妖怪ふらずんば

 雨の多い季節ですね。

 というわけで、ふらずんばの話をしましょう。


 ふらずんばとは、今でいう山梨県の辺りに昔から居たという妖怪。

 「子どもの姿をしている」だとか、「頭は婆さんで、体はカワウソだった」だとか、「葉っぱで出来た妖精みたいなもの」だとか、その姿形に関する目撃談はばらばらで多種多様です。

 しかし共通している情報は、そいつが主に、雨が少なく、渇水の心配があるような時期に現れるということ。

 そして……


 雨ふらずんば、かなしかろ

 雨ふらずんば、くるしかろ


 歌のような呪文のような、そんな言葉を口ずさみながら、森の奥からふらりとやってくるということ。

 そうして、妖怪ふらずんばは、何処かからおもむろに紐状のものを取り出し。

 その一端を自信の首に、もう一端を高い木の枝などにかけ、ぶらりと、木からぶら下がるのです。

 すると不思議なことに、その地域には恵みの雨が降ってくると、そう伝えられているのです。


 また、お気づきかと思いますが、この妖怪は、てるてる坊主の由来にもなっています。

 しかし何故、雨を降らす妖怪であるはずのふらずんばが、晴れを願うてるてる坊主に姿を変えたのでしょうか。


 一説によると、てるてる坊主は元来、雨を願うためのおまじないであり、名前も今とは異なったといいます。

 けれども、おまじないとは、効果が出ないときもあるもの。

 降ってほしくてそれを吊るしたときに限って雨が降らない、むしろ吊るしたら晴れる、といった人々の経験談から、それはいつしか、晴れを願うてるてる坊主へと転じたとか、転じないとか。

 本当のところは、謎です。

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