撃を続けている。

「ようやく通信が繋がった!キャサリン,ロレンスお前達どこにいる!」

地図を広げて合流する為に位置を聞き出そうとしている。

「今は、2人とも一緒にいるわ!信号弾を打ち上げるからそこを目印にして来て!」

打ち上がった信号弾を目印に移動をするが再度爆炎が上がる。



「おい、何が起こっている!ありゃたぶん俺達の国の無人機だろ!」

「ええ、そうよ!でも今はアレを落とすのが最優先よ!ハンター4貴方の腕なら撃ち落とせるわね!」

ハンター2の言葉を聞いてもそれに反応するよりも頭のなかは疑問と後悔で思考が働いていない。

アレがA国の無人兵器ならなぜ民間人が多くいる街を攻撃する必要はない。

なら、あれはテロリストが乗っ取っているのか?敵国じゃな自国の街を焼き払うとは思えない。

そもそも僕が別行動を取らなければ子供達も

街の人達もこんなことにはならなかったかもしれない。

「ハンター1!いえ、小林ソウタ!!今は後悔す暇はないの貴方ならアレを撃ち落とせる以上すべきことをするの!」

ハンター2が怒鳴りながらスナイパーライフルを手渡され思考を止めやるべきことに集中し3機を撃ち落としたが様々な感情と燃え盛る街の前では何もかもが遅すぎる気がした。



街からの火は予想より早く消えた後生存者を勝手に始める。

最初の攻撃により異変を察知した人達は避難をしていたがそれでも半数近くの市民が巻き込まれてしまっていた。

街の中は灰や炭化しているものも爆撃による破損そして遺体…。

この戦争には、なんの価値もない。

憎しみから新たな憎しみが産まれ巻き込まれるのは戦いとは関係無い者達だ。

「………ゥ……」

か細いが確かに人間の声がする。

どこだ!?

