第45話 処女っぽい
「よし!昼飯を食べに行くわよ!」
「急だな……」
話がひと段落ついた俺たちは、HRも終わっているため、教室に戻らずに昼飯を食べに行こうという話をしている。
なんか、美織が店の予約をしているらしい。
「玲羅はいいのか?さっきめちゃくちゃ話しかけられてたじゃん」
「別に問題ないぞ?私には翔一がいればそれでいい」
「いや、交友関係はしっかりしろよ……」
「そうね。天羽さんはもう少し他人と仲良くするべきね。だから、みんなあなたのことを知らずに、庇う人がいなかったのよ」
「う……それは……」
「済んだことだろう?それになにがあっても俺が味方だから一人にはならない」
「翔一、あなたはつくづく女をダメにする性格してるわね」
「……?」
ダメにしてるつもりはないけどな?
そんなこんなで俺たちは、美織が予約しているという店に足を運んだ。
だが、美織の連れてきた店というのは……
「おい、美織」
「なに?」
「ここ一回食うのに7万とか普通に消し飛ぶ店じゃねえか?」
「私が食べるのよ。それくらいのものか、翔一の作ったものじゃないとだめよ」
「なぜ、俺の飯が並ぶのか……」
「翔一のご飯はどこの店にも引けを取らないくらいおいしいぞ?」
「あら?天羽さん、わかってるじゃない」
店に入る前からなぜか同調する2人。まあ、仲がよさそうではあるから問題はないのだが。
店に入ると、予約していたということもあってすぐに席に案内された。
この店は高級肉を扱う店。すき焼きが有名なところだ。てか、この店って営業夜じゃなかった?もういいや、美織のことだなにしでかすか考えるだけ無駄だ。
それに全席個室制だ。おそらくだが、なにか話したいことがある。それに玲羅も美織に聞きたいことはありそうだ。
飯を食う前に2人だけの状況を作ってやるか。
「ちょっとトイレに行ってくる」
「行ってらっしゃい」
「大丈夫か?」
「玲羅、たかがトイレであんまり心配するな。いや、気使ってくれるのはうれしいけどな」
そう言って、俺は一時的に席を立った。
まあ、5から10分くらいでいいだろ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
私は、高校に入ってから初日に出会った条華院美織という女生徒と対峙している。
翔一はトイレに行って、今はいない。
「ふぅ、翔一も無駄に勘がいいわね。これじゃ鈍感系は無理ね」
「なにを言ってるんだ?」
「あなたは、私に聞きたいことがあるんでしょう?翔一も席を外した。暗に私に翔一の過去を聞いてもいいと言っているのよ」
「聞いてもいいのか?」
「まあ私的には、あんなくらい出来事は解決するまで誰にも言いたくはないけどね」
なら、なぜ聞いていいと言った?暗い出来事、おそらく翔一の婚約者だったという女性が自殺した話だろう。
だが、私がこいつの口から聞くのはフェアじゃない。
なら、私の一番気になっていること……
「アーカーシャってなんだ?」
「まあ聞いてたなら聞くわよね。他言しないと信じて教えてあげるわ。
アーカーシャ―――正式名称を『特定空間虚空転送法』と言うわ。アーカーシャは物ではなく手段のこと。そしてこれは、この世界に存在する空間そのものを別空間に押し込んで、あたかも消し飛ばしたかのように見せるのよ。建物も大地も水も……そして人さえも。虚空に送られたものは、そこの中で消し飛ぶ」
「な、なんでそんなものを……」
恐ろしい。2人はそんな人知を超えた恐ろしい何かの話をしていたというのか?
