第61話 愛し合うキス
試合が終わったその日、俺は玲羅とともに夕飯を食べていた。
最近は、結乃がこの場に同席していない。まあ、玲羅を追い出した手前、気まずくて話しづらいというのがあるのだろう。
別に玲羅は怒ってるわけじゃないから、一度話し合えばいいだけなんだけどな。
まあ、少しだけさみしいのは玲羅も感じていることだ。
彼女も、最近はちらちらと結乃の座っていた席を見ている。
本当に厄介な妹だ。ったく、尻拭いくらい自分でやれってんだ。
「翔一の料理、おいしいな」
「今日はグラタンにしてみたけど、口にあったのならよかったよ」
「翔一は、もう私の胃袋を掴んでるからな。口に合う、合わないじゃなくて、なにを食べても体が喜んでしまうぞ」
「ふふ、なんだそれ」
それにしても、玲羅は変わったな。作中はこんなにコロコロ表情を変える子ではなかった。いや、恥ずかしさで赤面することは多かったが、言動が変わった。明らかに甘えてきてくれるから、本当に別人のようだ。
「私も料理には自信があったのだが、やはり翔一の料理を食べたいという気持ちが強すぎて……」
「じゃあ、今度さ、玲羅の手料理食べさせてよ」
「い、いいのか?翔一ほどおいしくないぞ?」
「いや、そんなに言われるほど、俺の料理はおいしくないぞ?ていうか、なにがなんでも玲羅の手料理食べたいな」
「……なら、今日の夜は、私に身を委ねてくれないか?すべて、私になされるがままで」
「……?別にいいけど」
そう言うと、玲羅はうっすら頬を染め、ガッツポーズをとった。ちょっと可愛かった。
だが、甘く見ていた。玲羅がこういう宣言をしてから、甘えてくるということの意味を
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
夕飯を食べるときに、翔一がなにがなんでも私の手料理を食べたいと言ってくれた。
それはものすごくうれしかったが、同時に私の中でよくない考えを思いついてしまった。
それを想像すると、翔一がどんな反応をしてくるか楽しみで仕方ない。
私は、食事の後、自室に戻って寝巻に着替えた。だが、この部屋で寝ることはない。この部屋にベッドを用意してくれた翔一たちに申し訳ないが、最近は発散するとき以外、このベッドを使っていない。基本的に、そういうことをしないとき以外は、翔一に抱きしめられながら寝たい。と、言っても、翔一は私を起こすためにこの部屋にも入っているから、バレているかもしれない。
換気しているから大丈夫だと思うが……
まあ、もとはと言えば、翔一が私をこんな気分にさせるのが悪いんだ。こんなエッチなことを考えてしまうようになったのは、翔一の家に住んでからだ。
関係ないことを考えてしまったが、私はもうすぐ床につくであろう翔一のいる部屋に向かった。まあ、この家は、ベッドなんだけどな。
翔一の部屋の前に着いた私は、控えめに扉をノックした。
コンコンコン
「どうぞー」
ノックの返事に、翔一は間の抜けた声で対応した。今からなにをされるともわからないのに、そんなに警戒心がないと襲われちゃうぞ。冗談で思ってしまったが、そんな姿も愛おしいと思ってしまうのは私だけだろうか?
「翔一、隣に失礼する」
「いつものことだろ?そろそろ、なにも言わなくても大丈夫だよ」
「いや、言いたいんだ」
「そうか?別にいいけどさ」
「じゃあ、失礼するぞっと」
「!?」
完全に油断していた翔一の上に私は覆いかぶさった。
翔一は心底驚いていたが、私の言葉通りに拒絶はしてこない。むしろ、なにをされるのかと待っているようだ。
そんな翔一の唇を舌ごと奪った。
「んん!?」
「んぅ……れろ……じゅる」
静かな部屋の中に、私と翔一の涎と舌が絡み合う音が響くが関係ない。
私は深く翔一を感じるために、もっともっとと、翔一の口腔内をむさぼり続ける。
はあ……翔一……
幸せすぎて蕩けてしまいそうだ……
お前は……なんてカッコいいんだ……
野球をしている姿もそうだ。なんで、誰よりもカッコよくてすごい球を投げるんだ。こんなのすでに惚れてるのに、惚れ込んでしまうではないか。
そんなカッコいい姿をほかの女子が見逃すはずがないよな。だから、もっとキスして、翔一にマーキングするんだ。こいつは私の男だ!って。そうすれば、私の恋人に悪い虫はつかないはずだ。
もっとだ。もっと、翔一の体を……翔一の温もりを
私はキスだけでは飽き足らず、翔一の手を絡め取っていく。本当に翔一は私にされるがままだ。
ちなみに、この間のように私は脱いでいない。あいにく、今日は脱ぐ予定がないので、ナイトブラをつけていて、色気が一つもない。まあ、いつか、生で見てもらうときに形崩れなんて起こしたくないからな。
「んく……はあはあ……しょういち……はあ……ん……」
「んぅ……れろ……んむ……」
すごい、今の翔一は本当になんでも返してくれる。こんなにも長時間熱いキスをしているというのに、翔一はやめずに私の舌に応えるように絡めてくれる。
ああ、気持ちいい。
キスってこんなに気持ちいいものなんだと教えてくれた翔一。
手料理で、私の胃袋をゲットした翔一。
私にぽっかりと空いた穴をグチャグチャの愛で埋めてくれた愛する翔一。
いつもは強いけど、弱弱しい翔一。
全部好き。翔一が私の全てを肯定してくれたように、私は翔一の全てが好きだ。
将来も、翔一以外にあり得ない。
翔一の子供かあ。カッコよくて女の子に優しくて、モテモテなんだろうなあ。それとも、私みたいな子に惚れて、ひたすらその子のことだけを愛すのかな?
んはあ……翔一が私の舌を激しく絡めてくれる。あはあ、きもちいい……
なんで翔一は私を愛してくれるんだ?一目惚れでもこんなにしてくれるのか……
嫌、それが翔一なんだ。誰よりもカッコよくて、強くて―――私の自慢の彼氏だ。
んふふ……好きだ。好きだ。大好きだ!それどころか、もう愛してる!
たとえ世界が滅びても、翔一さえ生きていればそれでいい。
私は、20分以上も重ねていた唇を放して言った。
「ん……しょういち……ちゅき」
……噛んでしまった。
こんな大事な場面で噛むとかありえない!
だが、翔一はブフッと噴き出した後、私の後頭部を持って、少しずつ私を翔一に近づけていった。意図を理解した私は、目を閉じて待機する。
翔一からもらったキスは優しくて、あったかくて、とても幸せな気分になれた。
「玲羅、キスがうまくなったね」
誰のせいだと思ってる。
―――お前が、私に愛し合うキスというものを体に教えたんだろう?
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