弱小俳優 異世界にて変身ヒーローデビューを果たす。

唐揚げ

第0話 ドッキリ?

 俺は囲まれていた。敵は俺の周りを円を描くような陣形でこちらを睨みつけてくる。


「アチャ! アチャ! ホワァチャー!」


 右から左から。次から次へと迫り来る敵の攻撃の波を殴り、蹴り、投げ、小麦粉を舞わせながら確実に数を減らしてく。


 そして、周りの人間全員が地に伏した時、俺は光の世界へと召喚された。




「klぬrんヴsvおbfdのmfdmfdbfdpvmsmヴィオdfbjbpdfMBdフィンpvmsmヴィオdfbjbpdfmbdふぃんbdmfpdfんdfぶflh0ー絵会う八十九つ09hじゃえjんb」


 人型をした光の集合体みたいCGが意味不明な言葉を投げかける。中国語とか韓国語に似てるかな?


「…………はい?」


 ドッキリ? 俺、そんなに知名度あったけ? 仕掛人は声から女性らしいけど。それよりも、え、えぇ〜と……、


「きゃ、キャンユースピークジャパニーズ?」


 乗らなければ。意図もわからない雑ドッキリだからと言って、開口一番に「ドッキリだろ!」とか言ったら絶対扱いづらいヤツ認定されて仕事が減っちまう!


「YES、I CAN」


 凄いネイティブな発音だ。


「あ、アイキャンスピークジャパニーズオンリー」


「え? 中国人なのに?」


 凄い流暢でフランクな日本語が聞こえてきた。って、俺は日本人だよ。どういうボケなんだ。


 まあ、ここは流れに身をまかそう。ドッキリ番組は派手なリアクションをすれば次も仕掛けてもらえる可能性が上がる。


「うおおおおおっ! 日本語喋ったあああああっ! 怖い怖い怖い! なになになに!」


 このくらいのオーバーリアクションならスタジオのみんな笑ってくれるかな?

 

「落ち着きなさい、異世界より来た最強の武術家よ。あなたは選ばれし者なのです」


「選ばれし……者?」


 野暮なツッコミを全て我慢し、天然を演じる。


「先程の闘いを見せていただきました。私が保証しましょう、あなたは最強の武術家です」


 先程の闘い……もしかして殺陣のことか?


「そんなあなたに命じます。異世界に行き、勇者パーティーに協力して邪悪の限りを尽くす悪の化身たる魔王を討ち滅ぼすのです!」


 …………なんか異世界召喚系の設定だし。飽きられてね? それ。まあ、もちろん、


「お、俺が……選ばれし者。勇者と共に異世界を救う……だと⁉︎」


 乗るんだけどね。


「だけど、俺にそんな大役が務まる……のか?」


「その疑問は最もです。いくらあなたが最強の武術家と言えど、人間であることには変わりありません。なので、あなたにはこれらを差し上げます」


 人型CGが手を横に振るうと、どこからともなく集まった光の粒子のようなものが四箇所に集まり、それぞれ長方形の形へと姿を変えた。形が整うと、それらは俺の目の前まで移動してきたので、その中の一枚を手に取ってみる。


 表面の粒子が散らばり、その下には白い虎のイラストが描かれていた。 


 凝っているなぁ〜。


「今あなたが手にしたのは白虎のカードです。残りの三枚はそれぞれ、朱雀、玄武、青龍のカードになります」


 ぞくに言う四聖獣ってヤツか。


「そして、これがカードの力を最大限に活用することが可能になる『フィストチェンジャー』です。常に装着しておきなさい」


 目の前に黒いグローブが現れた。左右共に横にはカードをスキャンするような隙間があり、そこ以外はガッチガチの装甲で固められてる。嵌めてみると指の可動域などには問題はないことが分かった。 


 なんか特撮の変身アイテムみたいで、これがドッキリだと分かっているのに凄いテンションが上がる!


「さあ、異世界の武術家よ。この力を持ちて勇者と共に世界を救うのです!」

 



 俺の名前は金剛仁こんごうじん

 これは特撮ヒーローになりたいが為に俳優になった俺が、異世界にて憧れ(?)の変身ヒーローデビューする物語だ。

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