微かな呼吸音を頼りに探し燃え尽きた廃屋の中に大火傷をした子供がそこにいた。

もう助からないのが見てわかるほどの火傷であり僕にはただその子を看取ることしかできない。

「…ア…ッ……」

言葉を絞り出すこともできずに死んだその子の抱き上げてた時もう限界だった。

両膝を地面に着きながら獣のような叫び声と涙を流してしまった。

そんなことをしても彼らにはなんの謝罪にもならないと分かっていても涙を流すのを止められなかった。



埋葬を終えマック達と合流する。

「もう、満足したのか?悪いが急ぐぞ。」

「問題なしです。でも移動しながらでいいので彼女に聞きたいことがあります。」

おそらく彼女は2人と違い全てを把握しているはずだ。

「ええ、いいわよ。小さな魔法使いさん?」

「あ~俺にもわかるように説明してもらえるんだよな?」

元々違和感を持っていたマックと違いロレンスだけが完全に蚊帳の外である。

「ちゃんと説明しますよロレンスさん。僕がなぜここに来たのか誰がこの戦争始まった理由を。」



最初のテロの時点では人種的もしくは宗教的な思想犯だと考えられていた。

しかし、実際には彼らを洗脳に近い催眠状態にしてテロを起こさせ開戦へと誘導していた。

彼らを洗脳を行った黒幕は魔導士であるミルド・デークこそが戦争を起こした張本人である。

「魔導士てのがなんで戦争を起こして核武装して何の得があるんだ?」

「正確にはわかりません。でもこの星以外には魔導士達が多くいる星による連邦が存在していますが…正直魔力が無い人間達を見下しているて聞いたことはありますが。」

「ファンタジー要素を感じない話だな。」

ファンタジーにもっとも遠い仕事をしているのにがっかりしているのか。

そもそも魔法といっても科学の発展で産まれたもので妖精もドラゴンも実在なんかしない昔はいたとかいないとか真実は知らない。

「つまり野郎が元々属していた組織か星の連中からすれば野蛮な俺達の星が滅んでもかまわないということか…。」

「詳細はわかりません。お爺様も彼と同じ組織に属していたとは聞いていますがその様な話しは一度も聞いたことはありません。」

彼の目的はわからずとも何かしらの正義があるのだろうだがそんな事のために多くの人間が死ぬ必要があったようには思えない。

償いをさせ必ず戦争を終わらせる。

それが死んでいった人達への弔いになると信じてサイロの非常口前へと立った。

「あっ!ちょっとまって忘れてたことがあるの。」

サイロへと突入するというタイミングでキャサリンが思い出したかのように言い出す。

「貴方にプレゼントしたネックレスあるでしょ?アレ爆弾なのよ今外すわね?」

さらっと言いきっているが明らかに爆弾発言であり彼女以外は身動き1つとれずネックレスを投げ捨てた直後に小規模の爆発起こった爆発を見て彼女の豪胆さ…いや女の恐ろしさに震えた。

「今度から初めて合う人間からの贈り物は必ずx線検査か危険物処理ができる場所で分解しろよ…俺はそうしてる。」

「…了解です。」

今後、貰い物は徹底的に調べることを固く誓ったが更なる面倒事を引き起こすのはまた別の話である。


サイロへの入り口は現在敵により完全に閉ざされ入ることもできないが非常口であれば警備されていても侵入することはできる。

だが、侵入する時点で既に苦戦している。

「非常口まで来たはいいがどうやって入る爆弾でも使ってこじ開けるか?」

「それだと気づかれるわよ?ハッキングじゃだめなの?」

「これ建造してる時期にはそんなの無い。それよりソウタなら壊せるんじゃないか?魔法の力とやらで。」

「了解。『バスター』を使います。」

そう言い終わるとソウタは少し離れ首元のネックレスが光り始め体全体を包み込み次に彼が現れた時には服装が迷彩服からどこか騎士を連想させる真っ白な格好と子供が持つようなサイズではない白銀の片刃の大剣を背負っていた。

「馬子にも衣装だな。」

「ちょっと待て。なんで着替える上にそんな武器を出すんだ?まさかその武器でこじ開ける気か!?」

「そのとおり…デス!!」

大剣で鉄の扉殴り飛ばし飛んでいった扉を盾がわりに待ち伏せ部隊へと接近して数人を一気に斬り伏せる。

だが血が出ていない。

扉も切れるのではなく衝撃を受けて吹き飛んでいることからおそらく刃を落としているんだろう。

「マック!突入するわよ!カバー!!」

待ち伏せに失敗した奴らは最初こそ混乱していたが俺達が侵入する頃には組織的な反撃をしてきた。

取り敢えず今はここにいる連中を始末しとかないと増援部隊が来たら深部へと進めない。

「ソウタ!こいつらまとめて吹き飛ばせないか!」

「そんな腕力ありませんよ!拘束くらいならできますけど短時間しかもちません!」

「それでいいからやれ!」

合図を切っ掛けに20人ほどの人間に薄青いチェーンが巻き付き敵の動きを停止させる。

ロレンスが攻撃しようとするが今は先に進むのが優先した方がいい。

通路に行った時点でマックが指示をだす。

「タクヤ!扉上の天井を落として奴らを閉じ込めろ!!」

「バスター!砲撃形態、ファイヤー!!」

天井の崩落により彼らによる挟撃の可能性は無くせた。

「後は、デークて男と核の無力化をすれば終わりだ。中心部にある制御室に向かうぞ!」マックが先導して廊下を走って大広間へと向かうと既に銃を向けられた状態で待たれておりマック達は反撃できずにいた。

「全員、武器を降ろせそうすれば今すぐは命を取らない。それと少年兵『バインド』はおすすめしない3人とも死ぬぞ?」

ソウタがもう一度『バインド』を行おうとするが兵士達の奥からの声で断念する。

「話をしないか少年兵?2人だけでじっくりと話をしたい。もちろんその間彼らの安全と核を発射しないことは保証しよう」

現れた老人が提案してくる。

おそらく彼がデーク本人だろう。

「…わかりました。

ソウタに断る権利はないがこのままだと死んでしまう為かロレンスが絶望した顔をしてキャサリンは何かを待っているのか時計を気づかれ無いように見てマックは連れていかれる場所次第なら勝機があるかもと暗記した地図を必死に思い出していた。



