第111話 いつもの日常でしていたものが、思いのほか影響していた

 教習所行って、昼飯作って悠長に午前中を過ごしてたら、投稿がわずかに間に合いませんでした。






 食事を終えた俺たちは、部屋に戻り、各々が好きに時間を過ごしていた。


 あれから玲羅は、色々なものを取りに行って、おいしそうなものがあったからと、俺も連れまわしてくれて、楽しい時間だった。

 奏と蔵敷はというと、席に戻るやすぐにあーんとかし始めたので、隣に座っていた美織が少し迷惑そうな顔をしていた。それでも、奏はお構いなしに攻めていたので、正直見てて面白かった。


 当の美織はというと、最初からデザートを取って食べていた。

 彼女くらいになると、必要なのは糖分らしい。だが、栄養面だと心配で見ていられない。


 結乃は、まあ……いつも通りだ。もう店に迷惑かければなんでもいい。


 この場にいる全員は、夕飯として出てきた食事を腹いっぱいに食べて、とても満足していた。そんな中、奏がスマホを持って、突然俺と玲羅に話しかけてきた。


 「椎名君椎名君」

 「ん?なんだ?」

 「今から私の言う姿勢を作って!」

 「……?いいけどさ」


 俺は奏に言われたとおりの姿勢を作っていった。

 最初に言われた姿勢は、玲羅を押し倒しているような形で、俺が玲羅の上で彼女の顔を見つめるような形だった。


 そんな状態を作り出した奏は、とどめとばかりに俺にセリフを吹き込んできて、言うように仕向けた。


 「はあ……玲羅、愛してる。君を食べちゃいたい……」

 「ひ、ひゃぁ……」


 カシャ


 奏の言う通りにしていると、なぜか俺たち二人は彼女に写真を撮られた。

 ―――と思ったら、今度はスマホの画面を操作して、なにかをしているようだった。


 「なにしてんの……?」

 「いやあ、あんまりにもいい画が撮れたもんだから、仲良いグル-プに送ったの」

 「え、本当に何してんの?」


 グループに送った?

 え?まじ……?


 と、そこで思い出した。うちのクラスにそれらしきものがあったな……


 「椎名天羽を見守る会、か?」

 「そうだよ」

 「え、翔一、なんだそれ」

 「言ってなかったっけ?卒業前の修学旅行の時に、うちのクラスが作ってやがったんだよ」

 「な、なんだそれ!?私はそんなの知らないぞ!」

 「俺もだよ。なんか知らねえけど、トーク内容も見させてくれねえし」

 「アッハッハッハ、見せられるわけないよ!」

 「な、なにを話しているんだ!」


 そうやってトーク内容を見せるように奏に詰め寄るが、頑として奏はトーク内容を見せようとしない。

 くっ、なぜ本人である俺が見れないんだ……


 そうしていると、突然美織から声をかけられた。


 「翔一ー」

 「今忙しい!」

 「いや、蔵敷の方もグループに入ってるわよ」

 「「なんだって!」」


 美織に言われて、俺と玲羅が振り返ると、そこにはすでにスマホを美織に奪われた蔵敷がうなだれていた。


 「すまん、奏……」

 「あーあ……今から保険に入れないかなあ……」

 「ほ、本当になにがやり取りされているんだ?」


 俺たちは、美織からスマホをかっさらうと、グループのトーク履歴をさかのぼった。

 すると、一番最初の投稿には、奏から俺と玲羅が新幹線の中でキスをしているところの写真だった。


 「ぬわああああああああああ!」

 「ちょ、落ち着け!てか、この写真持ってたのか……」

 「あ、そうだ。9月に卒業アルバム配布するらしいよ」

 「遅くね?……じゃなくて!え?俺たちがとられてるのも知らないタイミングの写真もあるんだけど……」


 見れば見るほど、やばいにおいしかしない。

 だって、一緒に高校の制服で一緒に並んでいる写真もある。なにしてんの!?


 「盗撮じゃねえか!」

 「ち、違う!結乃ちゃんに、撮ってもらったの!」

 「え?―――あ、ほんとだ!この写真送ってるの結乃だ!おい!」

 「し、知らないもん……私は矢草先輩に誘われただけだもん」

 「斎宮いいいいいいい!」


 お前も共犯者だったのか……

 ていうか、妹になんて写真を撮られてんだ、俺!しっかりしろよ!


 ちなみに玲羅は、隣で「あはは、終わりだ……」とか言いながら、明後日の方を見ている。なにが終わったんだよ……


 俺はそっとスマホを閉じて、蔵敷に返す。


 「そ、そのぉ……なんかごめんね」

 「奏……」

 「な、なにかな?」

 「写真、全部俺に送ってくれ。そしたら許す」

 「翔一!?」

 「そ、そんなことだけでいいの?それなら、あとで送るから朝にでも確認して……」


 そう言って、奏はスマホを操作し始めた。

 送信がどんどんと完了していくのか、段々と俺のスマホの通知音がとんでもないことになってきた。


 ピコンピコンピコンピコンピコン


 「カラータイマーかよ」

 「から……なにそれ?」

 「知らないの?3分間巨大化マンのこと」

 「ウルト〇マンのこと?」

 「ああ、正確には大体3分マンだったわ」

 「違いがわからない……」


 それから俺たちは、色々騒いだりもしたが、なんだかんだ日中遊びまくっていたのもあって、11時には全員寝てしまった。

 しかも、みんながいる手前、玲羅は恥ずかしがって俺と一緒に寝てくれないし、ちょっと寂しい。


 俺と蔵敷が、部屋の奥にあるでかいベッドに寝て、他の女子たちは布団を敷いて寝ていた。


 ―――夜中の一時くらいだっただろうか。

 突然、体が揺らされて目が覚めた。


 「翔一……翔一……」

 「んあ?玲羅か?……ふあ、どうしたん?」

 「そ、その……中に入っていいか?」

 「……いいよ。ほら、寒いでしょ……」

 「あ、ありがとう……すまな―――ひゃぁ!?」


 俺は夜中に玲羅がやってきたことで、迷いなく布団の中に引きずり込み、そのまま抱きしめた。


 「なんで来たの?」

 「そ、その……眠れなかった……」

 「枕が合わなかった?」

 「い、いや……その、なんというか……」


 なんだろうか、もじもじしていてなにを伝えたいのかわかりづらい……

 だが、なんとなく恥ずかしいことなのはわかった。彼女がなにを言っても、ちゃんと笑顔で返せるようにしないとな。


 「ま、毎日……翔一に抱きしめられながら寝てたから……今日はなにもなくて……」

 「かわいすぎかよ」

 「かわ……悪いか!まさか、私もこんなに翔一を体が求めているとは思わなかったんだ!」

 「なんか、エロくね?」

 「さ、最低!人がこんなに真面目に話してるのに!」

 「悪い悪い。じゃあ、お詫びにキスを―――」

 「はあ……これで許してしまう私は本当にちょろいのかもしれないな……」


 高級なホテルの一室で、他にもいる部屋だというのに、俺たちは熱い熱い熱烈なキスを交わしたのだった。

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