【バレンタインボイスドラマ原稿】カルチュラル異世界0214
このエピソードは、生成音声でスピンオフボイスドラマを作成するにあたって構築した、原稿です。
そのため小説のフォーマットを取っておらず、実際どちらかというと台本に近いものとなります。
本編はこちら:https://youtu.be/ap8EWQW0wBY
ナレーション1「ここは、異世界カイムスフィア。十の神々が見守る、七の国々。その一国の都、ロークレール。」
ナレーション2「ときは雪骨の月。視聴者の世界で言うところの、二月十四日。」
ナレーション3「そう、バレンタインデーである。」
(冬めいたBGM)
クロヴ4「ったく、ピリの野郎。今日がどんな日か分かってないんじゃねえか?」
ナレーション5「そう愚痴をこぼすのは、ドワーフの少女。クロヴだ」
ナレーション6「ピリと呼ばれる女性とは、まあなんというか。今のところ、パートナーである」
メア7「チョッコレイト、チョコレイトー。あれ?」
クロヴ8「お?」
ナレーション9「大型の製菓店。魔化ガラスでできたショーウィンドウの前に立っていたクロヴは、隣に見知ったエルフが立っていることに気づいた」
クロヴ10「もしかして、メアちゃんか?」
メア11「あ! クロヴさんだ! お久しぶり!」
ナレーション12「二人は、一時期冒険者としてパーティを組んでいた」
メア13「ピリさんと一緒じゃないなんて、珍しいね?」
クロヴ14「あー、まあ。仕事だよ。分かるだろ?」
15(クロヴのため息)
クロヴ16「アイツ、どうしてもソロでやんなきゃならないタスクがあるんだと。せっかくのバレンタインデーだってのに、忙しいヤツだ」
メア17「あー。そっか。そういうお仕事だったね。口には出せないけど」
クロヴ18「そゆこと。覚えててくれて助かるぜ」
(冬の風が吹く)
メア19「さっむ!」
クロヴ20「うーっ。まあ、過程はどうあれ、俺様たちはチョコレートを買って帰る必要があるってわけだ。宿屋で作るわけにもいかんしな」
メア21「早く入ろう、風邪引いちゃうよ!」
クロヴ22「そうするか」
(BGM停止)
(ドアを開ける音)
(陽気なBGM)
(ほのかに、ガヤガヤと声がする)
クロヴ23「……なんか、思ったより暖かくはないな?」
メア24「そう? でも、暖かすぎるとチョコが溶けるんじゃない?」
クロヴ25「それもそっか」
(てくてくと歩く音)
クロヴ26「マジかよ、端から端まで全部チョコレートか。景気のいいことだ」
メア27「バレンタインデーだからねー」
クロヴ28「これは……なんだ? まんじゅうか? よくチョコと混ぜようと思ったな」
メア29「なになに? 青の神子たるイロハの気を引くために、皇太子が我が製菓店に出資して開発した一品」
クロヴ30「げっ、あのふわふわ綿飴野郎か……」
メア31「でもあの人、舌は確かだよね。皇族としては……ちょっとあれだけど」
クロヴ32「そこなんだよ。さぞかし良いモン食ってんだろうなあ」
メア33「ってことで、これは買っちゃおう。絶対美味しいし、私も食べたい」
クロヴ34「……景気のいいことだ」
クロヴ35「つか、今もフォボスくんとは続いてる感じか? 答えを聞くまでもなさそうだけど」
ナレーション36「フォボスとは、メアの恋人である」
ナレーション37「彼はリスの獣人だ。まだ子供。寿命の都合で、いずれ離別する定めにあるが、二人はそれを受け入れている」
メア38「うん! 今年はちゃんとチョコを渡すんだ。去年は、そういう関係じゃなかったから」
クロヴ39「ほーん。まあパーティ組んですぐの頃だっただろうしな。仕方ねえことだ」
メア40「そ。だから、フォーくんにとっては、実質初めてのバレンタインになるのかな」
クロヴ41「そっか。なら、たっぷりプレゼントしてやらねえとな。ガキには物量が効くぜ」
メア42「アドバイスありがとー! お、このナッツ入りもいいな。カートにイン!」
ナレーション43「そんなこんなで、二人の買い物は進んでいく」
(雑踏の質が変わる)
メア44「それにしたって、バレンタインデーっていつから流行り始めたんだろう?」
ナレーション45「長い間ぶらぶらと歩いていると、話題は横道にそれるものである」
クロヴ46「さあ? メアちゃんのほうが年上なんだからよ、メアちゃんがわかんなかったら俺様もわかんねえぞ」
メア47「だよねえ。前、国立図書館に行ってさ。調べはしたんだけど、あんまりピンと来なくてさ」