地下にはかなりの広さの空間がそこにはあった。

すると、デークは突然話を始めた。

「少年兵…君がここに来た目的は知っている。私を殺すことと核発射を止めて戦争を回避する為だろう?」

「殺すのではなく逮捕と戦争をとめることです。貴方に聞きたいことがあります!なぜ戦争を起こしたんですか!なんで核を発射しようとする!」

核がある以上核を撃てば核戦争になる可能性がある。つまり、戦争を起こす必要は無い。

だが、戦争を始め核も発射する準備はしていても使う素振りを見せない。

「少年兵…答えは単純だよ。私は戦争が好きなんだ。人類という種が存在する限り決して消えることの無い人類が古来からして来た戦争という営みを!だから私の手で戦争を起こしたかった。欺瞞に満ちたこの星に戦争という名の正しさを与えただけだ!」

何を言っているんだこの男は?

戦争が正しい訳がないのに…間違いだらけで犠牲者を産み続けることが正しい訳があってたまるか!怒りを抑える僕を無視して彼は演説を続ける。

「核を撃たないのは少年兵である君を待っていたからだ。戦場という狂気の中で人の命を奪おうとしない君が私を殺さなければならないようにするためだ!私の命と核の停止コードはリンクしているつまり私が死ねば核は撃たれない!!」

警報と共に核の発射カウントが開始された。

「さぁ存分に殺しあいをしよう。残り10分を最高のものにしようか!少年兵!!」

デークの攻撃を切り裂きながらソウタは接近するが彼を殺すために大剣にはしっかりと鋭利な刃が備わっていた。



「こいつらどうするんだろうな?」

「さぁ、核を発射した後殺すんじゃないのか?」

打開策が思いつくこともなく兵士達の見張りにより身動きがとれず挙げ句には核発射のカウントダウンが始まる始末だ。

ロレンスの奴はやけくそになったのか居眠りし始めキャサリンすらも目を閉じてしまっている為諦めていると思っていたが彼女が急に喋り始めた。

「ごめんなさいマック…貴方に内緒にしてたんだけど本当は4人じゃなくて5人で作戦をするにあたって貴方と喧嘩しないように分かれて行動していたの。」

「まさかR国アイツじゃないだろうな!」

キャサリンとマックの会話に気をとられた兵士達を複数の男は達がナイフで首を切り裂き殺していく。

「そのまさかだよ。久しぶりだなマック,ロレンス助けに来てやったぞ。」

葉巻を咥え現れた大男は軍人というよりもマフィアを連想させるような出立ちである。

「引退してマフィアになったんじゃなかったのかヴォルロフ?」

「そろそろ引退するつもりだが彼女の頼みなら断る訳には行かないからね。それよりここにある核をどうするかだな。端末による停止信号を受け付けない。デークという男から直接停止方法を聞き出すしか手はなさそうだな。」

核が発射されない可能性を無くすために何か特殊なシステムに変えたのか?