何者なのだ、2人は。
「うちの家と翔一の家、透明島に関わる家は世間一般の富豪や財閥とはわけが違うのよ。そうね……わかりやすく言うのなら、ヒーローものの財〇Xとかと似た感じかしら?」
「ち、ちがうそうじゃない!なぜそんなものを開発しているんだ!どう考えても……」
「地球規模でダメージが出る。これが空間を消し飛ばすだけだと思ってるの?」
「え?」
「空間が消える。つもり、そこには何もない空間が生まれるのよ。あなた、水槽の中で風船を割っている映像を見たことあるかしら?」
「あ、あるが……なんの関係が?」
「風船が割れた瞬間、水がない空間が生まれて、そこに流れ込む。それが大気中で起こるのよ。嵐や竜巻なんて比じゃない。アーカーシャは特殊物質を使うのよ。その物質は致死性を持った物質。それが大気が流れ込むと同時に巻き上げられ、周囲を汚染する。計算上、日本を包む大きさの転送だけで、地球は汚染されてすべての生物が死滅するわ」
私は言葉が出なかった。
理解ができない。なぜそんなものを作るのか。もはや、地球で人間がする戦争じゃない。
まるで、国じゃないなにか強大なものを敵にしているようだ。
「その通り、現在宇宙には私たちが観測しているだけで、一万以上の知的生命体が確認されている。まあ、宇宙人のことよ。遠い未来、戦争は国単位ではなく、星単位になり、いつしか銀河系単位になる。私たちの家はそれに備えているといっても過言じゃないわ」
「訳が分からない。そんな話聞いたことがない!」
「当たり前じゃない。人類にとってのオーバーテクノロジーよ。秘匿されているに決まってるじゃない。それに翔一も私も、そんな家に嫌気がさした。
普通の恋をしたいし、愛情を与えてもらいたい。そんな願いすらかなえられない家に、いることの意味がなくなった。私たちが守るべき人だった姫ヶ咲綾乃が自殺したから」
そう言って、辛そうにする条華院。
話だけなら恐ろしい。翔一のことを知らなければ今すぐ逃げ出していたところだろう。
だが、私は翔一ことを理解しているつもりだ。誰よりも優しくて、頭がよくて料理上手で、強くて……そして、誰よりも愛情深い。
私はそんな彼が愛おしくて、恋人になった。今更、家がどうこう言って別れるつもりもない。
それに、翔一が家を見限っているのはなんとなく気付いている。翔一にとっての優先順位は家柄より家族などの愛情だ。そんな男が、私をだますつもりなんてないはずだ。
「意外ね……怖がってるそぶりはあるけど、翔一を思う気持ちは変わってないみたいね」
「当たり前だ。私は翔一を愛してる。私は翔一にどんな過去があろうと関係ない。翔一は翔一だ」
「へー、調べ以上にはいい女ってやつなのね。でも、綾乃と言ってることが同じだわ。はあ、翔一が惚れたのがわかる気がする」
「なにを言っている?」
いい女と言われるのはうれしいが、最後になにを言っているのかわからなかった。
だが、私に対して悪い言葉を投げかけているわけではないのはわかる。
この女も、翔一を好きになったのだ。決して悪い奴じゃないはずだ。もしかしたら、いい関係を気付けるのかもしれない。
そう思っていると、条華院がスマホを私に見せてくる。
「ほら、連絡先。翔一のことで困ったら私に言いなさい。そうね……翔一を気持ちよくしてやれないとかなら、腰の振り方教えてあげるわ」
「な、なにを言っている!」
「まあ、私、処女なんだけどね」
「き、聞いてない!」
つ、掴みづらい……
条華院はいいやつだ。だが、下ネタが……結乃と似ているところが―――いや、結乃よりひどいかもしれない。
私は出されたスマホでQRを読み取り、条華院を友達登録をした。
登録が終わったのを確認した条華院は机の下に潜り込み……ひゃあっ!?
突然、この女は私の制服のスカートをたくし上げ、下着を見てきた。
「条華院!?なにをしている!」
「美織でいいわよ。家名で呼ばれるのは好きじゃないわ。それにしても初心なパンツ履いてるわね。ピンク色に、かわいらしいリボンがついてる。処女っぽいわね」
「や、やめろ!み、美織!」
「あら?玲羅、この程度で恥ずかしがってたら翔一の相手は出来ないわよ」
「そ、それとこれとはわけが……うひゃあ!?」
「ふむ……私より大きいわね……なに食ったらこんなに大きくなるのかしら……」
「し、しらにゃい……」
こうして私は翔一が来るまで、体をまさぐられてしまうのだった。
翔一、早く帰ってきてくれ……
あとがき
さ、今回は何人フォロワーが減るかな?
30人くらい行くんじゃね?だとしたら、シリアス展開できねーじゃん!やだよ!展開に起伏がなくなるの
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