クロヴ48「わざわざ調べに行ったのかよ」
メア49「だって、気になるじゃん」
クロヴ50「まあ……言われてみれば気になってくるな。どんな説があったんだ?」
メア51「九割が古代の神子由来って書いてた」
クロヴ52「九割かー。じゃあほぼほぼ確定じゃね?」
ナレーション53「神子は、神の子と書く。異世界転生者ないし転移者のことである。カイムスフィアには、度々彼らが召喚されることがある。先程話題に上がった、イロハもその一人だ」
メア54「なんだけど、文献によって年代と発祥の地がぜんぜん違うの。それに、起源が特定できないことを指摘してる文献まであった。著者は例の皇太子なんだよね」
クロヴ55「マジ? え、どゆこと?」
メア56「うん。なんとかイロハちゃんが最初ってことにしたかったみたいだけど、あまりに反例が多くて断念したみたい」
クロヴ57「動機はともかく、結構重要な文献だな、それ」
メア58「クロヴさんはどう思う?」
クロヴ59「うーん……」
60(試食のチョコレートを食べる音)
クロヴ61「ウィスキーボール、か。これは買いだ。ピリのやつも喜びそうだ」
メア62「フォーくんには食べさせられないかな……。でも、私が食べたいから買っておこう」
クロヴ63「正直なやつだ」
メア64「嘘をつくより良いでしょ?」
クロヴ65「違えねえ。で、バレンタインデーの起源の話だったな。俺様は、召喚された神子が同じ世界から来てる説が一番ありそうだよなと思う」
メア66「なるほど。じゃあ、それぞれの神子が、同じ歴史を知ってるってことかな?」
クロヴ67「ああ。カイムスフィアと繋がってる世界が複数あるにしても、毎回違う世界から呼んでるわけじゃないって解釈だ」
メア68「そうだね、単純に考えるとそうなんだけど……」
クロヴ69「なにか引っかかってるみたいだな」
メア70「ルノフェンさんと赤の神子さん。違う世界から来てるらしいんだけど、どっちもバレンタインデーのこと知ってたみたいなんだよね」
クロヴ71「おっとぉ?」
ナレーション72「ルノフェンとは、黒の神子のことである。二人とは面識があり、良好な関係だ」
メア73「とにかく、二人の神子が違う世界で、共通の歴史を送ってたってことになっちゃう」
クロヴ74「あー。確かに。あいつの居た世界、星をまるごと船にして飛ばしてるとかいう話だもんな。アイツの与太じゃなきゃブッ飛んでやがる。文字通り」
メア75「おとぎ話みたいだよねえ」
クロヴ76「ほんとそれな。でもさ、こうは考えられねえか?」
メア77「うん?」
クロヴ78「ルノフェンの世界と、赤の神子の世界。こっちの召喚技術みたいに、どちらかから出入り可能だったとしたら、どうだ?」
メア79「あー! そっか! それなら両方の世界にバレンタインデーがあってもおかしくない!」
クロヴ80「いい線行ってそうな仮説じゃねーの? 実際、真相は本人に聞かないと分からねーけどさ」
メア81「ルノフェンさんに今度会ったら聞いてみよう」
クロヴ82「俺様も覚えておくわ。さて」
ナレーション83「クロヴは、それぞれの買い物かごを眺める」
クロヴ84「にしても、いくつ買ったんだ? 六、七……。流石にフォボスくんも食いきれねえだろ、それ」
メア85「半分くらいは私が食べるかな……」
クロヴ86「もしかして、今も普段からこのくらい食べてる?」
メア87「美味しいものは美味しいじゃん?」
クロヴ88「そうだわ、そういうヤツだったわ。メアちゃんは。こんな体で重戦士のピリと同じくらい食うんだもん。すげえよ逆に」
メア89「クロヴさんこそ、ちゃんと食べないとダメだよ。ピリさんのご飯だけ作って、自分はチョコレートで済ませるとかはナシだから」
クロヴ90「わぁってるよ。最近は気をつけてる。ホントだぜ?」
メア91「もう」
クロヴ92「ま、こんだけ買えば十分だろ。会計済ませようぜ」
(てくてくと歩く音)
(パッケージをまさぐる音)
(硬貨を数える音)
会計モブ93「エルフの方は56シェル。ドワーフの方は27シェルになりまーす」
メア94「はい、どうぞ」
クロヴ95「結構するな。でもまあ、本来は贈答用だしこんなもんか。ほい」
(硬貨を数える音)
会計モブ96「ありがとうございまーす!」
(ドアを開ける音)
(BGMの音量が落ちる)
クロヴ97「今日はありがとな、メア。久々に楽しい買い物だったぜ」