なら、今はデークと戦うソウタを信じて保険を賭けるべきだろう。

「いや、ICBMに爆弾を仕掛けてギリギリで爆破させる。それまではソウタを信じて任せるべきだと俺は思う。」

「…ソウタって誰だ?」

「連絡したときに言った少年よ。マックの言うように彼を信じましょ。ところで爆薬はどうやって調達するのかしら?」

「ここの武器庫に押し込み強盗すればいいだろ?」

敵兵達には地獄の時間が始まろうとしていた。



魔導士同士の一般的な戦いは中・遠距離で魔力砲撃による射撃戦が常だがデークは槍を持ち僕は大剣の近接タイプ同士である為幾度も斬り結んでは砲撃をするを繰り返していた。

「良く反応しているが戦いにくいだろ剣を振るう為に魔力を使って足りない腕力を補強して何とか私の動きについてきているな?」

「それはお互い様だろ。あんたも歳だから動きが鈍いうえに魔力も全盛期じゃないんだろ!殺し合いに向いてないクソジジイが!」

怒鳴り声をあげながら『バスター』を砲撃形態へと変形させ魔力砲撃ちまくる。

「私は、今の君が好きだよ?感情をさらけ出し嘘1つ無い本来の人間そのものだ!人類に必要なのは愛でも希望でも正義でもない!本能や感情に基づいた原始的な行動原理だよ!」

弾幕を避けデークが突進を仕掛けてくるが攻撃をいなし上段から大剣を振り下ろしたが受け止められる。

「僕はあんたが嫌いだァ!戦争を引き起こして他人の人生めちゃくちゃにして自分勝手な主張をしやがってあんたを殺してでも戦争を止める!」

「停める?核戦争は停められるかもしれんな?だがこの戦争は終わらんよ!人に欲と憎しみが有る限りな!!」

「あんたがいなくなればこの戦争は」

「終わらんよ!誰がこの戦争を始めたかじゃない重要なのは誰が戦争を終結させるかだよ!かつての大戦時に君の国の天皇や私の故国の独裁者のような悪い意味でもいい意味でも統制を取る人間がおらず宗教的な繋がりしかないテロリストは私がいなくなっても新たなリーダーや組織が産まれるだけだ!!」

およそ老人とはおもえない蹴りをくらい後方へと飛ばされる。

「まだ立てるだろ少年兵?残り3分楽しませてくれよ。」

余裕の表情をうかべるジジイがまだ切り札を温存していることは分かる問題はどちらが先に切り札を切るかだ。

タイミングを間違えればその時点で終わりだどうするか…。

チャンスが来るかを伺うがタイムリミットが迫ってきていた。




一方、武器庫へと向かったマック達だが揉めてしまっている。

「だ、か、ら!なんでここにあるのは無線式じゃなく有線式なのかって言ってんだよ!」

「知らねぇよ!そもそもここが建設してる頃の西側最新装備なんてここにあるわけ無いだろうが!!」

「ねぇロレンス何とか無線起爆できるように改造できない?」

「ムリ!というか爆発したら死ぬんだから1ヵ所に全部仕掛けて籠城しようぜ!」

確保した爆弾が思った以上に古すぎるせいで有線式でなければ起爆できないと揉めているが一応C4が1個と信管が4つあるがICBMを爆破するのに足りないと思い喧嘩をしているが

