生まれたてのダンジョンとチートな新人冒険者
あつし
第1話 生まれたてのダンジョン
見つけた。
見つけた。
僕は見つけんだ。
孤児院の地下室で隠し扉を。
その扉の中には小さな部屋が。
その小さな部屋で見つけた。
机の上に置かれていた日記を。
街の北にある小さな森。
冒険者ギルドが定期的に魔物を駆除しているので、魔物と遭遇することは滅多にない。
人に見られない奥へと奥へと進む。
僕はこの森で最強になる。
周りに誰もいないことを確認。
木の棒を取り出し、突く突く突く。
次々に倒していく。
更に突く突く突く突く突く突く。
突く突く突く突く突く突く突く。
突く突く突く突く突く突く突く。
ふぅ~全滅させてやったぞ。これで経験値は!!!
0。
ステータス画面で経験値を確認したのだが0のまま。
魔物を50匹以上倒したのに経験値0???
僕は騙されたのか?
それとも……賢者リューナ様の誤り?
僕は賢者リューナ様を信じて、突く突く突く。
突く突く突く突く?
僕は驚き、手を止めた。
突然現れたのだ。小さな宝箱が。
宝箱を開け、中を確認すると???
小さな粒が1つだけ。
え~っと……これは薬草玉かな?
薬草玉を食べると体力を5回復させることが出来る。とてもとても苦笑いのだが、ポーション等の液体回復薬と違って戦闘等で割れてしまうことはない。下級冒険者に人気の回復薬である。
値段は1粒で銀貨1枚。※千円程度。
中々の値段なのだが、この金額は店で買うときの値段。
売る時は10分の1の銅貨1枚だったはず。
宝箱が出たのは凄いけど……薬草玉狙いだと利益にはならない。
街から、この場所まで2時間。
魔物との戦いに約1時間で薬草玉が1つだけ。
日が落ちると街のすぐ側でも強い魔物と遭遇してしまうので、ここに滞在出来るのは後3時間程度。
孤児院に住んでいる14歳の僕でも街の中での仕事を1日頑張れば銀貨2枚は稼ぐことが出来る。それを考えると薬草玉なら後19粒出て貰わないと割に合わない。
僕は賢者リューナ様を信じて、突く突く突く突く突く。
場所を移動して突く突く突く突く突く。
魔物と3時間戦って得た経験値は!!!
0。
薬草玉は5つ。
滞在出来る時間は残り1時間程度。
賢者リューナ様……信じていいんですよね?
日記にはこう書かれていた。
『全ての生き物は魔物である』
『例え小さな蟻だとしても倒せば経験値を得ることが出来る』
僕はこの日記を読んだ後、最強に成れると確信し、物凄く喜んだのだが……。
貧しい生活から抜け出せると思ったのに。
はぁ~せめて高価なアイテムが宝箱から出てくれたら。
僕は周りの蟻を全滅させたので場所を移動。
小さな穴を見つけたので、持っていた棒を突っ込んでみる。
しかし何もいないようだ。
何もいない……。
何もいないのだが……何か変な感触。
棒から伝わってくる感触が……変なのだ。
もしかして……中に何かいるのか?
僕は気になり、穴を少し広げてみることに。
差し込んだ棒をぐるぐる回しながら穴の入口を少しづつ広げていく。
中が見えさえすればいいのだが……。
穴の深さは30cm程度。
棒が当たっていたのは……石ではない感触なのだが見えたのは?
なんだろ? 石なのか? 珍しい石なのか?
穴が広がったので底が見えたのだが……石のように見える。
でも感触は……石ではない……と思う。
更に穴を広げていくと???
何これ?
透明の壁があるのだが?
気になって更に穴を広げていくと……。
これは……階段?
地下へと下りる階段に透明の壁があるのだが?
透明の壁の上の土を取り除いていくと!!!
え? き 消えた……のか?
いつの間にか透明の壁がなくなっていた。
地下に土が入らないようにする魔法だったのか? だとすると……お宝が!! あるのかも?
もしかして賢者リューナ様の隠し財宝?
僕は金銀財宝を想像しながら階段を下りていく。
階段を下りると扉が。
やっぱり宝の部屋?
僕は期待を膨らませながら扉を開けた。
え? な 何もない?
扉の中は5㎡程の何もない土壁の部屋だった。
《 バタンッ 》
いきなり入口の扉がしまる。
え? 何?
部屋の中央に光が!!
僕は慌てて手に持っていた棒を構えた。
光の中からスライムが現れたのだ。
僕はスライムを警戒しながら、そっと扉に手を。
え? 開かない? あれ? 本当に開かない?
力を入れても扉はビクともしない。
警戒していたスライムの身体がブルブルと震えるのが分かった。
来る。え~っと……防御?