メア98「こっちこそ! また顔を見れて嬉しかった!」
クロヴ99「そうだ。フォボスくんのところには、挨拶に行ったほうが良いか?」
メア100「あー、今は空けてるかな。冒険者として、ソロで簡単な依頼をこなすって言ってた。こんな日なのにね」
クロヴ101「そっか。じゃ、残念だけど、今回は見送るわ」
メア102「ごめんねー?」
クロヴ103「良いって。そういうこともある。次あったときに、元気な顔見せてくれればいい」
メア104「ピリさんによろしくね」
クロヴ105「もちろんだ。それじゃーな」
メア106「またねー!」
ナレーション107「ともあれ、二人は別々の帰路を歩む」
クロヴ108「ふぅ」
ナレーション109「白い息を吐く。鉱石の季節の、真っ白な寒空は、厚着していてもなお身に刺さる」
クロヴ110「帰るか。ピリのもとへ」
(雪を踏みしめる音)
ナレーション111「製菓店の中とは打って変わって、寡黙に帰路をゆく」
ナレーション112「物静かで、臆病で。どちらかというと、こっちのほうが彼女の素の性格だった」
(ドアを開ける音)
(暖炉の、火が弾ける音)
クロヴ113「帰ってるみたいだな」
(階段を登る音)
(小さなドアを開ける音)
クロヴ114「ただいま」
ピリ115「おかえり。遅かったね。手を洗った方がいい。ここしばらく、病気が流行ってる。重くはないけどね」
クロヴ116「いっけね。そうだった」
(走る音)
(水を流す音)
(蛇口を閉める音)
(走る音)
ピリ117「ありがとね」
クロヴ118「うん。ところでさ、ピリ」
ピリ119「どうしたの?」
クロヴ120「今日がなんの日だったか、覚えてる?」
ピリ121「ああ、それね」
(ごそごそとカバンをまさぐる音)
ピリ122「はい。ウィスキーボール。好きでしょ?」
クロヴ123「ウィスキー……」
ピリ124「好きだったよね?」
クロヴ125(笑い声)
ピリ126「……?」
クロヴ127「あのさ、俺様も同じもの買ってきたんだわ。笑えるわ」
ピリ128(うめき声)
クロヴ129「薄々そんな気はしてたんだよなー。ピリは几帳面だからさ、忙しくても、バレンタインデーを忘れることはないし、だったらこれを買うだろうなって」
ピリ130「うぐ……そうね」
クロヴ131「まあ、俺様もそこは読んでたからな。他にも色々買ってきたぜ」
(カバンをまさぐる音)
(軽いパッケージを置く音)
ピリ132「あら、これは……まんじゅう?」
クロヴ133「実はさ、さっきメアちゃんに会ったんだ。元気そうだった。このまんじゅうチョコ、皇太子監修なんだと。話聞いてたらちょっと気になってな。買ってきた」
ピリ134「貰っていいの? んぐ」
ナレーション135「クロヴは、チョコレートをピリの口に押し込んだ」
クロヴ136「黙って食っとけ。これは二人の分だ」
137(クロヴがチョコレートを食べる音)
138(ピリが飲み込む音)
ピリ139「確かに、女性でも食べやすい大きさね」
140(クロヴが飲み込む音)
クロヴ141「だろ? 綿飴も綿飴なりに長所はあるってことだ」
ピリ142「そうね」
ナレーション143「和やかな時が過ぎてゆく。暖房が効き、部屋が温まる」
クロヴ144「さて」
ピリ145「……? ちょ、ちょっと!」
(金属が擦れる音)
クロヴ146「ピリ、しばらく仕事続きだったろ? ご無沙汰なんじゃねーの?」
ピリ147「それはそうだけど」
クロヴ148「ちょっとベッドで仰向けになってみろ。たまには施してやる」
ピリ149「施してやる、って言ったって……」
クロヴ150「全身マッサージだ。ドワーフの器用さを味わわせてやるって言ってんの」
ピリ151「ん……? そっか、ならいいのか」
クロヴ152「悪いようにはしねえ。終わったときには頭から爪先までシャキっとする。保証するぜ」
ピリ153「なんだか、今日のクロヴは随分積極的ね」
クロヴ154「当たり前だろ? なんたって」
ピリ155「そっか」
クロヴ156「今日はバレンタインデーだからな」
ピリ157「今日はバレンタインデーだからか」
158,159(クロヴとピリの笑い声)
ナレーション160「バレンタインデーの、夜が始まる」
ナレーション161「今夜は、長くなりそうだ」
《終》
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