ヴォルロフが連れてきた部下達は既についてきたことを後悔しながら喧嘩治まるのを待つしかなかった。



「『魔槍シューベルト』」

ジジイが強力な攻撃をしてくる勝負を決めにかかってきていると見ていいだろう。

「『一刀・羅刹』」

互いの魔法がぶつかり合い相殺される。

実際には僕の方が体勢を崩しかける。

「そんなものか少年兵!お前が頑張らなければこの星は滅びるぞ。まぁ救ったところでなんの価値もないがな!」

「あんたが勝手に価値をつけるなぁ!!」

砲撃を撃つが防御魔法によって防がれる。

「悪あがきをするとは…もう終わりにしよう『神槍 グングニル』お疲れ様。」

魔力全開の攻撃だろう。

このまま受ければ致命傷はまぬがれない。

「あぁ、サヨナラだ『一刀・神楽』」

こちらも残りの魔力を込めデークを迎え撃つ

互いの武器が交わる瞬間一言だけ呟いた

『ブレイク』とするとデークの槍から魔法が消え魔力による保護がない槍は切り裂き心臓部へと突き立てた。

「ガァハッ!!…あぁなるほどな。君が魔剣の継承者か。少年兵……ドウ…ダ…ハジメテノヒ…トゴロシノカン…ソウハッ…」

彼が死の間際に怨嗟のごとく言う言葉も核の発射が中止されたこともどうでも良くなっていた。

両手のひらについた赤黒い血を見てフラッシュバックする光景には今と同じ血まみれの両手と地面を覆う程の死体だった。

こことは違う近代的な街の中で…。

「僕は…なんなんだ!僕は初めてじゃないのか?人を今までにも何人も…。」

疑問を答えてくれる人もいない地下に声が無情にも響いていた。



A国国防省の一室にて若い男性から報告を長官は受けていた。

「そうか…核は無力化されたか。すぐに現地に制圧部隊を派遣しろ。」

「了解です。」

これで核の恐怖も外からの干渉も受けることがなくなった。

「さて、どれだけ死ぬかな。戦争は続くもっとも旨味を享受できるのは一部の人間だけだがな。全てはあの少年兵様々だな。」

「その少年兵は、即時停戦を求めてるそうですが…いかがしますか?」

「放置しておけどうせ何も出来ずに帰国するだろ。それよりも戦意向上のためのプロパガンダをせねばならん。忙しくて帰るのも久しぶりで妻に顔を忘れられそうだ。」

言い終わると彼は立ち上がりコートを羽織り帰路へとつこうとする。

二週間後、遺体となって発見されるが政府は自殺と発表したが明らかに政府が隠蔽していることから様々な憶測が飛び交ったが徐々に

民衆は興味を無くしていき1ヶ月後には忘れ去られることになった。



サイロにおける戦闘が終わってから二週間が経とうとしていた。

A国大統領からの非公式の感謝状や勲章授与され日本に戻ってからも天皇陛下や首相との謁見と心休まる暇もなかった。

今は家へとお爺様の会社の副社長が何故か車で迎えに来て送ってもらっている。

「久しぶりの日本はどうですか?社長から許可を貰ってますから…お寿司でも食べましょう!もちろん私の奢りで!!」

「ごめんなさい。時間が貰えるのなら今は1人になりたいんです…すみませんがそこで降ろして貰えますか?」

「わかったよ、帰りたくなったら連絡してくれそれまでどこかで時間を潰しておきますから。」

「お願いします。」

そう言って車から降りて街を歩く。

街には多くの人が行き交っていたが違和感しか感じなかった。

すれ違うJK達の会話もティッシュ配りのバイトも帰路につこうとしているサラリーマンもビルの大型ディスプレイに投影されるニュースすらも戦争とはかけ離れたものだった。

この国の人間達に言わせればどこか遠い国で起きている戦争などどうでもいい…いや、違う知ろうともしないだけで誰かは声を上げている。

彼らには興味がないんだ…どれだけの人間が死んでも街が吹き飛んでも憤ることもなく上部だけの平和論を語りそして忘れる。

あの戦場が地獄ならばここは天国か?

「いいや、あれは地獄じゃないさ人間が生きるべきありのまま世界だ。…もちろんここも天国ではない…欺瞞に満ちた世界だ。」

殺したはずのデークが前に立ち喋りかけてくる。

「君は世界を救っただが結末はこんなものだこれから先もあの国の周辺は紛争が絶えず発生し難民達は先進国へ向かうだろう。価値観の違う民族が手を取り合うのは難しい。結果、不満は新たなテロや差別,紛争の火種となる。平等ではない…核が撃たれていれば平等に世界は滅んでいたはずだろう?気分はどうだ世界を救った英雄?」

幻だと分かっていても彼の言う通りだ。

だからこそ

「…なら私この世界を…その時がきたら滅ぼすだけだ。」

私は消えていく幻にそう宣言して歩き始めた既に分かりきった答えを確認するために。



とある一室にて

「大統領この度は我々を頼ってくださりありがとうございます。もちろん我々にも利があります。……はい………はい…1人だけなのは想定外です。では、また何かあればその時にでは。」

予想以下か。

だがこれを切っ掛けに奴の本来の機能が復活するかもしれない。

「次の試験場の準備をするか…。」



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地獄の始まり @TotueiheiXX

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