第四話 【菜花サイド】……宝石の謎。

Mission 010 一人立つ精神だけれど。


 ――そう思って、僕は動いている。捜査の基本は現場百回だから、今ここにいる。



 そこにはりんの姿もあった。彼……十文字じゅうもんじから聞いた現場。十文字の塾からの帰り道。暗くて寂しい路地裏。特徴は? と聞かれると、返答に困る程に特徴のない場所……


 思えば、よくここが解ったものだ。僕もだけど凛も。そして凛は、


「捜査は、凛の役目。あんたは凛の指示があってから動く。情報屋の仕事は、昨日今日かじったばかりのひよっ子にできるほど甘くないんだ。解ったらとっとと帰る。千歳ちとせはどうしたの? あんたの役目はミッションも兼ねて千歳のフォロー。凛にできなくて、あんたにしかできない役目だから。……だから、お願いしてるの。忘れないでね」


 と言い放つ。凛は情報屋でもベテランの域……そんなことは解っている。凛から見れば僕らはひよっ子と言われても当然だけど、修羅場は何度もあった。命に係わること。


 そんなのは日常茶飯事……


 生まれ変わったと思える程に、死にかけたことも。千歳と僕は運命共同体だから。


菜花なのか!」と僕を呼ぶ声……


 振り向けば千歳だった。しかもここは学園の外ということもあって、


「千歳、駄目じゃない勝手に学園から出たら。僕と一緒じゃなきゃ駄目って、あれほど言っただろ」と、怒った。千歳はすぐさまプンプンと「菜花はずるいよ。僕に黙って勝手に。情報屋のお仕事でしょ、現場百回。それでもって凛に怒られたんでしょ、そう顔に書いてあるよ」と、何もかも当たっている。御見通しってわけだったの。


「僕に誤魔化しは通用しないよ。菜花は抜け駆けしないと僕に約束する、今ここで」


 と、おまけに約束させられた。僕はフッと、和やかな心境になって、


「わかったよ。約束します! 星奈ほしな菜花は星奈千歳と行動を共にします。そして凛の指示を受けてから、ちゃんと足並みを揃えます。……って、これでいい?」


「うん、よくできました。破ったら、ハリセンボン飲ましてやるから」


 ……こんな具合に、僕らはパートナーの意識確認を今一度、この場で行ったのだ。



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