僕は盾を持っていないことに気づき、慌てて横に移動。
スライムは……横に移動した僕めがけて飛びついてきた。
ううっ。痛い。めちゃくちゃ痛いんだけど。
見た目が40cm程度の水の塊のようなスライムの攻撃は硬いボールを投げつけられたような衝撃だった。
僕はスライムを警戒しながらステータス画面を確認する。
アルク
レベル1
HP 19/20
MP 15/15
スライムの攻撃は物凄く痛かったのにダメージは1だけだった。
スライムとは最弱と魔物。それも魔核に色がない。最弱のスライムの中でも最弱。
僕はこれまで戦闘経験はないのだが、戦い方は冒険者ギルドの無料講習で学んでいた。
このスライムなら僕でも勝てる。
僕は勝利を確信し、前に出る。
持っていた棒でスライムに突き。
スライムの身体に突き刺さる棒。
スライムがブルブル震え始めたので後ろに下り、距離を取る。
来る と分かっていたのだが、スライムの攻撃を正面から受けてしまう。
い 痛い。見た目は軟そうなのに。
アルク
レベル1
HP 18/20
MP 15/15
問題ない。凄く痛いけど、負けることはなさそうだね。
僕はスライムに攻撃を。
見た目が水の塊のようなスライム。僕の攻撃が効いているのか見た目だけでは判断出来ない。
うっ。痛すぎ。
スライムの攻撃を受け、また僕も攻撃を。
スライムは弱いはずなのに、僕とスライムの攻防は続く。
僕は焦りを感じ始めていた。
アルク
レベル1
HP 4/20
MP 15/15
何度も攻撃しているのにスライムが倒れてくれないのだ。
仕方ない。もったいないけど。
僕はズボンのポケットの中に入れていた薬草玉を1粒取り出し、口の中に。
う~ に 苦い~。
苦いと聞いていたのだが、予想していたよりも苦かった。
アルク
レベル1
HP 9/20
MP 15/15
僕とスライムの戦いは続く。
突いて、体当たりされ、突いて、体当たりされる。
何度も何度も。
5粒あった薬草玉も残り1粒。
もう一度、入口の扉を確認したのだが、やはり開かない。
本当に効いているのか?
僕は自分の攻撃が効いていないのかもと疑い始めたのだが、スライムは待ってくれない。
う~痛い~。いい加減に倒れろよ。
僕は泣きべそをかきながらも、スライムに攻撃を。
あれ? た 倒した?
スライムが……少し萎んだような?
あっ。倒したのか。
ステータス画面に経験値が入っているのに気づいた。
経験値 2
魔物を倒せば経験値というエネルギーを放出する。そのエネルギーは倒した者の身体の中へと流れ込むのだ。
え? 何?
ステータス画面にメッセージが???
【ダンジョンボス討伐達成】
【ダンジョン突破特典:常備スキル 新たな英雄】
ダンジョン???
特典???
常備スキル 新たな英雄を見ると、HP20上昇、MP20上昇と表示されていた。
アルク
レベル1
HP 3/40
MP 15/35
おおっ。凄いことになってるけど……ダンジョン? ここはダンジョン?
この世界にダンジョンがあるのは知っている。
でも……ダンジョンは50階層以上の地下迷宮だと習ったのだが。
この国にもダンジョンは1つあり、78階層以上もあると習った。ダンジョンは生きていて、少しづつ少しづつ大きくなっていくとも。
あっ!! 宝箱。それも大きい。
僕は考えるのを止め、飛びつくように走って宝箱に。
ドキドキしながら大きな宝箱を開けると……中には小さな宝石? と……首飾りが入っていた。
小さいけど綺麗な宝石。僕には価値が分からないけど……とても高そうだ。
僕は宝石と首飾りをズボンのポケットに入れ、入口の扉へ。
難なく開いた扉。
階段を上り、地上に出ると日がかなり傾いていた。
急いで帰らないとマズイかも。
……ここは本当にダンジョン?
……僕がダンジョン突破者?
……僕だけが知っているダンジョン?
このダンジョンは……生まれたて???
って帰らないと。
……。
他の人に見つけられないようにダンジョンの入口の階段に土をかけると、透明の壁が現れた。中まで土が入らないようになってるらしい。
元のように30cm程度埋めて、僕は走って街へと戻る。
「宝石が金貨1枚と小金貨3枚だな。このネックレスは魔道具だから金貨12枚になる。どうする?」
「え? え? そんなに?」
「はははは。F級の駆け出し冒険者には中々の成果だな。このネックレスを装備すれば、魔法防御が上がるから売らないで自分で使った方がいいかもな。価値が下がることはないだろうから、金に困った時に売るといいぞ」
冒険者ギルドに持ち込み、査定をお願いしたのだが、予想以上に高価な物だった。
「売ります。両方とも買取お願いします」
偶然、生まれたてのダンジョンを発見したアルク。
孤児院で育ち、貧しい生活を送って来たのだが、いきなり大金を手に入れた。
生まれて初めて入る街の食堂。
焼き立ての分厚いステーキ。
それは涙が出そうになる程の美味しい味だった。
「会計はご一緒でよろしいですか?」
「もちろん」
僕は一緒に暮らしてる孤児達だけでなく、院長先生の分も支払いを。
「小金貨45枚になります」
「え? あ、はい。これで」
お 美味しかったけど、こんなにするんだ。
剣と盾を買いたかったんだけど……。
「「 アルクお兄ちゃん、ありがとう~ 」」
皆から一斉に感謝の言葉が。
はぁ~まあ、いいか。
「アルクお兄ちゃん、美味しかったね。また食べたいな~」
「僕も~」
「私も~」
え? え? また?
「う うん。また魔物を倒せたらね」
「「 やった~~。お肉~~ 」」
笑顔の笑顔の子供達。院長先生は無理しないようにと言ってくれたのだが、僕達の普段の食事は野草中心で肉が出ることはない。
また皆で。
僕は皆に誓った。
今日の2倍分厚いステーキをご馳走すると。
アルクの冒険は続く。
アルク
レベル1
HP 40/40
MP 35/35
EX 2
常備スキル 新たな英雄
装備:木の棒
アイテム:薬草玉1粒
所持金 金貨8枚
小金貨8枚
※金貨1枚(10万円くらい)=小金貨10枚=大銀貨20枚=銀貨100枚=大銅貨200枚=銅貨1000枚
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます